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観察記録。目標1日1ページ   作者: 青パンダ
~1章~
7/9

秋は色付き、芽吹く花。

筆者の個人的趣味が色濃くでてます、すみません。

あと遅筆すぎて泣きたい。

 はてさて段々と肌寒くなってきた今日この頃。秋空が広がり始める10月でござる。

 そして本日は待ちに待ったという訳でもなくはないが、楽しみにしていたイベントがある。



 覚えているだろうか、この手の中にある植物園のチケットを。



 司書さんに貰ったこの3枚、実は開園記念式の優待券(・・・)であった。

 つまり、あの司書さんはこの植物園を作った会社の株を持っているということ・・・


 普通、株価の取引をする人はその会社が儲かりそうかを確かめて購入する。もしくはその株主優待を見て購入する人もいるだろう。

 例をあげるなら御菓子会社の株主優待として新商品が送られてくる、とか。そんな感じだ。


 さて、何故そんな説明をしているのかと言うと、だ。



 なんとなく調べてみたら・・・この植物園の親会社、攻略キャラの会社でした。なんてこったい。



 いや正確に言えば攻略キャラの親が社長してるんだけどね。

 一族ぐるみで経営してるんだけどね。


 で、何が言いたいのかってーと、つまり、まぁ、うん。

 株ってさ、一株の値段ってピンキリなんだけど得てして有名所の株って、結構なお値段する訳で・・・



 ・・・あの司書さん、何者?



 夏休みが明けてからも毎週土曜に顔合わせてるんだけどもね、それとなく探ってみても交わされるんだよなぁ・・・チッ。


 自称しがない司書らしいけど、受付のお姉さん達によるとお金持ちな家生まれなのではないか、とのこと。

 暇を持て余した(お相手探し中の)お姉様方の観察眼は怖いね。小物チェックが半端無い。


 とまぁそのことは一旦置いといて、だ。



 なんでこうなった?



 ざわざわと賑やかな人の群れ。ズラリと連なる長蛇の列。日射しは暖かく見事な秋晴れで空気はカラリと気持ち良い。

 だがしかし、これだけ人が混みあってると気持ちが悪くなる。しかも視線が痛い。


 なによりこの状況、滅入る。




 「なぁ、帰っていいか」


 「何言ってるの翔。こんな機会滅多にないんだから、楽しまないと勿体ないわ。それにチケットくれた穂澄ちゃんに失礼よ、感謝しなくちゃ」


 「・・・いえ、むしろ連れて来て頂いた私が感謝すべきかと」




 私と一緒に列に並ぶのは、葛城翔とその母、香織さん。


 本当はおじぃとおばぁと来たかったのだが、おじぃは門下生に稽古をつけなくてはいけなくて、おばぁは実家に・・・榊家に呼ばれてしまった。

 別に私は一人で行っても問題なかったのだが、おじぃ達はそれを許さなかったのだ。

 孫馬鹿を甘くみてたわぁ・・・


 そんなこんなあって、まぁ、つい、ポロリと言ってしまったのだ。

 どうやって説得したらいいんだろ、どうしても見たい(・・・)のに、と。


 そして返ってきた反応と言えばこれだ。

 大人と一緒に行けばいいんじゃね?俺の親でいいなら頼んでみるけど。あと俺も見たい(・・・)。と。


 その時の私ったらきっと目を輝かせていたに違いない。


 その日の帰り道すがら葛城家に寄って聞いてみたら、何故か驚いたような反応したけど香織さんは了承してくれたのだ。

 おじぃとおばぁもそれならば(大人がいるなら)、と許してくれた。


 チケット3枚あるから丁度良いと思ってましたよ、当日の朝(ついさっき)までは。


 けどね?



 こんな視線に晒されるとは思いもしませんでしたよ、ええ。



 チラチラと何度も振り返り頬を緩ませる女性たちに、じーーと興味津々と目を離さない子供たち。

 集まる視線で既に気力はマイナスである。


 え?

 なんで見られてるかって?


 ・・・そりゃあ、まぁ、ねぇ?




