第9話 広場と花々
「見たことが無い花がたくさんあってとても綺麗だニャ」
「あ、シャーラ!」
シオンがヤナワシから説明を受けている隙に、広場に咲き誇っていた花々をキラキラした目で見ていたシャーラ。
そんな彼女にシオンが呆れていると、ニコニコと笑みを浮かべたヤナワシがシャーラに近寄った。
「シャーラさんはお花畑がお好きなのですか?」
「はいニャ! 小さい頃はお花屋さんになることが夢でしたニャ!」
「では、どうして今のお仕事に?」
人の良さそうな笑みを浮かべるヤナワシに、満面の笑みを浮かべたシャーラがシオンの方を見つめた。
「アカデミーに入る前、実家で使っている水道が壊れてしまって、それを直してくれたのがシオン先輩でしたニャ」
「へぇ、シオンさんはその時には相談所で働いていたのですか?」
「はい。当時、新米相談員でしたし……実は、その相談が私にとって初めての案件でした」
「ほう」
「そうだったのですかニャ!?」
興味深そうに見つめるヤナワシと、驚いて声を上げたシャーラを見て、シオンは柔らかな笑みを浮かべるとあの日のことを思い出す。
「初めての案件でド緊張していましたが、その時相談に来ていたシャーラの明るさに救われて、私は教育係をしていた先輩に相談しながら無事に相談を解決することが出来ました」
「そうだったのですね。それで、シャーラさんはそんなシオンさんの姿に憧れて、今のお仕事についたのですか?」
「はいニャ!」
元気よく返事をしたシャーラもまた、シオンが壊れた水道を魔法で直しに来てくれた時のことを思い出す。
「シオン先輩の真摯に寄り添ってくれるカッコよさに憧れて、私は相談所に就職することを決めたのですニャ!」
「そうでしたか。それはさぞかし、良いご縁に恵まれましたね」
「えへへへ、とは言っても、まだまだ新米ですし、所長にはしょっちゅう怒られてしまいますニャ」
照れくさそうに笑ったシャーラは、ふと広場中央に置いてある巨大な銅像に視線を向けた。
「ヤナワシさん、あの銅像は何かニャ?」
「あれは、かつてこの国を厄災から救ってくださった『異世界人』の銅像です。この建国祭も、実はこの国を救ってくださった異世界人を讃えるお祭りでもあるのですよ」
「あれが、異世界人」
星型の大きな杖を構え、威風堂々した表情で立っている銅像に近づいたシャーラは、異世界人が来ている服に既視感を覚え、近くにいたシオンに耳打ちする。
「シオン先輩、あの異世界人の恰好、ケットシーの民族衣装に似ているニャ」
「確かに、そう見えるわね」
ナージュ国のケットシーの達は民族衣装として、体を覆うローブと三角帽子の大きな帽子を毎日身につけている。
不思議そうに銅像を見つめるシオンから離れたシャーラは、広場を見回して思考を巡らせる。
これは、彼女の中で何かが閃く前兆である。
「光・花畑・異世界人・魔法・変身……そうだ、良いこと思いついたニャ!!!!」
突然大声を上げたことで、周囲の視線を集めてしまい、ペコペコと頭を下げたシャーラは、今度はヤナワシに耳打ちをする。
「ヤナワシさん、イルミネーションっていつ皆さん披露する予定ですかニャ?」
「え、ええっと……一応、建国祭の夜のフィナーレに披露する予定ですが」
「夜! 良いですニャ!」
パッと花が開いたような笑みを浮かべたシャーラを見て、何かを思いついたのだろう察したシオンが声をかける。
「シャーラ、イルミネーションについて何か分かったの?」
「いえ、何も。ですが……」
広場と大通りを交互に見たシャーラは、ヤナワシとシオンに向かって大きく手を広げる。
「ヤナワシさん、この街を色とりどりの光に照らされた美しい街に変えますニャ!」
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