依頼
俺とレミアは納品の依頼のために王国近くの森へと来ていた。ちなみにこの森俺がこの王国に入る時に通って来た森である。納品の依頼というため危険性は低いが注意して下さい、とリムさんが言っていた。あ、そうそうこの度レミアが冒険者になった。レミアは元冒険者でないのに、なぜ戦闘経験があるのか正直わからないがまあ無理に聞くことでもないだろう。兎も角レミアは戦闘経験があるから冒険者になった方がいいと思い、そう言ったんだが『私はユウキ様の奴隷でございます、ユウキ様と同じ身分などそんな失礼なことを……』だと。俺が望んでるのはレミアと対等な立場での交流であり、共闘なんだがな。そこから数十分説得したんだが納得してもらえず、リムさんに助けを求めたところ……ものの数分で『冒険者になります!』というレミアの元気な返事、リムさん何を言ったんだ
あー、依頼の件だが今回は食材の納品だ。名前は『はねキノコ』鳥とかについている方の羽ではなく飛び跳ねるほうの“はね”だ。しかもこのキノコ、森の中に生えてるのではなくなんと水の中にあるそうだ、しかも逃げるその際跳ねるだそうだ。
ギルドの方で絵は見せてもらったんだが、色は褐色といえばいいんだろうか見た目はまんまただのキノコ。でもキノコって水とか吸わないんだろうか……謎だ
「ねえレミア、今からとりに行くキノコって美味しいの?」
「私は食べたことありませんが、炒めものとかにするとおいしいとのことです」
「うーん、炒めものか美味しいのかな……。あ、レミア冒険者になったんだから他人行儀な話し方やめてよー」
「いえ、しかし。元は奴隷ですので」
「いや、元とか関係ないし……じゃあこうしよう、いまからキノコを獲るけど確か納品は10本だったはず、一人5本でどっちが早く獲れるか競争ね。私が勝ったらその話し方を変えること、レミアが勝ったらそうだな……私ができる限りで願いを叶えましょう!」
少々強引なお願いかもしれないがこれからの関係を深めるためにもここは譲れない。てか、俺女の口調に慣れてないか?元の世界に戻ったとき不安だな……
「いいんですか!?ほんとに叶えてもらえますか??」
「うっうん、私にできる範囲だよ?」
「はい!それは分かっております、本気でいきますね」
レミアの目が本気になっている、しかもなんか腕とか回し始めてる。準備体操なのか?どんなお願いだろう、お金の面で解決できるかな、てかレミアのお願いが想像できん……
♢♢♢
川辺に着いた。目の前には透き通る程の水、近くに小さい滝でもあるのかドドドという水の音、少しひんやりとした空気が肌に伝わる。レミアは相変わらず準備体操の最中、なんでそこまで本気なのか。でも俺も準備体操しなければ、こちらの世界にきてからそんな日にちは立っていないため、こちらの世界の体にまだ慣れていない。首から始め、手首腰ふくらはぎなど体を動かす、女になったとはいえ身体能力は強化されてるし負けることはないだろう、多分な多分……
「レミア、そろそろ始める?」
「はい!しかし獲ったあとはどうすれば?」
「あー、よし!」
腰に刺してある剣で近くの木に大きな×のしるしを付ける。これだけでは少々わかりにくいがこれも勝負の一つと思い納得する
「これが目印ね、5本獲ったらここに来る。早く来たほうが勝ちね」
「わかりました、でははじめの合図は?」
「うーん、石を川に投げて音がしたと同時でいい?」
「了解です、では正々堂々やりましょうね」
笑顔でこちらを見てくる、正直レミアがどれくらいすごいのかはわからないのでこちらとしてもやりにくい。兎に角始めるために拳程の大きさの石を拾い、レミアに目で確認する。レミアは分かったのか頷く、俺は石を高く川へと投げた。
石が川へと落ちた瞬間、レミアのスタートダッシュは凄まじかった。突風のような速さに、石から石へと飛び移るジャンプの正確さ、正直見てる場合ではなかったが呆気にとられた。レミアの行った方向に行っても取り合いになるだろう。少し方向を変えていくしかない、そう判断しレミア行った方向とは違う方へとダッシュする
少し上流の方へと来たが深さはあまり変わらなかった、脛にかかるくらいだった。今や目ですら良くなっている俺だが中々キノコが見つからない。こんな水の中にあったら目立つハズなんだが……もしかしたら日当たりとか関係するのかもしれない、この辺一帯は全体的に日陰になっているもしかしたら日向の方へと集まってるのかもしれない。
予想はビンゴだった。少し離れた位置からだがキノコが密集しているのがわかった。ちなみにまだ始まってからそんなに経ってないと思うのでまだ大丈夫なはずだ。
とはいえ、どうやって捕まえるか。石を投げるというのは依頼のため却下、魔法も然りと……。やっぱ単純に近づいて捕まえるしかないか、なんか金ピカの時を思い出すな。兎に角もう少し近づかなければ。
キノコまではおよそ5mといった所で、機械を伺う。数はおそらく7本、大きさはそんな大きくないなシイタケと同じくらいか。これなら5本持てるだろう、よしじゃあやるか
少し石が出ている所に乗り、ジャンプする体制に移る。一回で5本行けたらいいがそんなに甘くもないだろう、覚悟しなきゃな。そこから俺はキノコの真上とジャンプ、覆いかぶさるように行く。キノコへと残り30cmといったところで不自然いやこちらでは自然なのかもしれないような出来事が起こった。手で捕まえようとした瞬間、キノコが後ろ方向へ跳ねたのだ。少し焦ったため3本しか獲れなかったが、まだチャンスはある。