 「ふふ、可愛いわねぇ」

 「双子かしら、ほんとそっくり」

 「ねぇママ、あの子たち男の子?女の子?」

 「仲良しで羨ましいわぁ・・・」

 「可愛い服ねぇ、どこで売ってるのかしら」



 ・・・お分かり、頂けただろうか。


 小声で話してるけど丸聞こえなので抜粋してみた。

 なんとなくこれで分かってくれるんじゃないかと思うけど、まぁ、うん。


 分かりやすく言うならば、只今の服装は葛城母プロデュースなのである。

 で、モチーフは多分、不思議の国のアリス。



 鮮やかな赤色のハイネック、胸元はハートをモチーフにしたネックレス。ふわりとしたスカートも赤色だけど、薄い生地が何枚も重なっていて、ストッキングも薄い赤。ワインレッドのブーツは動きやすさ重視なのかヒールは低め。上着として羽織っている厚手のカーディガンは白色だけども赤いダイヤとハートがアクセントになっている。

 赤い・・・紅の髪も相まって、香織さんは完全にハートの女王様。


 青紫と赤紫のボーダーパーカー、猫耳&尻尾付き。ズボンは青紫で靴は赤紫。縞模様が目に痛いけど不思議と違和感は無く、Vネックのクリーム色のインナーはトランプのエース四種が扇形にプリントされてる。

 笑顔は無いが明らかにチシャ猫な翔。


 白のカッターシャツに黒のズボン。黒と赤のチェックのベスト、胸ポケットから垂れる銀色のチェーンに繋がった懐中時計(アンティーク物)は内ポケットに入ってる。前髪を纏め上げた髪止めは小さなシルクハットが付いたもので右上に鎮座。後ろ髪を纏めた白のリボンにはハートとスペードがあしらわれている。

 ・・・時計を持ってるから、多分白うさぎ、けどケモ耳がないのでもしかすると帽子屋かもしれない。



 とまぁそんな格好な訳でして、目立つこと目立つこと・・・

 もうね、なんて言えばいいのかね。


 香織さん、張り切りすぎです(涙目)。


 隣に比べたらまぁまだまともな色合いだから着ていてもそこまで嫌悪感はない。

 もとより単体なら普通に・・・いや、発表会だのパーティーなどで居そうな格好ではあるけど、そこまで派手じゃないから許容範囲ではある。


 けどさ、恥ずかしいんだよ、この格好。

 葛城一家は美形だからいいものを、ただの一般人がこんなの似合う訳なかろうに・・・


 まぁでもさ、ほんと似合ってんだよな。


 香織さんはまぁいいとしてだよ?

 こんな普通は着ない、着れない奇抜色。

 紫系統のボーダーが、明らかセンス悪そうな上下セットが、違和感なく普通に着こなせてる葛城翔(観察対象)に一言。


 イケメン爆発しろ。


 まぁそんなこと言ったら何言ってんだコイツ的な視線を頂くことになるだろうからしないけど。

 あと只でさえローテンションなのが限界突破して唐突に帰る可能性があるから出来ない。


 自分の性格はよく理解してるからね、自重する。


 さて、珍獣の如く集まる視線はスルーするとして、だ。




 「・・・あと5分」


 「・・・もうすぐか」


 「まぁ、中に入れば気になんないでしょ」


 「・・・・・そう、だな」




 溜息混じりの言葉に思わず苦笑い。


 好奇心旺盛な子供たちは、きっと入って3分もしない内に珍しくそして変わった植物達に目を奪われる。

 付いて回る大人ははしゃぐ子供に手一杯となるのは明白。


 だからまぁ、なんだ。

 視線は中に入れば気にならないハズだ。


 ・・・それよりも、だ。




 「香織さん、テンション高いね」


 「・・・これ、仕事モードだぜ」


 「・・・・・まじか」




 ルンルンと楽しみで仕方ないと言った雰囲気の香織さんなのだが、実際は新しいデザインが浮かぶかも、とかそんな感じの仕事モードなのか?

