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2 輪廻転生

 開いてくださり、ありがとうございます!


 そしてお気に入り登録してくださった方、ありがとうございます!

 魔術師とは、科学が発展したあの世では理から外れた存在。


 それ故に魔術師は世界の理の探究者だとか心理の追求者だとか言われるが、そんな大層なものじゃない。どちらかと言えば、他人の生き血を啜って生きる狼。

 俺的に言えばこれの方がしっくりとくる。

 実際、俺が結社にいたころはそんな感じだった。


 結社から送られてくる任務の中で権力のある政治家や社長との結びつきが強くなった。

 そんな俺は、高校生活というものを体験したいと言った。


 履歴や住所などを少しだけちょろまかして入学した高校での生活は、魔術師として傷ついた俺の精神を癒してくれた。


 しかし結社はそれを許さなかった。

 権力者とのつながりが強固なものになるにつれて、俺のレベルに合わない任務の増えていった。


 そして一時期だけ裏の世界で有名になってしまったが、これも本当に偶然の産物だ。

 そしてそれを良しとしなかった結社は、俺を最終的に敵対関係にある結社を消すための道具とした。

 つまり、人柱だ。


 確かに最後の任務は不可解な点が多かった。

 俺が所属している結社に戦争を仕掛けるための準備をしているとか聞かされていたけど、襲った支部の中身は準備しているとは言い難い様子で、つまりは何もなかった。

 敢えて殺さずに手持ちの魔術や尋問で情報を聞き出してみても、そんな情報は全く上がってこなかったし。

 どこぞのラノベだよ。

 明日の宿題もあるし帰るか、と思った途端、あれである。


 俺は騙された途端、もうこんな生活は嫌だと思った。


 あわよくば来世では普通に暮らしてくれ。そう願った。


 そんな俺は今、絶賛混乱中です。


 意識がある。

 痛みがない。

 だが、力が入らない。


 いや、そうじゃない。

 脳を銃弾で撃ち抜かれたのに痛みがないどころか、意識があること自体を不可解に思えて呆気にとられているのもあったけども。


 ようは、いつものように(・・・・・・・)力が入らないのだ。


 力が抜き取られてしまったような感覚。

 まるでいきなり小さいころに戻ったかのようだ。


 しかし、周りにいる人が何言ってるのか全く分かんねぇ……。

 英語でもなさそうだし、魔術関係でのドイツ語でもなさそう。どの言語にも属さない術式なのかも分からない。俺がこの世全ての魔術を知っているわけでもないし、考え方次第では、魔術は開発が可能だ。故にその数は計り知れない。

 そして天井を見る限り、立派そうな家だろうし、どこかの耳に入らない民族の言語でもなさそうだ。


 というか、俺はどうやってあの状況から助かったんだ?

 仮に銃弾が逸れて別の場所へ命中したとしよう。

 でもその場合、あの自決用の爆弾からどうやって助かった。

 あれは左右からの同時爆破だ。だからあの状態での俺では片方の爆破から身を守ることもままならない故に、恐らくは助からない。


 そんなふうに考え込んでいる時、俺の目に茶髪のメイドさんが映った。

 メイド姿? コスプレですか。さよーで。


 と思った途端、メイドさんは50キロはある俺を軽いと言わんばかりに抱きかかえる。

 え?、と思ったのもつかの間。

 そのメイドさんは俗に言う『高い、高い』を始めたのだ。


「――。――?」


 俺は何が何か分からずに首を傾げようとするが、何故かできない。


「――! ――~~」


 俺は口を動かす。

 しかしうまく舌が動かず、あー、うーとまるで赤ん坊のような声を出すことに留まる。

 それがメイドさんには笑って見えたのか、顔を緩ませながら何かを言っている。


 ……いや、待て。

 俺は何言ってるのか分からない、と言おうとした。

 だが赤ん坊の様な声しか出せなかった。


 いや、そんなことはない……はずだ。



 あれから数日が経った。


 あれからあの後のことを考えたが、どう考えてもつじつまが合わないので考えることを止めた。


 ここでの言語もある程度理解した。

 聞くだけで覚えられるということは、高校にいたころはできなかった芸当だ。自分でも信じられない。


 ここでの俺の名前は、レイアーク・インランド、と言うらしい。


 インランド家はなかなか実力を持った冒険者を輩出している家系で、俺の様な赤ん坊にメイドを付けることができるぐらいの金を持っている。だが俺の父さんは本家から離れて分家として暮らすことにしたらしい。

 因みに俺は長男で、一歳違いの姉がいる。


 ここで俺は少しだけ神様に感謝した。

 なぜなら貴族生まれの長男には面倒事が多いからだ。まぁこれはオタクの友達から受け売りの情報であるが。


 母は元々体が弱かったのか、俺を生み落すとすぐに亡くなってしまった、とメイドさんは言っていた。


 父は俺が生まれてから毎日のように俺のところへやってくる。

 この前なんかは「レイよ、私は帰ってきたぁぁああああ!!」とかいっていた。

 ガ○ーか、と思わず脳内で突っ込んでしまったが、この後俺担当のメイドさんにメッチリと絞られていた。

 因みにその後は遠くで何か叫んでいたが、ほかの姉弟にも同じようなことをやったのだろう。その後には赤ん坊の泣き声とメイドさんの怒声が響いてきた。


 俺の父には学習能力がついてないらしい。



 あれから一か月が経ち、基礎的なことは完璧に分かるようになった。

 これはこの一か月間、ずっと他人の会話を一語一句逃さずに聞き続けた努力の賜物だろう。いや、そうだと信じたい。


 そして分かった。


 ……ここ、異世界だ。

 俺は俗に言う、輪廻転生というものをしてしまったらしい。


 改めて俺は自分の思考の鈍さを実感した……。


 ここまできたら普通気付くだろう……。



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