第5話 その相談、引き受けますニャ!
「シャーラ?」
「その相談、是非ともお引き受けさせてくださいニャ!」
「はい?」
「シャーラ!?」
普段は冷静沈着なシオンの驚き顔を他所に、妙案を思いついたとばかりに満面の笑みを浮かべるシャーラ、拘束されているヤナワシの両手を握った。
「ほ、本当に良いのですか?」
「はいニャ! ヤナワシさんの『イルミネーション』にかける思い、とても伝わってきましたニャ! だから、是非ともその魔法を見つけるお手伝いをさせてくださいニャ!」
底抜けに明るく、とてもお人好しなシャーラは、とても感受性が強く、相談者の想いに共感した途端、すぐに引き受けてしまう。
そのせいで、シオンに迷惑をかけたり、アカネによく怒られたりするのだが。
キラキラと黄色い瞳を輝かせるシャーラの気迫に、ヤナワシが困惑しながら押されていると、シオンがシャーラの肩を後ろから掴んだ。
「おい、シャーラ。いくら何でもそれは流石にダメだ」
「ですが、シオン先輩! 困っているところを助けるのが当たり前のことで、相談員の役目ではないのですかニャ!」
「た、確かにそうだが……でも、相手は人間なんだぞ?」
かつて、他国から侵略を受けそうになったナージュ国は、特に人間に対しては幾重にも侵略しに来た過去があるため、『最も嫌いな種族』として忌み嫌われている。
もちろんそれはシャーラも知っている。だが、ヤナワシの熱い執念に応えたいと思ってしまったのだ。
すると、2人の会話を聞いていたヤナワシが静かに口を開いた。
「そう言えば、この国では通貨は何を使われていますか?」
「えっと、『オン』ですが……突然どうされたのですか?」
「そうですか。良かった、同じ通貨でしたらお支払い出来そうですね」
「「えっ?」」
安堵の笑みを浮かべるヤナワシに、2人が揃って首を傾げていると、ヤナワシが持ってきていた荷物を検査していたケットシーが突然、大きな麻袋を抱えたまま相談室に入ってきた。
「あぁ、問題が無かったようです。ありがとうございます」
「確かに、特に怪しい物は無かったが……あんた、この『オン』の大金を何に使うつもりだったんだ?」
「「っ!?」」
驚いてヤナワシを見る2人を他所に、ヤナワシが深々と頭を下げると、荷物検査をしていたケットシーが、床に置いた大きい麻袋を叩いて問い質す。
すると、顔を上げたヤナワシが満足げな笑みを浮かべる。
「それはもちろん、『イルミネーション』を実現させてくださった方への報酬としてお渡しするのです」
「は!? つまり、あんたが持っていたこの大袋に入っている大金は、この国を侵略するものではなく、全て成功報酬になるってことか!?」
「もちろんでございます。そもそも、他国を侵略するのでしたら、その程度のはした金では無理でしょう?」
人の良さそうな笑みを浮かべるヤナワシの言葉に、荷物検査をしていたケットシーが納得したように頷くと、持ち込まれた袋の中身を確かめたシャーラが、驚いて固まっているシオンに耳打ちする。
「シオン先輩、私たちがヤナワシさんの相談を引き受けて、成功すれば所長の年収とほぼ同等の大金が相談所に入ってくるのですニャ。そうなったら、間違いなく臨時ボーナス発生ですニャ!」
「た、確かにそうだが……」
「それに、気になりませんかニャ? 『イルミネーション』と呼ばれる魔法が」
「うっ!」
実は、大の魔法マニアであるシオンは、ヤナワシが話していた『イルミネーション』と呼ばれる幻の魔法がずっと気になって仕方なかった。
それを知っていたシャーラは、悪い顔でシオンを唆していると、ヤナワシが2人に視線を戻した。
「シャーラさん、シオンさん。もし、私の相談を引き受けてくだり、『イルミネーション』に関する何かしらの手がかりを掴みましたら、こちらの麻袋を入っている『1000万オン』を成功報酬としてお2人にお渡しいたします」
「わ、私たち2人にですかニャ!?」
「もちろんです」
ヤナワシの言葉に生唾を飲み込んだシャーラは、なぜか期待の目を向けている荷物検査していたケットシーを無視し、シオンの顔を見る。
予想以上の大金と、まだ知らない魔法が見つかるかもしれないと考えたシオンは、深く溜息をつくと小さく頷いた。
それを見たシャーラは、嬉しそうな笑みを浮かべるとヤナワシに向かって胸を叩いた。
「お任せくださいニャ! このシャーラ! シオン先輩と共に必ずやヤナワシの相談を解決してみせますニャ!」
「えっ!? 私も……」
「おぉ、それはありがとうございます!」
安堵した表情で喜ぶヤナワシの顔を見て、シオンは手に顔を当てると小さく呟いた。
「どうやって所長を説得しよう?」
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