それから
お義母さんは言った
「マキちゃん。もう私らには子供がおらんくなる。娘として一緒におってくれへん?」
もうすぐしんちゃんの誕生日だ。皆で誕生日パーティーを開くことになり集まった
しんちゃんの好きだった酢豚を作って欲しいとお義母さんにお願いする
お義父さんは、そんなことしてもらいたくない!と怒っていたが準備してくれた
「しんちゃん!年取りたくないって言ってたよな!若いままや」
写真に向かって話皆で酒を飲んだ
享年26歳だった
私はしんちゃんにもらった手紙を見せた
皆。泣いていた
私は持っているしんちゃんの写真全てを、何冊かのアルバムにし
しんちゃんの家に行った
お義母さんに渡すと
「私が死んだ時にはこれも一緒に入れてもらうな。マキちゃんありがとう」そう言っていた
気になり何度か店に顔を出していたが、おばちゃんに言われた
「父ちゃんがな。マキちゃんもう来んといて欲しいって言うんやわ。マキちゃん見ると思い出すからって」
でもいつかマキちゃん子供が出来たら、連れて会いに来てな
そう言われたのが最後になった
事故現場には皆で花束、ビールタバコを供えに行った
「ここさ、魔の通り道って呼ばれてて事故が多いんだよな」
友達がそう話していた
私はそれを最後にこの道路国道1号線は、今でも通っていない
お墓はあるのだが、お義父さんがお骨を入れたくないってそのまま家にあるみたいだと聞いた
お母さんに話すと、成仏できないから入れてあげないと。と言っていた
仕事に戻ると上司は言った
「もうお前には仕事しか残ってないんだよ」
仕事しかないんだ
無我夢中で働いてしんちゃんのことは考えないようにしよう
夜は姉の家でとにかく毎晩ビールを飲んだ
飲んで忘れたい
そして寝てしまえばいい
それでも夢にしんちゃんが現れる
その繰り返しが続く
しんちゃんの声が聞きたい!
しんちゃんの携帯に電話をかけると、コール音がした!
ビックリして電話を切った
まだ解約してなかったんだ
そう思った
私は正社員になり主任になった
「お前、嫌われ役になれ」
そう言われ、分かりました。と従業員に接客の指導をするようになる
それまで派遣だったやつが上司になる
レストランのパートさん達には嫌われ始め、聞こえるように悪口を言われた
必死で働いた
「お子さんは、まだなの?」その質問が一番辛かった
誰も何も知らない
本当のことには触れられたくない
オーダーを取りながら隣で立っていた別の上司が、笑いながら言っていた。
不幸な子でねー!不幸は移るって言うけど!ガハハ
ペンで書いている文字がブルブル震え、書けない
ごめん!ちょっとトイレ!
トイレに駆け込み一人で泣いた
ダメだ!集中するんだ!
考えてはいけない
仕事の事以外考えるな!
涙を拭き仕事に戻る
その夜誰もいない事務所からお母さんに電話をかけた。
お母さんの声を聞いたら涙が溢れて止まらなくなった
そこに上司が入ってきて
「おぅおぅ。そりゃ泣くわなぁ」
と言った
慌てて電話を切り、失礼しますと事務所を出た
帰りに2人で住んでいた新居に行き、鍵をあけ中に入った
電気もつけず、一人座った
洗濯機の中にはしんちゃんの服が入ったままだった
シーンとした部屋で朝まで過ごした
マキが帰ってこない!とお姉ちゃんがお母さんに話す
新居にいたと話したら
あの子大丈夫なのかしら、おかしくなったんじゃないのか
そう心配していたと言う