 ということは何枚かイメージが固まるまで帰ることは出来ない・・・と。


 まぁ色んなジャンルの植物があるから楽しめないことはないだろうけど。




 「まず園長さんの挨拶で、施設の説明でしょ・・・」


 「主要施設の案内とかいらなくね?」


 「今日は子供がいっぱい」


 「納得した」


 「で、11時に例のアレ・・・と」


 「長いな」


 「けどまぁ、近い所に楽しそうなのあるし・・・こことか」


 「・・・毒草かよ」


 「トリカブトとか彼岸花とか有名で綺麗なの多いし・・・キョウチクトウとか華やかだし、見てて飽きない。根っこから葉っぱや花はもちろん、土も毒性になるけど」


 「おい」


 「他意はないよ?水仙とか鈴蘭とか中庭にあるけど」


 「・・・おい」


 「犯罪者になる気は一切ないから問題ない。で、一番気になるのはこれな」


 「・・・多肉植物か」


 「触りたい」


 「・・・まぁ、分からなくもない」




 受け取ったパンフレットの開園セレモニー云々のページを飛ばし、施設案内のページを開きながら興味のある所をチェックする。

 毒草のスペースも気になるが、以前借りた図鑑でそれなり満足しているので今は多肉植物の方が気になる。



 そんな訳で、開園式終了と同時に颯爽と消えた香織さんをスルーしてやって来ました多肉植物スペース。


 客は私と翔の二人のみという素晴らしい過疎具合。まじか。


 確かにマイナーかもしれないが、多肉植物は簡単に言うとアロエやサボテンとかの仲間である。

 まったく馴染みがないものではないのにこの人気の無さはちょっとむなしい。


 何とも言えないプニプニした肉厚な葉や茎、乾燥地帯特有の図太さで育てやすく、咲く花は華やかだったり輝びやかではないが可愛らしいものが多い。


 値段もお手頃でガーデニング初心者にもオススメ、とこの前立ち読みした雑誌に書いてあったのだが・・・


 現実は非情なり。



 だけどもまぁ、自由気ままに見れるのは有り難い。

 予想以上に種類が多く、大きさも形も様々で、濃い緑から明るい緑、黄色や赤といった色は鮮やかだ。


 その中でも特に惹かれるものが、一つ。



 「・・・これ、欲しいな」


 「・・・・・綺麗だけど、高いな」


 「うぐぅ・・・」




 透き通った肉厚の葉は、まるで花弁のごとく広がり一輪の華のよう。

 一枚一枚が透明で、葉脈と思われる白線から覗く底の緑が引き立っている。


 ハオルチアというアロエの親戚らしいその品種、氷砂糖と名付けられたそれは多肉植物のイメージからは想像出来ない儚さがあった。


 斑入りだとかなんとかと説明が書かれているのだが、それはそれで置いておいて、お高い。

 お子様の小遣いでは手が届かない。



 欲しい、けど・・・




 「んー、これはちょっと育てるの難しいかもねー」


 「え・・・そう、なんですか」


 「多肉植物は手入れが簡単なの多いけど、この品種はちょっとねー。水をあげすぎないのは勿論なんだけど、あんまり直射日光当てないようにしたりとか、土の環境が大切なんだよねー」


