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1 プロローグ

 開いてくださり、ありがとうございます!

 魔術師。


 それは科学が発達した現代では世界の裏側に追いやられた存在で、サブカルチャーのネタになってたりするもののことを指す。


 魔術を使う者だからと言って杖を持ってたり、ローブを着こんでたりはしない。


 銃だって使うし、防具も手の込んだ防護術式を編み込んだスーツやトレンチコートも使う。

 ライフルだって使うし、白兵戦もする。


 魔術師にとっての戦闘なんて、魔術を撃ちあったりするだけのものではない。むしろ見えないことろからの攻撃による暗殺なんてものの方が多い。

 なんせ科学に携わる者達からは目の敵にされているのだ。派手な攻撃なぞできない。故の暗殺だ。


 目立たないように刺殺。ばれないように銃殺。

 こんなもの当たり前。

 たまに紛争地域やゲリラが出現する場所へ行けば魔術行使の跡が見られたりするが、それらは摩訶不思議なことが起こった、と紛らわされてそのまま熱が冷めていくのを待つだけ。


 現代に生きる魔術師にとってそれらのことは当たり前。

 故に身を隠していき、科学の世界で伸び伸び生きる。


 魔術を貰って後悔した者もおれば、それで科学の力を越えてやろうとする輩が現れ、それを討ったとチヤホヤされ、そして彼は人々に討たれる。

 悪は正義の味方に討たれ、正義の味方はやがて英雄となり。

 その英雄は人々に討たれる。

 それはこれまでの歴史が証明している。


 故に、彼は真っ直ぐ生きたかった、と軽い後悔の念に襲われている。


 大川光紀、高校二年生。


 一時のみ裏の世界で有名になった魔術師、――――だった男だ。



 鼻に集る、アルカリの臭い。

 それはつまり灰が舞っているということだ。深夜の時間帯にもかかわらず周りが僅かに赤く見えるのは、何かが燃えているということなのだろう。もちろん灰は体に害を与えないが、臭うと奥をくすぶられる感じがする。


 そしてそれに混じる、微かな鉄の香り。


 つまり血が流れている。

 それも、血だまりができているほどだ。

 それは自分のものだという自覚はある。

 現に腹部周辺に温かい感覚があった。

 でも体内部は冷たくなっていく感覚があり、もう走れる気はしない。


「お前には、ここで死んでもらう」


 目の前に映るのは派手な装飾などは何もなされていない、ただ黒い拳銃。

 それを構えているのは魔術師だ。

 俺はその魔術師の顔を知っていた。

 かつてはともに戦い、同じ結社に所属していた男だった。


「な……んで……」

「そんなことは知るか。ただ金は生活に必要。お前も分かるだろう?」


 その男は拳銃の撃鉄を上げながら口走る。


 その拳銃に込められている弾丸は、たった一発。

 だがその代わりに、必殺の威力を孕んでいる。どんな防護障壁も役に立たないぐらいの。

 その男はその弾丸で、確実に俺を仕留めるだろう。


 場所は人通りの少ないオフィス街の路地裏。そして俺の後ろには壁ときている。

 これはネット用語でいうところの『詰んだ』ということ。


 そんな時、遠くからパトカーのサイレンが響く。


「そろそろ限界だな。ま、悪くは思わないでくれ」


 男のトリガーに力が入り、今にも引いてしまいそうなとき。

 俺は、スイッチを押した。


「――!」


 男は引くと同時に、表情が恐怖の色に染まる。

 もしもの時の自決用の爆弾。

 それが俺と男の左右から襲いかかった。


 俺は銃弾で、男は爆弾で、この世の終わりを迎えた。


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