コンピューター・ヒトラーの闇
ここは、1920年の別の世界線。その別の世界線は、ホットモードとスノーモードが存在する。
その世界線に、コンピュータ化されたヒトラーが登場する。
そしてある12歳の少年は、ヒトラーを殺すために、3000人を殺す決断をするーーーーーーーーーーーー
派手な物語の展開が特徴的な、tha・sf短編!!!
ここは、惑星「バウンド」、季節はスノーモード。
全体主義に陥ったナチス党、コンピュータ・ヒトラーは、自身のメモリーの安全性を確保するために、自身のメモリーを水中カバーする工事に入った。かの有名なコンピュータ・ヒトラーは、この工事をいつも通り、特定の人間を選んだ。そのコンピュータ・ヒトラーのサイズを見ると、約3キロメートルの正方形に及ぶ、腰を抜かすほどの大きさであった。
ことの発端は、まだコンピューター化されていなかったころのヒトラーが、徐々に変わるスノーモードに苦しまされていた。
その前に、スノーモードとは何か、定義しておくべきだろう。
この星では、季節がスノーモードと、ホットモードと、ノーマルモードが存在していた。
スノーモードは、超低温の季節を意味する言葉だ。
また、ホットモードは、2000度を超える。まさに危険だ。
ノーマルモードは、30度の状態がいつも続く。この季節は、20年ごとに変わっている。
この気温は、すべて惑星「ヘル」から、熱を放出している。
この惑星「バウンド」は、このヘルから、バウンドするような軌道を描いており、世の天文学者も目を点にしたものである。この惑星の名前も、そのような意味があるらしい。
こんな惑星でも、生命が誕生しているのだから、仰天なものである。そしてさらに、生物学上、気温に対する耐性が付かなかったのが、まったくもっておかしい話である。
まあそんな惑星だから、平均寿命は、20歳なのだ。
よってこの星の説明は以上。
さて、まだコンピューター化されていなかったヒトラーは、自分の死を恐れ、ある有名な学者、アルベルトを呼びだした。アルベルトは、ヒトラーが永久的に生きていけるように、ヒトラーの脳をコンピューターのクラウド上に情報を送ることに成功した。だが、これは、本質的な問題に取り組んでいたわけではなかった。コンピューターによって一時的には耐えられるが、スノーモードは、こんなものではなかった。スノーモードは、コンピューターでさえも、機能停止させる、とんでもない季節である。
機能停止の話を聞いたコンピューター・ヒトラーは、激怒して、アルベルトを死刑に処した。
コンピューター・ヒトラーは、自身で守る方法を考え付いた。ヒトラーは、ヘルの軌道が、遠ざかる前に、考えた。そこで生み出したのが、超低温発電である。まず、ヘルの軌道が遠ざかっていくときに、水を、粒子分解して、分子の動きを観測する。激しく動くほど、その分子の運動を発電に利用する方法を思いついた。また、その発電で、水を超高温で熱し、
そして今、その工事をしている。
そしてまた、その考え事をすました際にコンピューター・ヒトラーは、人々を効率的に支配するために、ある方法を思いついたのだ。これが地獄の始まりだった。
この全国民の考えている情報を、すべてわかるようにしようとした。全国民の脳波を記録するよう、命令したのだ。ヒトラーは、全国民を、支配したのである。
この知らせを先に聞いた、ヒトラーの側近であったフリードリヒは、この命令に逆らおうとしていたのである。
「こんなバカな話はあるか。国民は、強制労働したいと思って、ヒトラーに票を入れたわけではないだろう!全国民は、自由を願って、安心で平等な国を願って、ヒトラーに票を入れたんだ!」
と、部下であるフランツや、ルドルフに向かって激昂したという。机をたたいた、いや、机を破壊するほどに、相当の怒りだったという。
また、のちに、フリードリヒは、頭に血が上って、憤死しそうなときもあったようだった。
フリードリヒは、時に鬱になったり、この上ないほど、怒っていたりと、精神が不安定になるほど、おかしくなっていった。
この時のフリードリヒの子である、ハンスは、日々の父親の激変を感じていたーー
当時12歳であったハンスは、西洋から来た医学書や、科学書に、深い感動を抱いていた。
こんな素晴らしい本はあるのか。また、好奇心に終わりはあるのか、好奇心は最も尊い存在だと自分で気づいた。父親の部屋は、そこらじゅうに、医学書や、科学書、政治に関する本など、たくさんあり、子どもの心を震わせていた。もちろん、本なんていくらでもあるから、全部読み切ることなど、さすがに、ありえなかった。
父親であるフリードリヒは、政治に興味を持ってほしいと、嘆いていたが、この好奇心のある子供を止めることはできなかった。