 「へぇ・・・」


 「・・・・・この玉章(ぎょくしょう)ってのもそうなんですか?」


 「そうそう。ハオルチア系は元々岩陰とかに生えるからねー。強い日光に強くないんだよー。まぁハオルチアは基本的に育てるの楽なんだけどねー」




 間延びした口調ながら分かりやすく説明してくれる男性は、にこにこと朗らかな雰囲気の癒し系なイケメンさん。

 ピンクという()ではあり得ない配色の頭髪はふわふわした天然パーマで、垂れ目ながら大きな瞳は濃い青色。

 首から下げた名札に"サクラバ"と書いてあるこの男性は、多肉植物の管理責任者らしい。


 見た目だけなら大学生に見えるのだが、実はアラサーなのだとか。詐欺だ。



 ついでに・・・この"サクラバ"が、"桜庭"だとしたら、盛大なフラグになるので赤の他人だとかただの思いすごしだと嬉しい。


 うっすら冷や汗が背筋に浮かぶものの、目の前にある植物が気になるので有り難い説明に聞き入る。

 が、懐事情により素直に諦めるしかなさそうだ。




 「んーと。華やかでお手軽、さらにバラエティに富んだエケベリア系はどー?ちなみにこれはリラシナって言うんだよー」


 「・・・わぁ」


 「・・・おぉ」


 「ダドレア系に白いのが多いんだけどね、このリラシナはエケベリアなんだー。薔薇みたいに華やかでしょー?」




 確かに、薔薇のようだ。

 白く幾重にも重なるこれは花弁ではなく葉なのだと思うと不思議な感じがする。

 でも、




 「薔薇みたい、っていうなら最初に見たドドランタリスの方が形的に薔薇っぽくない?」


 「属種は・・・アエオニウムだっけか?」


 「んー、確かに形だけなら似てるよねー。緑一色だから華やかさに欠けるかなーとは思うけどねー」


 「だったらこのブロンズ姫のが薔薇っぽくね?赤いし」


 「肉厚すぎない?」


 「んー。じゃあこれはどー?」


 「「・・・レタス?」」


 「・・・っ!ぷっ、あはははっ!やっぱレタスに見えるよねー!」




 お腹を抱えて笑うサクラバさん。


 何となく目線を横に流せば、しっかりと合う目。含まれた感情は、若干の困惑。そのまま目だけで会話する。


 どうするよ?

 どうするもなにも・・・ねぇ?

 てかさ、これさぁ・・・

 うん、どう見ても・・・




 「「レタスだよな」」


 「ーーっ!あはははは!すごっい!またハモった!!」




 再び爆笑。


 ひぃひぃ呼吸を整える姿を横目に、見せられた植物を改めてみる。

 パーティードレスという名のそれは、少し薄めの葉が波打つように重なっていて、葉先が赤く色付いている。

 ちなみにリラシナと同じエケベリア系らしい。


 てか、これ見せたくてリラシナ出したんじゃね?


