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観察記録。目標1日1ページ   作者: 青パンダ
~1章~
8/9

晴れ姿とか言うけどさ

11月は友人達とポッ○ー早食い大会して惨敗しました。

今年もやるのかわからないけど極細はずるいと思うの。あと苺味は神だと思う。

つどえ、賛同者!(笑)



 ポッ○ーだの○ッポだのプ○ッツだのの日だとか言ってお菓子業界の策略に嵌まり盛り上がった皆様どーも、くたばりやがれ。


 本日は誠に晴天なり。ちくしょうなんで雨降らないんだよバァロォ。


 普段はどうでもいい天気の晴れ具合に本日に限り反比例する心情は絶賛嵐の真っ只中ですよ、ケッ。


 え?

 なんでそんな荒れてるかって?


 だって嫌なんだもん。

 それに面倒臭いんだもん仕方ないじゃん。


 まぁそんな私と対照的におじぃとおばぁが嬉しそうだから何も言わないけどな。


 普段は物静かな清廉とした雰囲気の境内は行き交う人々で賑わっていて、きらびやかな装いの子供が無邪気に笑ってたりと騒がしい。


 こんな中に紛れて並ぶのは面倒臭いし、寒いし、つまらないし、そもそもこんな動き辛い格好が窮屈で嫌だ。

 つかなんてーの、恥ずかしい。



 赤よりも紅と称するに相応しい鮮やかな振り袖。

 みずみずしく描かれた花々と生気溢れる緑の蔦と葉に、縁起物の中から選んだらしい鶴と扇の柄は見栄えが良い。

 黒檀の帯にはこれまた紅で繊細な花弁が散らされていて、白銀の刺繍も入って豪華であるが控えめの美しさがある。

 防寒として狐の尻尾で出来た襟巻きは毛並みはもちろんフワフワで滑らかだ。


 だがしかし、けど、だけども、でも、残念ながら、そんな綺麗な振り袖一式だとしても、だ。



 私が着ても可愛くもなければ公害でしかないと思うんだがこれ如何に。

 つか寒ぃ。


 本日は11月の第二日曜日、本当は暦で鬼宿日という日に行きたかったそうだが、生憎とその日は平日なので近い日で妥協。

 腕に抱かれた三歳児、好奇心旺盛にはしゃぐ五歳児、ちょっと大人ぶりたい七歳児。そんな子供があちらこちら・・・



 もうお分かり頂けるだろう、七五三である。


 一応おじぃとおばぁの前なのでとりあえず笑顔とかそんな表情を作ろうにも難しく、察して欲しい。

 ただの無表情だ。無愛想に見えるだろうが知らん。

 私の写真とか誰得。私のライフはもうゼロよ・・・


 ぐだぐだと周りに倣って着いた先、本殿にて神主さんにお祓いして頂き、祝詞を拝聴。眠気がマックスになりつつもなんとか絶えて退室。

 危なかった。


 形式的に簡略化されてるからかあまり時間がかかってないのは有り難い。

 ・・・いや、子供が多いから簡略化せざるを得なかったのかも。

 こんな多いと騒がしいもんな。


 まぁ最近じゃ写真とって終わりとかいう家庭もあるらしいし・・・実にうらやましい。




 「ふふふ。ほんと穂澄ちゃん、綺麗になったわねぇ」


 「そうだなぁ」


 「・・・馬子にも衣装ってやつだよ」




 そんなこんなでガサガサと細長い紙袋を揺らして歩きながら帰路につく。

 ほわほわと嬉しそうな祖父母には悪いが褒め言葉に鬱々となるので切実にやめてほしい。

 さらに重くはないが手荷物が増えて気分は下降しかしてないのだ。だるい。


 鶴と亀が描かれ、その背景には松竹梅。なんともまぁ縁起良い袋であるが中身はアレだ。千歳飴。細長い紅白の飴。

 おばあから手渡されたので仕方なく持っているが、私はあまり飴は好きではないのでどうしようか悩む。


 成長を祝ってくれた人に配るのが本来の主流らしいのだが、まぁ生憎とそんな人いないしね。

 やっぱバッキバキに砕いて食べるしかないのか・・・はぁ。



 おじぃとおばぁの会話を聞き流し、時々相槌を打って歩く。

 しかしながら結構歩いた所為か鼻緒が食い込んで足が痛くなってきた。脱ぎたい。


 今現在のモチベーションと言えば晩御飯で好物を作ってくれるというおばぁとの約束くらいである。


 あ、あと夕方に図書館に行けることもか。

 年間予定表が狂ってないなら金曜日に新刊が大量に増えたハズだから、楽しみだ。

 ・・・司書さんとお姉さん達に千歳飴を配布するのもあり、か?



