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レールトラベル  作者: キジバト
1日目
2/4

福島14時40分

 僕の見始めたアニメ「Completed Tools」は、SF作品であり、中でも絶大な人気を誇る作品だ。「科学が進歩しすぎたあまりコンピューターが人間を支配するようになった未来」というのが、この作品の舞台だ。技術的特異点という言葉がある。シンギュラリティともいうが、この言葉は、人工知能が進歩を遂げたあまりに人間の知能を超えてしまうことで起きる出来事を指す。まだ18である僕が生まれた年からも、技術はずいぶん進歩している。このまま進歩が続くと、やはりやがて技術的特異点が訪れるのだろうか。昔、とある企業が作った人工知能を搭載したロボットが、独自の言語を話し始めたため処分されたという出来事があったらしい。人間が自分たちの生活をより良くするために作った機械に、返って支配されてしまうという状況というのは、なんとも皮肉なものである。

「間も無く、終点。福島。福島です。お忘れ物のないようにご注意ください。」

 途中ネットサーフィンを交えつつ、第3話を見終わったところで列車は福島駅に到着した。ここから1番線の仙台行きに乗れば、仙台に着く。

 「よし!着いたぞ!」

小さな声で到着宣言をすると、そういえば。ショートカットに深くかぶったマリンキャップ。さきほど郡山で泣いていた少女も福島で降りていったのが見えた。

 なんとも気まずい。せっかくアニメを見て忘れていたのに、先ほどの恥ずかしい出来事をまた思い出してしまった。しかしまあ、もう会うこともないだろう。そんなことはさっさと忘れて、14分ある乗り換え時間でさらっと土産でも買おう。僕は家に土産を忘れて来たのだ。


 福島駅で買うべき土産とはなんだろう。同じ福島県に住んでいるので、別段珍しいものはないが、仙台の兄の元へ手ぶらでいくのも無粋かと思うので土産を買いたいのだが、いかんせん思いつかない。なるほど土産選びというのは旅行に出かけた時のみならず、旅行に出かける時にも必要なのか。などと、くだらないことを考えているうちに時間もあまりないので、土産コーナーでパッと目についた饅頭を買い、急いで店を出た。


 ホームに降りると、間も無く発車するところだったので、駆け込み乗車にならない程度に急いで車内へ入り、またもや誰も座っていないシートに座った。間に合ったことに安心したの束の間、向かいの席にショートカットに深くかぶったマリンキャップを見つけた。そしてさらに残念なことに、彼女も僕に気づいている様子だった。土産を家に置いて来なければよかった。いや、土産なんて持っていく必要がなかったのではないか。などとまた後悔を巡らせたが、仕方あるまい。また「Completed Tools」を見て気を紛らわそう。

 そしてスマートフォンとイヤホンを接続し、第4話の再生ボタンを押した。

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