 と思わず半目で未だ笑いが止まらないサクラバさんを眺める。

 同じように思い至ったらしい翔も、半目になっている。


 チラリ、とお腹を抱えつつこっちを見てくるので、何だ、と意味を込めて首を傾げればまた笑いのツボに入ったらしく震えている。


 なんなんだ、この人。




 「・・・っねぇ、あのさ、ほんとに双子じゃないんだよね?」


 「いや、初めに自己紹介つって名前言いましたよね?私は橘穂澄で」


 「俺は葛城翔」


 「苗字違うし」


 「まず親が違う」




 つか、




 「「見た目全然似てなくね?」」




 あ、またハモった。



 三度目の爆笑は、もう何も反応する気にならなかった。


 笑い上戸なのか知らないけど、この人これで接客とか出来んのかな。

 などど考え、ふと、懐から時計を取り出す。


 指していた時刻は、11時17分。




 「・・・なんてこった」


 「まじかよ・・・」




 二人揃って、絶望顔。

 なんてったって目的だったイベントは、もう定員を打ち切っている(・・・・・・・・・・)だろうから。


 ずーん。

 と、そんな効果音が聞こえるような、普段ではあり得ないほど分かりやすく落ち込む。




 「ふぅ。あー面白かったー・・・ってあれ、どうしたのー?・・・・・・あ、もしかして、」




 握っていた時計を見て理解したのか、固まるサクラバさん。

 どこかぬけてそうでも流石は勤めているだけはあるな、と顔をあげる。


 まぁ初日だし、催しを全職員が把握しててもおかしくないか。





 「ご、ごめんね!こんなとこに居たんだもん隣の湿地スペースのイベントだよね?!オオオニバスに乗りたかったんだよね!?い、今なら多分まだ間に合うよ!!」


 「「違げぇよ!楠木司(くすきつかさ)さんが見たかったんだよ!!」」




 思い違いも甚だしい。


 パチクリと目を瞬せるサクラバさんをスルーして、溜め息。

 見事に重なったそれは、もう何というか形容するのも面倒臭い。


 つか、管理責任者がこんなとこ(・・・・・)って言うなよ。

 毒草スルーして多肉植物のスペースに来たのにさ。

 時間忘れるくらいには楽しんでたのに。


 だけど、まぁ、うん。

 催しはもう時間的に、無理だよね。




 「あー・・・楠木さん、一目でいいから見たかったなぁ」


 「生で見れると思ったから来たのにな」


 「・・・えーと、楠木司のトークショーに行きたかったの?」


 「「うん」」


 「・・・・・そっかー」




 引き吊った笑みありがとうございます、全然隠せてないよ。



 ちなみに、楠木司と言うのは歌手であり俳優でもある芸能人だ。


 ギターを、ピアノを、三味線を、二胡を、様々な楽器を弾きながら歌ったり、音響を一切使わないで歌ったりと、多才で耳に残る低音の声。

 繊細な心情や荒々しい単語を連なった多様な歌詞は印象によく残り、つい口ずさんでしまうくらい。

 凶悪犯罪者に下っぱチンピラ、新米教師にヘタレな彼氏、インテリ弁護士やら肉体派アスリートだったりと、幅広い役柄をこなす演技力も持っている。


 総じて、格好良い。

 アラサーのイケメンだ。

 奥様方の人気は押して知るべし。


 ちなみに趣味はガーデニング兼家庭菜園と公言しているので、何故植物園でトークショーするのかは分かりやすい。


 が、




 「楠木さん子供苦手ってゆーからさ、出来たらトークショー聞きたかったけど、一目見れたらいいなぁって」


 「"蒼に咲く"とか"緋の奏"、聞けないのは分かってるしな」


 「ねー。トークショーとかで歌うの最近のやつばっからしいし・・・"夏の雪"とか聞きたいけど仕方ないさ」


 「え・・・うそ」


 「「?」」




 固まるサクラバさんに首を傾げるが、何か不思議なことでも言っただろうか。


 "蒼に咲く"と"緋の奏"は儚いピアノの旋律がとても綺麗な曲で、"夏の雪"は三味線の早弾きが複雑で力強い曲である。

 デビュー初のアルバムに3曲とも入っている。




 「・・・他に好きな曲って、あったりするのー?」


 「他かー・・・私は"白い太陽"と"春の月"、かな」


 「あー・・・"緑の壁"と、"黒檀の棺"とか・・・・・あぁ、"冬の木漏れ日"もけっこう聞くな」


 「あ、それ私も聞く。"秋の雫"もいいと思う」


 「あれ眠くなんねぇ?」


 「リラックス出来るから寝る前に聞くのがオススメ」


 「あぁ、なるほど」




 ポンポンと弾む会話だが、話をふった当人の反応はイマイチである。

 なんというか困惑してるっぽい。

 どうしたの。何か言いたいなら言ってくれてかまわないんだけど。




 「んー・・・ねぇ、君たちって何時ま でここに居るのー?」


 「・・・さぁ?」


 「・・・少なくとも母さんが満足するまで無理だろ。多分早くてもまだ2、3時間は居る」


 「・・・・・そっかー・・・」




 入って早々に消えた香織さんは、おそらく温室園か隣の湿地スペースに居ると思われる。

 理由は華やかで変わった品種が多いから。

 温室園には極楽鳥花が咲いているそうなので後で見に行くつもりだし、いざとなったら翔が子供用携帯を持っているので活躍してもらう。


 そんな予定を教えたら、じゃあ後でまたここに来てよ、お母さんと一緒に、できたら二時間後くらいに、と言うので仕方なく多肉植物のスペースから退散することになった。



 なんだったんだと翔と話しつつ、多目的ホール(トークショーは始まってるみたいで楽しそうな笑い声が聞こえた)を通りすぎ、温室園を巡り、変わった食べれる草花というスペースでカリッコリーという見た目ちょっと気持ち悪いながらも美味しい植物を頂き、湿地スペースの食虫花ゾーンでたむろし、沼地ゾーンで香織さんと合流しちょっとばかり右往左往。



 そして・・・




 「はじめまして。橘穂澄ちゃん、葛城翔くん」


 「「は、はじめまして・・・!」」




 再び戻った多肉植物スペースで、楠木司さんが優雅に佇んでいらっしゃった。



 なんとこのサクラバさん、楠木司とは中学からの友人なのだとか・・・それで初アルバムのファンがいるから、と連れて来てくれたらしい。

 マジかよぉ・・・サクラバさん、あんた神か。


 てか香織さん、マネージャーさんと衣装のデザインだとかアクセサリーのモデル契約だとか聞こえてますけど完璧にお仕事してますね。


 楠木さんに曲の感想だとか好きなところとかを聞かれ、答える。耳が幸せだ。

 緊張するも、こんな機会は滅多にないだろうとしっかり堪能させて頂いた。



 楠木さんとサクラバさんに盛大に感謝して、物凄く充実した最高の日になったのは言うまでもない。







ーーーーーーーーーーーーーーー




 10月□日、晴れ



 早朝よりチシャ猫のコスプレで死んだ魚の目をしていたが、どうやら香織さんと出掛けると毎回こうなるらしい。

 ちなみに帰ってから教えてもらったが、私は帽子屋コスだったらしい。三つ巴かよ。


 例の赤いスポーツカーの乗り心地は最高だったが、あまりスピードが出過ぎると気分が悪そうだった。公式設定で絶叫マシンが苦手なのは知ってたが、速い車も苦手なのかもしれない。


