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嵐の前の静けさ

作者: 緋蝶

明日は台風が来る


そんなことを考えながら片田舎の道をトボトボと、宙を仰ぎながら封筒二通を片手に歩いてゆく


7月のはじめにしては妙に蒸し暑く服が汗を吸い込んで気持ち悪い


遠くの空が時々光る、それだけで明日が大荒れの天気になるのが自分の脳内で現実味を帯びてきた


そのくせ天にはきれいな星空に弓張月が煌々と輝いている、まあ今日は晴れていたし何ら不自然ではないのだが相容れない二つの事象を見ることができ、私は少し得した気分になった


だが出さなければいけないレポートを完成させたにも関わらず四日ほど放置していた自分には心底呆れ果てる、若くしてボケていては世話がない


にしても少し不思議である、どうしてこうも嵐の前は静かなのだろうか


まるで嵐の騒がしさと釣り合いを保つかのように虫の奏でる音色はピタリと止み、車ともあまりすれ違わない


いつもバイト帰りに通っているせいかいつもとは違う雰囲気でそこがまるでまるっきり別の場所のようにすら感じる


まあそんなことを考えていてもやはりそこはいつもの道でありいつもとなにも変わらない普通の道である


私はそこで考えることを次へと移した


人はどうしてはじめのうちは暗闇を怖がるのだろうか


いろいろ考えたが結局出た結論は人間は無知が怖いからではないかという至極つまらないものであった


と、なんやかんや考えながら歩みを進めているとポストの前までたどり着いてしまった


私は一応切手をちゃんと貼っているか確認し、ポストへ投函する


近くにあった自販機で何か買おうかとも思ったが別に喉は渇いていないし家の近くの自販機でいいかと思い振り返りもと来た道をたどる


帰りもやはり私は思考していた、常になにか思考していないと落ち着かない質である私は何か話題はないものかと再び空を見上げる


星や月はやはり先程のようにまばゆく輝いており私は少しそのなんとも形容し難い美しさに釘付けになってしまう


都会よりも田舎のほうが星が綺麗に見えるという、今いるここよりも光がないやまで見たらどれほどきれいなのだろうかと気になったが蚊に刺されたくないし眠かったので諦めた


いつもはあまり意識しないがこんな身近にこんなきれいなものがあるなんて本当に私は恵まれていると感じる、まああくまで私の感想だが


家まで後もう少しのところにある自販機に千円札を飲み込ませコーラの下のbのたんを一回押すと、ガコンという無機質な音の少し後にお釣りがジャラジャラと音を立てながら吐き出された


コーラとお釣りを取り、お釣りをポケットの中に突っ込んで家の方へと少し足早に向かう


明日はなにをしようか、次はそんな話題を自分の頭のなかで思考しながら家へと急ぐ


そんな嵐の前の静けさな夜のことだった

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