過去回想と現状把握。
プロローグ的な。
とりあえずライトなギャグを目指してがんばります。
初投稿なので優しく見守って下さい。
私、橘穂澄は只今第二の人生を歩んでいる真っ最中である。比喩ではなく、物理的・・・いや、精神的に、だが。
どういうことなのかと言うと前世の記憶・・・とでも言うのか、まぁなんとなく自分だったであろう人の記憶があるのだ。
痛い人やら厨二乙とか思うだろうが聞け。事実だ。コンチクショウ。
別段何かしらのきっかけがあった訳ではなく、五歳の誕生日の朝に起きら既に“わたし”という自我の存在が確立していたのだ。
幸い(?)現在の両親は見事な仕事人間なので私が寝た後に帰って来るし、そして朝も早くほぼ毎日顔を合わせないため気付かれることはなかった。
基、私に興味がないのだと思う。まぁそれで不審に思われずに済んだのだから私にとっては有難かったが。なにせ今さら子供のふりなんぞ出来るわけないからね。
ちなみに育ててくれていたのは母方の祖父母で、空手の師範代な爺ちゃんとちょいと天然な優しい婆ちゃんだ。矍鑠な二人は睦まじく、まさに理想の老夫婦だ。
私が“わたし”を思い出したその日に気付き、何かあったのかと心配してくれる有難い祖父母だ。・・・ちなみに、“わたし”についてはそれとなく誤魔化した結果孫馬鹿に拍車がかかった気がする。まぁいいか。
そして前世の私なのだが、驚くことに・・・正直何かの作為を感じなくもないが、前世の私は今の私と同じ名前で性別も然り。
幼馴染み二人と一緒に私立高校に通う二年生で、進学クラス所属の理数系科目を選択していた普通の女子高校生だった。
ちなみに幼馴染みの一人は同じく進学クラスなのだが、文系科目を選択したため隣の教室。もう一人はスポーツ特待生で入学したため校舎が隣だった。
まぁ朝は一緒に登校し、昼は学食で一緒に食べるし、帰りも一緒(課外授業と部活の終わりが同じ時間)だったから仲が良い自信しかないので詳しくは割愛する。
で、三人してファッションやらお笑いやらの流行モノに興味がなく、模試や試合が重ならない休みの日は一緒にゲームやアニメ観賞をしていた。
一言で表すとライトなオタクだ。けっして白い四足歩行する生き物ではない。
ここ大事。本当に大事。
と、こんな感じのありふれた人間の一人に過ぎない私だったのだが・・・一つだけ、少し変わっていただろう所があったと自覚していた事がある。
何がというと私自身のことではなく、親が。
そもそも幼馴染み達に出会ったきっかけが親達が仲が良いからで、理由は同じマンションに住んでいるから。そのマンションは社宅であり、つまり同じ会社に勤めてる同僚。しかも揃って社内結婚。更に父親達、母親達とで部署も同じ。
どんな偶然だよ。と、呆れ半分で聞いたところ社内の合コンで知り合ったと言っていたから納得した。
そんな親達が一体何の会社に勤めてるのかというと、大手ゲーム会社なのである。
ちなみに両親はソフトのシナリオや開発を担当していて、父親達はRPGやバトル、母親達はシュミレーションゲームの製作者だ。
子供がオタクになるのも仕方ないよね。うん。
けどさ、だからといってもさ?白い四足歩行生物になるとは限らないんだよお母さん!ほんと毎回毎回ベーコンレタスなシュミゲを押し付けるのやめてくんないかな!?無駄に声優さんが豪華なせいでやりたくなるんだよ!ほんとやめて!情熱の赤い花も純潔の白い花も餌にしてないから!!
せめてノーマルなのにして下さいって頼んだらさ、物凄く拗ねるし・・・しかもそれで渡された乙女ゲームがさ、もうさ、泣けたね。
ねぇお母さん、何で私は自分をオトさないといけないんですか・・・?
いつの間に私は男になったんですかね・・・?
自分も含め、他攻略キャラが明らかに幼馴染みや知人がモデルになってるとか、どんな拷問・・・?