ある日の夜の事だった。フリードリヒは仕事の鬼であったが、ハンスの育児にはいつものように、興味を持っていた。仕事と育児を両立させる怪物だと、町ではいわれたという。父親と、トランプで遊んだり、読み聞かせをしてくれたりと、忙しい家族なりに頑張ってくれていたのだろうと、思う。ハンスにはいつも挨拶してくれたし、このハンスの自由さも、父親のやさしさゆえの産物かもしれない。今も、父親は、ハンスにはやさしくしてくれた。だから、ハンスは、今に満足していたし、ずっと続くと、思っていた。ただ、それは、フリードリヒの精神が安定していたからにしかままならなかった。
見たことないくらいのバカみたいな怒号が聞こえた。当時寝ていたハンスでさえも、いや、お隣に住んでいた小太りなおじさんも、起こしたものである。
そしてハンスも、心地よい眠りからの逆境から、
「うるさい!!」
と怒鳴り散らし、ついには飛び起きて、父親の部屋に、じたばた階段が壊れるほどの足音で、向かうと、そこには、机をたたき割る父親の姿があった。父親は見たことないくらいのひどく怒った表情をしていた。とっさにハンスは、うなだれている部下の様子を見て、部下が何かしたのだろう、と思ってしまった。ただこの思いが、一瞬でかき消されたのは、いうまでもない。
父親は、部下のルドルフに向かって、机を投げ飛ばしたのである。そして、
「くそがああああああああああああああああ」
と叫びながら、また部下のルドルフに、腹を殴りつぶした。ルドルフは死にそうになりながらも、必死に父親にしがみつきながら、
「おやめください!落ち着いてください!」と叫ぶ。
これは隣にいたフランツも同じである。
フランツは、足に机が当たり、足の骨をえぐった。血が吹き飛ぶ。ふらふらになりながらも、父親にしがみついた。
当時12歳であったハンスには、かなりショッキングだった。そして今度は、自分に当たるようになった。ハンスは、父親の手強い拳を真に受け、腹をつぶされたような鋭い痛みを感じた。机も吹き飛んだ。痛みに耐えきれず、泣きながら、
「やめて!お父さん!」と叫んだが、父親はまだ憤怒している様子で、机の脚の欠片が当たって片目が死んだ。頭にも何度かあたり、ついには意識を失った。最悪の夜だった。
目が覚めるころには、父親はどこか消えていて、老執事のクラウスに、どこに消えたのか、聞いてみると、
「お父様ですか。お父様は、「頭を冷やしてくる」といってどこかへ出かけましたよ。」
この時の自分は、あの血相の父親がいなくて、ほっと胸に手をおいたものである。
この後、父親が返ってくると、
「いやあ、ハンス!すまないねえ!」
偉く上機嫌で、どこか父親に奇妙さと不満を感じた。背に冷たいものが走ったように感じた。
片目を失ったハンスに対しても、少し遠慮すべきではないかと、少し思ったのだが、それよりも、あの地獄のような怒りから、どう冷えたのか、そっちのほうが、よっぽど謎であった。
ただ、当時の愚かな自分は、少し疑いながらも、お父さんの正気に戻ったのが、よっぽど嬉しかったのか、喜んだものである。
しかし、喜んだのもつかの間、父親が急死したのである。あんなに楽しそうだった父親が、なぜ、と当時の愚かな自分は思った。
「うおおおおおおおおおおおおお」
と、本を投げながら、泣きじゃくったという。なぜ、あんなに元気だったのに、お父さんは死んだのか。
医者に、死因を聞いてみると、毒殺だという。この事実に、場が凍った。
「つまり、他殺ということです。今、警察に捜査してもらっているところです。」
この時、ハンスは、父親を殺したくそ野郎をぶっ殺してやろうと、思ったのである。これがすべての発端でもあった。
しかし、あまりにも、犯人逮捕が遅すぎた。それに気づいたハンスは、警察署に忍び込んだ。意外にも、簡単に入れた。見張り員を欺くのは容易だった。
ただ、警察署に行ったとしても、どこに毒殺事件の資料があるかなんて12歳の自分には簡単にはわからなかった。そして、4時間かけて、ついに毒殺事件の資料を見つけた。
毒殺事件の資料にはこのように書いてあった。
今回の毒殺事件は、ナチス党である、アドルフヒトラー関係者によるものの犯行である。また、フリードリヒの部下であったフランツと、ナチス党の共犯の可能性が高い。
また、ナチス党からの、隠蔽の命令を確認した。よって今回の毒殺事件を、未解決事件として、隠蔽することをここに証する アドルフ・ヒトラー
また、暗殺のための薬物または毒物を使用を許可したことをここに証する アドルフ・ヒトラー
これを見たハンスは、権力とは、こんなに醜いものなのか、と、憤りを感じた。紙を破った。
父親は、ナチス党にたぶらかされていたのである。しかし、なぜ、父親は、ナチスに殺されたのだろう。そんなに恨まれるような、悲惨なことをしたのか、と疑問に思う。他の資料を見てみる。
フリードリヒは、「全国民の脳波を計測し、国民の様子を計測し、支配する」という、全国民脳波計測命令を、1920年に発布する予定だったのを知り、フリードリヒは、激昂した。
フリードリヒは、そこから、アドルフ・ヒトラー暗殺または爆殺を計画した。よって、暗殺未遂犯として、毒殺した。
また、密告したフランツには、200万ユーロを授かることとする。
アドルフ・ヒトラー
これを見て、自分は言葉を失った。そもそも、全国民の脳波を計測して、支配するとは何事か、それでは、全国民がヒトラーの奴隷になってしまうのではないか、と。