そこからの戦いは大変だった、手の中のキノコは跳ねる、当然追いかけてるのも跳ねるというのがあったからだ。まるであのキノコ、エビみたいな動きだな。確かエビを獲るときは後ろに網とかを仕掛けるとかだったような気がするが、生憎今はそんなものは持ってない、地道に追いかけて捕まえるしかなかった。
♢♢♢
なんとか5本手に入れた俺は、目印のある場所へと走っていた。正直あんまり勝っている自信はなかった、予想以上に時間がかかったからだ。ここに来る途中にレミアの姿も確認していない
目印の所に着くと、驚くことにレミアは居なかった。苦戦しているのだろうか、でもあんなに本気になってたんだけどな。まあ勝ったんだ、よしとしよう。なんか疲れたな、しかも少し寒い。濡れたからかな、でも火の起こし方とか――まてよ、《狐火》を中心において回りに気を並べればいいんじゃないか?イメージを火に近づけて大きさはなるべく小さくすればいけるかもしれない、よし木を拾ってくるか
枝を抱えるほど探し集め、戻ってきてもレミアの姿はなかった、大丈夫かな……溺れたりとかはないよな、早く戻って来てよ、寂しいじゃないか。おっと、火を起こさなければなレミアもその方が喜ぶだろう、木を円を作るように並べる
「《狐火》」
木の丁度中心に来るように場所を設定、大きさも今日やったやつの半分程にしている。数秒たつとパチパチという音がする、木に火が移ったのだろう成功だ。待てよ、魔力の量を変えると失敗とかするんじゃないのか?でもこれは小さい形で保っている、どうしてだろう、あとでレミアに聞いてみよう。兎に角成功だ、ジワジワと温かくなる、レミアまだか……
火がついてから数分程後だろうか、ずぶ濡れになったレミアが手にキノコを持って帰ってきた。顔は少し元気がなく疲れてるのか足取りが覚束ないように見える。すぐに近くにいき、体を支えた。体は冷たかった、すぐに火の元へと連れていく
「レミア大丈夫?こんな濡れてなんかあった?」
「すいません、奴隷というのが長かったというのもあり体がうまく動かなく、しかも川の深い所まで逃げられ他のを探すことなく捕まえることだけに必死になっていました、申し訳ありません」
「なんで謝るの?こうしてキノコ獲って戻ってきたんだからいいんだよ、ほら服乾かさなきゃ恥ずかしいかもしれないけど上だけは脱いで」
「すみません」
レミアが上の服を脱ぐ、俺も同様に脱ぐ。俺の服は濡れていなかったのでレミアに着させた方がいいだろうと思ったからだ。レミアから服を受け取り、代わりに服を渡す。今上が下着姿の俺だが、森には人影は見当たらないし元は男だ、これくらいなんともない。
今は自分の肩にレミアの頭がくるような感じで座っている。川辺だと少し寒いが火があるため今は大丈夫だ。服は木に掛けて干している。
「ユウキ様」
「ん、どうした?」
「少し寝かせてもらえないでしょうか?体力が限界でして……」
「うん、じゃあここで寝なよ、土とかの上だと体痛いでしょ」
そういって、自分の太ももを叩く。今日は短いズボンのようなものを履いてきたため白い肌が見えているが、相手はレミアなんも問題はない、と思う。正直ここで拒否られたら泣きそうだけどな
「では、そうさせていただきます」
レミアがなんも躊躇いなしに太ももの上へと頭を乗せてきた。顔をこちらへと向け目を閉じている。耳がピョコピョコと動いている。少しは安心するだろうと思い、頭を撫でる。するとレミアの口元が動いたようにも見えた、どうやら喜んでいる?らしい。
数分間、撫でているとレミアが寝たようだった。規則正しく寝息を立てている、俺も少し疲れが溜まったのか眠くなってきた。目の前のユラユラと揺れる火を見ているとますます眠くなる。だめだ、ちゃんと見てないとレミアが寝てる…の……に…
♢♢♢
誰かに頭を撫でられている気がする。あ、そうだ寝ちゃだめだ、起きなきゃ。瞼を開けると目の間には――レミアの笑顔。なぜか体勢が逆転している。今俺はレミアの太ももの上に寝ている状態だ。
「レミア元気になったの?」
「はい!寝たら回復しました、ユウキ様申し訳ありません私のためにそのような格好をさせてしまい……」
見てみると俺の上にはレミアの服が掛けてあった。どうやら乾いたのを持ってきて掛けてくれたらしい、下着が隠れるようにしてある。
「いいよいいよ、レミアのこと心配だったし。うんしょっと」
名残惜しいがレミアの太ももを離れる、なぜかレミアも残念そうにしているが。そういえば、キノコは?一か所に置いてそのまま――と思ったら木のそばにまとめてあった。何故かキノコがぐったりしているようにも見える、このキノコ本当は魔物の一種なんじゃないか?
「よしっじゃあレミアそろそろ帰ろ?」
服を着ながら問いかける。寝たから時間が大分たっているかもしれない、早く帰らないと。
「はい!」
レミアも立ち上がり、キノコを手に持ち準備する。以外にこの依頼大変だったな、討伐系はもっと大変なのか?という疑問を持ちながら俺とレミアはギルドへと帰った。
やっと依頼スタートです。いやーなかなか進まないですね、はやく魔法の方もやりたいんですが……
なんかユウキが男らしくもあり、女らしくなっているという不思議な現象がそれをこの小説のよさにできたら一番いいんだけどなー
あ、そういえばpvが10000いきました!すっごくうれしいです、こんな初心者の投稿作品がそこまで行って大丈夫なのだろうか……
インフルに掛かって少し投稿が遅れました、すいません。これからもこの作品見ていただけると嬉しいです!!