 そんなことを考えていたらあらビックリ。


 道路の反対側に葛城親子が居るじゃあないですかぁ。しかも本日はお姉さんもいらっしゃるみたいだ。

 つかおい葛城翔、なに目ぇかっぴらいてんだ。あり得ないもの見た反応してんじゃねぇ。




 「橘さんこんにちは。穂澄ちゃんの振袖姿、綺麗ですね」


 「ふふふ、ありがとうございます。そちらは翔君のお姉さんかしら。初めまして、私は橘サエというの、よろしくね」


 「葛城実琴(みこと)です。えっと、いつも翔がお世話になってます」


 「あらあら、そんな畏まらなくていいのよ?穂澄ちゃんのお友達になってくれて、有り難いくらいよ」


 「・・・穂澄は人を選ぶからな」


 「あら、それを言うならうちの翔もですよ。この子にこんな可愛いお友達が出来るなんて思ってませんでしたもの」


 「まぁそんなこと・・・翔君とてもいい子なんですよ?行儀も良いし・・・」


 「そんな、穂澄ちゃんも・・・」


 「そうですよ、こんな可愛らしくて。妹に欲しいです」


 「でもね、大人しすぎちゃって。もう少しやんちゃでも・・・」


 「わかります。翔もあまり騒がしくしない子で、もっと外で遊んでくれても・・・」




 何故だか子供談義に発展したその会話に混じる気なんて微塵もない。

 そして葛城姉はそっち側なのか。

 これ絶対長引くやつだろ、内容に意味が見出だせないやつだろ、当人そっちのけで話すのやめよう、はよ帰ろ。


 げんなりとした表情を隠しもせず、互いに顔を合わせる。


 どうにかしろよ。

 むり。


 目線での会話はこんなもん。

 先程とは打って変わっていつも通りである。




 「あー・・・七五三?」


 「おう。そっちは?」


 「買い物。ねーちゃんが菓子作るっつーから」


 「あぁ。この前のマフィン美味しかった。メープルのやつ」


 「当人に言えよ」


 「・・・あれに入れって?」


 「・・・・・・この着物自前?」


 「・・・そう、おばぁが贔屓にしてる呉服屋で仕立てたやつ」




 さらりと話題変更。むしろ戻ったのか。

 慣れない振袖にいい加減飽き飽きなのだが、それより横でなされる会話にメンタルが削られる。

 私服が全部女の子らしくなくてごめんね!

 そして翔と実琴さんは香織さん作(自社ブランド)を腐るほど持ってると。ですよねー。

 え?お下がりでも要らないですよ??