ガチで悟りがひらけると思った中学二年の夏休み。幼馴染み達を道連れに自分達を攻略したあの夏は、声優さんのイケボに興奮するも、既視感覚えるセリフに羞恥と混乱で発狂寸前の公開処刑の日々だった・・・きっと生き地獄とはアレのことに違いない。
実際にソフトとして売られると何故か人気が出て、その年の売り上げナンバーワンソフトとして雑誌に載り、更に続編まで制作が決定した瞬間の絶望感といったら・・・
閑話休題。
そんなある意味充実したオタク生活を送っていた私達は、特異だったと言えたと思う。
まぁ今になっては過去の話なのだが・・・
そして高校二年の冬休み、私は死んだ。
正確に言えば殺された。ナイフでブスリと刺されて死んだのだ。死因は予想するに出血多量だろう。
刺された直後に犯人に回し蹴りしてKOしたのも一因かもしれない・・・
気絶した犯人を拘束してくれたのは誰だったか・・・男性だったのは覚えているがここら辺の記憶はあやふやだ。
たしか大学生くらいの若い人・・・だったかな。まぁいいや。
通り魔的な、無差別殺人だった。
私の前に刺された人がいて、それを見た人が悲鳴をあげて、それに気付いて振り返ったら、犯人が向かってきてて、それで、刺された。
そんな最後だったが、後悔はしてない。むしろよくやったと褒めたいくらいだ。
だって、そいつは私の幼馴染みを狙っていたから。思わず体が動いてしまったのだ、仕方ない。
幼馴染みが無事なら何の問題はない。
・・・私としては本当に問題なかったのだが、でも、心残りがない訳ではない。
だって、その死ぬ最後の記憶というのが、庇った幼馴染みのぎゃん泣き姿なのだからいたたまれない。というか申し訳ない。
欲を言えば最後は笑顔が見たかった。
まぁ死にかけの幼馴染みが目の前にいて笑えるやつはそうそう居ないか、仕方ない。
そんなわけで死んだ私だが、現在ピカピカの一年生である。今さら小学生とか・・・辛い。
そして、何故長々と前世の過去を回想していたのか。一応、理由がある。
それは同じクラスになった一人の男の子の存在が、私にとって大問題だからだ。
思い返すは入学式を終え自分のクラスにて行われた、恒例の自己紹介タイム。
そう言えばこんなことやったなぁーあー面倒だなぁ・・・と割れ関せずに眺めていたのだ。
カタリと立ち上がったその赤を、見るまでは。
そいつの名前を、聞くまでは。
「ーー葛城翔。好きなものはとくにない。嫌いなことは面倒なこと。よろしく」
赤い、髪。鮮やかとは言えないが黒みがかった赤の髪は傷んではおらず、地毛だと思われる。そして目の色は、まるでルビーみたいな透明感があって綺麗な深紅だった。
聞き覚えのある名前が、声が、見覚えのある顔の面影が、雰囲気が、あまりにも似すぎていて・・・頭の中が、一瞬真っ白になった。
おかしい。
だってこんな偶然、あるわけない。
ありえない。
二次元やファンタジーな世界でないのに、その色彩を持っていることが。
どうして。
まるで本当に、彼が幼くなった姿じゃないか。
そう考えて、一つの推測が浮かんだ。
まさかここは乙女ゲームの世界なのか、と。
しかもその乙女ゲームは、例のアレだ。
そう、アレ。
間違いないく、忘れる訳がないその存在が証明している。
何故なら彼はーー
「何で、何でよりによって葛城翔なんだよ・・・!」
ーーー“わたし”をモデルに作られた、キャラクターなのだから。
頭を抱え唸ること早云十分。五歳の誕生日に前世の記憶を思い出したその時より事態は深刻だ。主にSAN値が。
コレ、どうしたらいいの。
まさか自分がモデルになったキャラが攻略対象の乙女ゲーム世界とか・・・なにそれワロス。
いや、笑えないんだけどね。
ほんと、どうしようか。
悩み続けて更に数分、ふと、思い付く。
そうだ、観察日記をつけよう。
ちなみにこのときの主人公は自分の部屋で蹲って悩んでると思う。