フリードリヒは正しい行いをした、と思った。あのヒトラーめ、国民を支配しようとしたのか、と思った。
ハンスは、亡き父親の思いをつなごうと思った。
この話を家族や執事に、うちあけたら、様々な反応をした。老執事であるクラウスは、うなだれたし、自分の母親などは、父親と似たような怒りの表情をしていた。
そして、フリードリヒ一家は、アドルフ・ヒトラーを暗殺しようと画策した。ハンスは口を開いた。
「ヒトラーを暗殺するしかない。国民を、守るために。ヒトラーを殺すんだ。亡き父の仇でもある。」
「うむ、そうですな。現在ヒトラーは、コンピューター化されていますからね。うーむ、そういえば、お父様は、ヒトラーの側近でしたよね。お父様の部屋に、何かヒトラーの動きが読めるのではないですか。」
このクラウスの意見には、全員が賛成した。全員、お父さんの部屋へ向かった。お父さんの部屋には、沢山の資料があった。
資料を一枚一枚丁寧に見ていくと、「コンピューター・ヒトラー防御計画」という、名前が記された資料があった。
コンピューター・ヒトラー統裁防御計画について
アドルフ・ヒトラー
1・アドルフヒトラー統裁の防御について
コンピューターヒトラーは、天文学者がスノーモードの再来を予見したことにより、スノーモードに対して、防御することを命令した。
また、防御方法においてはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2.特別員の指定について
アドルフヒトラーは、自身の安全のために、工事を特別員のみのものとする。
ここに特別員を示す
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以下の特別員が工事の許可を証する。
3.工事する場所について
××駅の右あたりの10メートル先のホテルの横
(地図)
以上
「うーむ、あまり使えそうな資料はなさそうですな。」
クラウスは言った。
「いや、この「コンピューター・ヒトラー防御計画」の資料を見てほしい。この資料に、工事場所が書かれている。これってヒトラーの場所を指していると思うんだ。そこを、ニトログリセリンで、爆殺できないか?」
この僕の意見には、全員が賛成した。
「じゃあ、ヒトラー暗殺計画を説明しよう。まず、だれか一人が、ヒトラーの工事場所の下見を開始する。ヒトラーの場所がどういうところなのか、しっかりわからないからな。で、それ次第で作戦を変えるしかなさそうだ。第一、この資料には、警備員がどれくらいいるかわからないからな。。」
下見には、フリードリヒの母親のダリアにした。ぶっちゃけ下見が一番危ない仕事なのだが、ダリアは、「こんなこと次起こることに大したことないじゃない。全国民の運命を今、この家族に尋ねられているのだから。」といったものだから、すごいものである。
下見の結果をもってきたダリアが来てきた。
「すごかったわ。警備員は3000人くらいいたし、工事員には、全員24時間の聞き取り調査をするらしいわ。」
「それはすごいな。ただ、3000人だと、大したことはない。」
ダリアは、察したようだった。
「まさか、、、、」
「昔、お父さんは元武器商人だっただろう。その時、お父さんは、爆撃機と大爆弾をたくさん作っていた。今、倉庫にたくさんある。それを使って、、、、、」
「3000人とヒトラーを殺す。」
「そんな!人を救うために、人を殺すなんて馬鹿げてる!そして、たった一人を殺すために、無駄な犠牲を払うなど馬鹿げている!」
家族全員が反対した。
「どうせくだらない人生さ。お父さんのために、僕は、全人類を殺すことだってできるさ。お父さんの仇を打つためにそうするしかないさ。」
ハンスは、武器倉庫に向かって走っていった。
行くな、ハンス。
誰もが思っていたことであろう。
ある日の昼のことだったと思う。その日は、雲があっていて、少し暗くなっていた。上空にいるハンスは、すべての爆弾を抱えて、コンピューター・ヒトラーなる建物に、投下した。
爆弾が投下された。
ニュースや新聞でも報道されて、「コンピューター・ヒトラー統裁とその近くに集まっていた3000人を、何者かが爆殺か」という見出しが躍るようになっていた。
ハンスは、夜に、帰ってきた。しかし、その時の顔は、少し暗い顔をしていた。ハンスは、少し涙声で、
「コンピューター・ヒトラーは、死んだ。でも、本当に死んだのか、わからないんだ。コンピューター・ヒトラーは、この上ないほど、天才なはずだ。天才なら、こういう最悪な想定もしているはずだ。ええと、つまり、僕が言いたいことは、どこかで、コンピューター・ヒトラーは、再実体化しているじゃないか、と。コンピューター・ヒトラーが死んでいないのなら、僕は、ただ、何の罪もない、3000人を殺しただけなんじゃないかって。思ったんだ。」
家族全員が、その一言に、背に冷や水を浴びせられたような錯覚に陥った。
温かい目で見てください。