 「・・・なぁ、飴食べる?」


 「飴?」


 「そう、飴」




 軽く袋を持ち上げてみせる。

 実はこれ4つ入ってんだよね、紅白合わせて8本。一人じゃ食べきれん。




 「・・・もらっとく」


 「さんきゅ」




 飴は好きじゃないと知ってるからか協力してくれるようだ、有り難い。

 そのまま手渡してみると、何やら考えてるもよう。


 ・・・。




 「折るなら帰ってからにしろよ」


 「・・・おう」




 無駄に長いんだもん、こう、膝でバキッてやりたくなるよね。


 さて、あと3つあるわけだが、どうしようかね・・・




 「・・・という訳で、千歳飴を配ってるんです」


 「珍しく何か持って来てると思ったら、そういうことだったのね。

そっか、七五三かぁ・・・振袖姿見たかったなぁ」


 「・・・来週には写真出来てると思うので持ってきましょうか?」


 「あらほんと?楽しみにしてるわね」




 にっこにこと裏なく楽しみだと滲み出る雰囲気から察せる笑顔、プライスレス。

 図書館の職員であるお姉さん達の中で一番若い方で、そして一番の子供好きなのだとか。


 そして千歳飴を受け取ってくれて有難うございます。ほんと助かります。


 ちなみにいつもの司書さんは学生に資料となる本の案内をしてるらしい。

 業務内容に含まれてないのに親切丁寧な人である。




 「それじゃ新刊のこれとこれ、お願いします」


 「はい、貸出手続きしますね。少々お待ちください」




 雑談から業務に切り替えてテキパキ作業するお姉さん。そんな姿も素敵です。

 ピッ、ピッ、と本についたバーコードを読み取ったりカタカタとパソコンに何か入力して、完了。


 本日借りたのは先日外国で放映された映画の和訳本と、ソコトラ島の植物についての詳細と考察の本である。

 相変わらず小1が読む内容ではないが皆様慣れたようである。




 「あと、司書さんに"来週はお願いします"って伝えて頂けますか?」


 「いいわよ。何か約束してたの?」


 「さっき返却した雨月物語の解説を・・・ほんとは今日お願いしてたんですけど、神社行ってたので」


 「そっか、がんばってね」


 「はい、有難うございます」




 一礼して頼み、そのまま帰宅。


 雨月物語とは古文の短編集で、全9編の、まぁ、ホラーというか、怪奇物語だ。

 古文の解説とか全くもって業務内容ではないが、借りる時に何か分からなかったら教えてくれると言っていたのでまぁいいだろう。


 ()は理系を選択してたから、ほぼノータッチの古文や漢文になるとうろ覚えが酷すぎて意味が分からない。

 けどまぁ、現代語訳付きだったし、面白い短編物語だったので一通り読めたのは幸い。

 司書さんおすすめなだけはあった。


 まぁ解説はしてもらうけど。

 言い回しがよくわからないとこもあったし。

 悲しきかな、根強い苦手意識はなかなか改善しないのだよ・・・



 別に、私がお馬鹿なわけではない。

 私は平均だった、と言い張っておく。







ーーーーーーーーーーーーーーー



 11月◎日、晴れ


 七五三帰りに遭遇。本日はお姉さんと初対面。美少女だった。

 ゲーム設定と同じく6つ上で、現在中1。さぞやおモテになられるだろう顔立ちと雰囲気だったが、おじぃとおばぁとの会話から滲み出るブラコン度合いは末期だった。

 こわい。


 井戸端会議(子供自慢)の横で雑談してたら葛城父が昨日階段から落ちたことを教えられた。ドジっ子かよ。

 そしてその父のリクエストでスコーンとアップルパイを作る為材料を買いに出たらしい。だだっ子かよ。


 強制的に連れ出されたと愚痴ってたのでドンマイと肩を叩いてやったら溜息つかれた。気苦労多くて将来ハゲそうだ。



 そして目をかっぴらいた理由を問いただしたらまぁ素直に白状してくれた。


 曰く、誰かと思った、と。


 普段男物しか着てなかったから仕方ないとは思うけど、学校でほぼ毎日顔を見合せてるのにこの反応はイラってきた。

 苛ついたのが分かったのか珍しくなんかフォローというか弁解してたけど、まぁいいや。許す。


 私が着飾った姿なんてはぐれメ○ル並の遭遇率だろうから、致し方ない。

 だからといって普段から気を使うことはしないし、する気ない。だって面倒臭い。



 許す代わりに明日お姉さん作のお菓子を持って来てもらうことになったので楽しみである。

 狙って話しをふった訳じゃないよ。

 棚ぼたではあるけど。


 まぁ何やら察したのかブツブツ呟いたり盛大に溜息ついてたけど言った言葉は取り消せないからね、どんまい。

 ごちそうさまです。



 明日はまた学校なのでいつも通り本でも読みながら観察しよう。

 お菓子楽しみだ。



 以上。


七五三とか遥か彼方昔の事なので親戚の子の行事から採用。

おばさん、突然変なこと聞いてごめんなさい。


因みに、ソコトラ島は実際にあります。

植物のガラパゴスと言われてるくらい変わった植物がいっぱい。一度は行ってみたいところ。

そして雨月物語は高校時代に図書室の先生から読んでみろと渡された一冊。

古文が壊滅的だった私は現代語訳しか見てません。結構面白かったのは覚えてます。

よかったらどうぞお読みください。



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