 多肉植物のスペースで仙女盃(せんにょはい)を真剣に見ていたから欲しかったのかもしれない。

 地球上で最も白い植物と言われているのに相応しく綺麗だった。

 ・・・氷砂糖、欲しかったなぁ。


 温室園で極楽鳥花の冠について討論したが、食虫植物スペースに着いてからは互いにテンションが上がりスッカリ忘れていた。なんで討論になったんだっけ。


 ハエトリソウにピンセットで餌(チーズの欠片)を落とすという体験を嬉々としてやっていたので真っ赤なハエトリソウを薦めたら睨まれた。解せぬ。

 ネペンテス属とサラセニア属の見た目の奇抜さは目に痛い、と同じ感想。

 職員さんがトマトも食虫植物になると言った時、若干頬が引き吊っていた。


 どうも虫はあまり好きではないのだとか。男子というのは虫類は平気なものだと思ってた。


 湿地スペースでオオオニバスに乗っているハイテンションの香織さんを発見。全力で他人のフリをしようとして服装から身バレして世話焼きなおば様に連行された。ちくせう。

 オオオニバスに香織さんにせがまれ二人で一緒に乗る事になった時、親指姫かよ・・・と呟いたのが聞こえた。けっこうメルヘンなのねー?

 そして定員は打ち切っていたハズなのに何故許可が出たのか。周りの視線が痛かった。


 大量に写真を撮り、満足そうな香織さんとは対照的にげんなりしていたが写真は日常茶飯事らしい。ドンマイ。


 多肉植物のスペースに戻ったら、そこに楠木司さんがいて二人して固まった。サクラバさんは笑うのを我慢すべき。


 サクラバさんと楠木司さんのやり取りは漫才のようだったと蛇足で書き留めておく。

 遠慮のない関係、というやつだ。



 楠木司さんと対談していた時の目は普段とは比べものにならないくらい輝いてたのでもっと普段からやる気とか興味を示すべきだと思う。

 アカペラで軽く"緋の奏"と"夏の雪"を歌ってくれたときは震えてた。感動で声が出ないってこういう事だな、と納得した。


 子供が苦手、というのは息子さんが絶賛反抗期だからなのだとか。だからといって「親が煩わしくなっても会話・・・顔は見せてあげてね」は切実すぎる。まだ見ぬ息子さん(攻略対象)の印象が悪くなった。まぁお年頃だもんね。



 サインは書くものが無かったので断念したが、握手と写真はゲット。滅多にないハイテンションだったのできっと明日は能面顔に違いない。


 楠木さんとサクラバさんは高校の時バンドを組んでいたらしく、もう二人仲の良い友人がいるそうだ。

 ・・・もし(・・)高校でバンドを組む話が出たら全力で回避するか。


 サクラバさんオススメのパーティードレスは紅葉すると真っ赤になるらしいので個人用で買ったのだが、どこから見つけたのか姫秋麗(ひめしゅうれい)という名前も見た目も可愛いやつを購入しているのを見てしまった。

 オトメン設定では無かったと思うのだが、如何にした。


 帰りの車の中で行きよりグロッキーになってたので背中を擦ってやったけど、効果はいまひとつ。家で安静にしたまえ。




 ちなみに司書さんにお礼としてもう一種買ったのだが、選んだのはサクラバさんだったりする。

 見た目可愛かったのとお手頃価格だったので気にしなかったが、バニーカクタスって成長したら全然うさぎに見えない・・・

 このまま手乗りサイズのうさぎでいて貰いたいが、まぁそこは司書さんにお任せということで。




 以上。

多肉植物、可愛いんですよ・・・!

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