1 乙女の溜息
ロマンヌの妹、レアちゃん主人公シリーズ、再びスタートしました!
7才のレアが元気いっぱい駆け落ちします!(^^)! 楽しんでもらえたら嬉しいです。
「ほぅ……」
レアは子供部屋のテーブルで溜め息なんかついていました。『はぁ……』ではなく『ほぅ……』と言っているところがポイントです。女性らしい色香漂う溜め息のつき方を、先日パエリエちゃんから教わったばかりでした。
「あらレア。どうしたの? 何か嫌なことでもあったの?」
そこへやってきたのは、レアのお友達。
「ジェインでしゅか。珍しいでしゅね。ジェインにも、優しい言葉をかけりゅってことができたとは」
そう言われたジェインはムっとして、
「人が親切に声をかけてあげてるんだから、もっと素直に受け取ったらどうなの?ま、最も私は、今日ロマンヌに会いに来たついでに、あなたを見かけたものだから、困っている下々の者に声を掛けるという、イギリスレディーの義務を果たしたまでだけど」
こうこられては、レアも黙っちゃいません。
「聞き捨てなりましぇんわね。レアを『下々の者』とはどーゆーことでしゅのっ?上と下があるのは外側の呼び方だけで、心はみんなおんなじって、ママが言ってましたワ。しょーゆーこと知ってりゅってだけでも、レアの方がよっぽどレディーでしゅわねぇ」
「……ん……っ」
珍しく、ジェインが行き詰りました。彼女はしばらく悔しそうにレアを睨むと、やがてふっと肩の力を抜いて、」
「安心したわ。減らず口を叩く元気が残ってるってことは、大した悩みじゃないのね。じゃ、私はロマンヌとの約束があるから――」
去りかけたジェインのフリルの袖をぐいっとレアが引っ張りました。
「待ちゅでしゅ」
「聞いてほしいんなら、最初から素直にそう言いなさい。これでも私は、あなたのお姉さんのロマンヌと同い年。つまり、あなたにとっては人生の先輩なんだから。……ん?ちょっと待って」
ジェインはある大事なことに思い当たりました。
「悩みがあるならどうしてロマンヌに言わないの?ロマンヌはあなたにとって姉であり親友でしょ」
「しょれは疑う余地のないコトでしゅが……」
レアはらしくもなく複雑そうにもじもじして、
「……ロマンヌにはちょっとだけ、言いづらいお話なんでしゅ」
「あらそう。それなら……あなたのパパは?あの人ならきっと聞いてくれるはずよ」
レアのパパのことを話題に出しながらうっすらと頬を染めるジェインを前に、レアはやれやれと肩をすくめて、
「恋は盲目、でしゅわ」
「何か言った?」
レアは今度はせっかく習った色気も何も台無しなはぁぁ、という盛大な溜め息をつくと、
「そのパパが、今回のレアの乙女の悩みのモトなんでしゅ……」
ジェインは目を丸くしました。
「信じられない。そんなことがあるの?あんな優しくて男らしくて、言うことのない人が」
「……そうでしゅか?パパはケッコー、ガサツでしゅし、あぁ見えておニブなところもありましゅよ」
「まさか」
「まぁ、聞くでしゅ」