蟻
「お疲れ〜。」
狩りから帰ってきた仲間に労いの言葉をかける、なんせ危険な場所に行ってるんだからな。
「お疲れ。なあ安楽、俺たちはなんでこんな所に来たんだ?なんで俺たち蟻なんだ?」
「もう気にするなよ大木田〜、別に人間となにも変わらないだろ?ただ能力が人間に蟻の身体能力を足した感じになっただけじゃん、身体能力が上がって悪いことなんてないし、ここに生まれ変わった訳は知らんし、知ったからといってやる事に変化があるわけじゃない、それに同じ日本の昆虫に生まれ変わった人達がいるじゃないか、今は気にするだけ無駄だろ、めどくさい。」
人間だった頃と何が違うと聞かれれば身体能力が上がっただけと答えるが、狩りとか工事をしてると蟻だと意識させられるためこういう事を誰かに聞く人は多い、人じゃないが。
なぜ意識させられるかというとそれはお察しの通り蟻の身体能力の事である、例えば自分の大きさの20倍以上の大きさの物を運べること、別に蟻だけじゃないが逆さでも自由に動ける身体能力がある。この身体能力が自分が人間じゃないと分からせてくる。ちなみにこの森の西側にスズメバチの人達がいて、あの人達の戦闘力は恐ろしいほど高い、実際に昆虫のスズメバチに襲われて亡くなられた人もいるぐらいだ。
「納得行かない、なんか手段はないのかよ?普通に暮らすだけなら別に今のままでいいだろうけどさ、平穏な日常を送れる世界じゃないのはわかってるんだしさ、森を出ようとか考えないのかよ?。」
「この森の出口わかるの?」
「わかんないけどさ、なんかないのか?」
「ない、諦めて早くその鹿もどきを村に置いてこい、いつまで見張り台にいる気だ。」
帰ってきたとはいえギリギリここは村の外で狩りから帰ってきたら大木田はいつも来る、本人に聞いたところ「人目がなくて気楽。」とのこと、別に困ることもないからいいが。ちなみに鹿もどきとは牛のようにでかくなった鹿の事を言う。
「わかったよ。」
大木田は見張り台を飛び降りて村に入って行った、正直な所見張り台で森を眺め続けるのは退屈極まりないため、狩りにでも行きたいが、ときどきサルタ族とか言う弓の扱いに長けた部族が来るので説明(物理)で帰ってもらわなければいけないため、サボることが出来ないので困ったものだ。
…噂をすればなんとやら、サルタ族の皆さんが来たのでお迎えする為に笛を吹いてお迎え係の仕事開始を知らせる、その間俺はもちろん隠れていますとも、狙われたくないんでね、サルタ族の皆さんは弓が大変お上手で
こちらを見つけると本気で殺しにくるんだよね、何か恨まれるような事したのかな?。
トス!と矢が見張り台に刺さる音が聞こえた、笛の音でバレたね、見張り台を破壊出来る物をサルタ族の皆さんは持ってないと思うので俺は現状維持、登ってこようもんなら落とせばいいしね。
「バレてんだよ!」
ん?サルタ族の人?それ言っちゃう?もう〜怖いな〜、頭見えたら蹴飛ばしてやろう。
その後俺がビビって何も出来ずに殺される、なんてこともなく、頭見えた時点で蹴飛ばしてやったらそのまま
落ちていってサルタ族をお迎えに来たうちの仲間に回収されていったよ、アホだね。
「見張りの皆さんもサルタ族を村の中に歓迎するお手伝いをお願いします!」
そんな歓迎会準備を呼びかける職員の人みたいな言い方したらこっちもやる気出てきたわ、ちょうど狩りをしたかったし、いい機会だね。
見張り台を飛び降りて、周りを見るとみんな突撃をしようとしているが、その顔は悪い笑みだった。やだ楽しくなってきた。
「お客様は大変お疲れだ!店内(村)の中まで運んで差し上げろ!挨拶を忘れるなよ!せーの!」
「「「「「いらっしゃいませー!」」」」」
「せーの!」で一斉に「いらっしゃいませー!」と叫びながらサルタ族の皆さんを捕獲しに走る、その間サルタ族の皆さんが弓で攻撃してきたがこちらの被害は無し、それは村の者共が人間のときより力が倍以上になったのに本気でボールを投げて遊ぶもんだから球速が無茶苦茶速い、異常な速さで投げられるボールを受け、投げてきたのだ弓に当たる奴はいない。
サルタ族の人からしたらこっちは化物の集まりから怪物の集まりに認識がランクアップしたんじゃないかな、
今更だけどサルタ族の人を村に入れて歓迎するとか聞いてない、聞いていたところで何も変わらなかっただろうが。
そんでサルタ族の人は弓を避けながら満面の笑みで近づく蟻を止められず、サルタ族の人は飛び蹴りやタックルを受けて意識がどっかに飛んでって、全員サルタ族の人は無事じゃないけど無事回収完了。