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いつか来るその日まで  作者: 皐月 時雨
1章 運命
2/8

夢想

数多の死体に囲まれた男は笑った

"死の喜び"を

数多の剣に貫かれた少女は嗤った

"生の悲しみ"を

──ルイン帝国スターリンの街──


 その日、スターリンの街の診療院で1人の女の赤子が産まれた。

オギャア、オギャアと元気に泣くその赤子は看護師に、温水で洗われタオルに包まれた。母親はそんな赤子を瞳に涙を溜めながら見た後、嬉しそうな顔をして眠った。


赤子は『ロート』と名付けられた。

ロートの家族は、父親のいないシングルマザーの母親しか居なかったが、母親は一生懸命働くことでなんとか生計を立てていた。


 そんな生活をして早数年。

ロート達は突然引っ越しをすることなった。引っ越し先は帝国の辺境の山の麓だ。なんでも、付近を開拓したいらしい。そこで、生活に困窮している人たちに安く家や土地を提供する代わりにそこへ先に行ってもらい発展させてもらいたいらしい。ちなみに、もう家は建てているので直ぐにでも来てもらいたい、とのことだ。


 そんな話にロートの母親は乗った。ということなので、早速ロート一家は引っ越しの準備を始めた。と言っても、元々貧乏だったので準備にさほど時間は掛からなかった。


 準備を終えた2人は早速スターリンの街の門へ向かった。門の前には馬車の停まるロータリーがある。ここから、隣町へ行く馬車が出ていたり、商隊の馬車が停まっていたりする。今回乗る開拓村行きの馬車もそうだ。


 今から行く場所も辺境だが、スターリンの街も帝国の端の方にある辺境みたいなところだ。開拓村はここから1週間ほどの所にある。ロートの母親は、ロートに負担がかからないか心配していたが、


「大丈夫だよ」


のロートの一言に安心し、馬車に乗った。




◇◆◇◆◇




──ルイン帝国リメント村──


何事もなく村へ到着した2人は、早速家へ向かった。村には総合で30ほどの木造の家が建っていた。家は空いてるところであればどこでもいいと言われたので2人は端の方にある家を選んだ。


 家の間取りはこの国で一般的なものだった。入ってすぐにリビング、そのすぐ隣にダイニングルームがあり、そのさらに横には対面式のキッチンがある。キッチンには魔道具のコンロが既に設置されている。リビングの奥には扉が2つ。片方はトイレと浴室。もう片方は寝室となっている。


 帝国では、魔道具が発展しているので、今のご時世一般家庭に水洗トイレやお風呂があるのだ。ただ、魔道具は割と頻繁──ふた月に一回くらい──に交換するので、未だに地方では井戸から水を汲むなどが一般的である。ちなみに、スターリンの街に住んでいた頃はアパートだったが、ちゃんと浴室もトイレもあった。


2人は家を1通り見た後、荷解きを行った。家具は最初からあったので、皿などをしまうだけで済んだ。だが、ロートは子供。実質母親1人だけでやったので、そこそこ時間が経っていた。外は暗くなり始めている。


 ロートの母親は早速夕飯作りに移った。スターリンの街で食材の買いだめをしておいたので、食材不足などは問題ない。


 ロートの母親は引越し記念として、少し豪華にしようかとも思ったが、長旅で疲れたのであろうロートが眠そうにしていたので、パンと簡単な炒め物とスープをした。


夕飯を食べ終えた2人は、一緒に風呂に入った。ゆっくり一時間ほど入った2人は風呂から上がるとすぐに寝室へ向かった。寝室にはベッドが2つあったが。2人は1つのベッドに仲良く2人で寝ることにした。やはり、疲れていたのか2人はベッドに入るとすぐに寝てしまった。




◇◆◇◆◇




翌朝、目を覚ました2人は朝食を食べた後、村を見て回ることにした。ご近所づきあいは重要である。村は十字のような形の道の周りに家が建っている、という構造になっていて、十字の道の中心、交差する場所には井戸があった。


 村は魔物や動物対策用に柵で囲まれていて、それぞれ十字の道の先に門が建っている。柵はこれからも広げていくつもりなので木製だ。村のすぐ近くには木が生い茂る山が連なっており、頂上付近には雪が積もっている。


2人は村を見て回ると、今度は自分たちの家の横の家の人に挨拶に行った。左右どちらの家も、人当たりの良さそうな夫婦と子供が1人の3人家族だった。


 家に帰ってくる頃には太陽が南中していた。2人は帰ってすぐ昼食を食べ、これからの生活をどのように送るかなどを楽しそうに話し合い、気がつくともう夕方になっていた。そこから夕食を食べ終え、一緒にお風呂に入り、仲良くベッドに入った。そして、深い眠りについた。これからの楽しい生活を想像しながら。



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