第3話 人間の相談者(後編)
「ヒッ!」
「所長!」
怯えている男を見て、シャーラが声をかけると、険しい顔をしたアカネがシャーラを睨みつけた。
「こいつは、この国に害をもたらす。だからこの場で殺す」
「そ、そんな! 私はただ、湖でお願いをしただけで……」
「うるさい!! この国に来た時点で、貴様に生きる価値などない!!」
「ヒィィィ!!」
尋常じゃない殺気を放つアカネに、誰もが動けないでいた時、険しい顔をしたシャーラが両手を広げて男を背に庇う。
「シャーラ。貴様、殺されたいのか?」
「うっ、それは……殺されたくはないですニャ」
「だったら、今すぐそこをどけ」
「嫌ですニャ!」
静かに刃を向けられ、小さく肩を震わせたシャーラだが、冷たい目を向けるアカネから目を逸らさなかった。
「この人間は害するものは何も持っておりません! それはさっき、シオン先輩が魔法で確認してもらったですニャ!」
「だが、我々に認知されていない武器を持っていたとしたら……」
「だったら、どうしてこの人間は怯えているのですニャ!」
「それは、我々を油断させようと……」
「命の危機が迫っているのに、どうして我々を油断させないといけないのですか! それに、仮に油断を誘っているとして、一体何が目的なのですか?」
「それはもちろん、我が国を害するためにまずは相談所を襲撃しようと」
「え、ここ? 相談所だったのですか!?」
背後にいた男が驚いたように素っ頓狂な声を上げた時、何かに気づいたシオンがシャーラの隣に立った。
「所長、一先ずは話を聞こうではありませんか。見る限り、男はここが一体どこなのか知らないでしょうし」
「だが、万が一にでも攻撃してきたら……」
「では、彼のボディチェックをしたうえで、拘束魔法をかけましょう。あと、魔封じの魔道具をつけさせますので」
「副所長!」
リリアンの提案に、矛を収めたアカネは男を睨みつけると、シャーラとシオンに指示を出した。
「では、取り調べはシャーラとシオンに任せる。私はこのことを国王陛下に話してくる」
「ですが、それは取り調べが終わった後でも……」
リリアンの制止を聞かず、アカネはさっさと転移魔法で王族が住まう城に向かった。
「全く、アカネったら……それじゃあ、シャーラとシオン。ごめんだけど、任せていいかしら? 私は、陛下を交えた大事な会議の準備をしないといけないから」
「「はい!!」」
穏やかな笑みのリリアンがその場を後にすると、シャーラがシオンに声をかけた。
「シオン先輩、助けていただきありがとうございます」
「いや、礼を言うのはこちらの方だ。所長が1階に降りてきた瞬間、シャーラが私に『鑑定魔法を使って武器が無いか調べてくれ』って言ってくれなかったら、私もあの場に立つことは出来なかった」
遠くからアカネが来るのが見えていたシャーラは、シオンに耳打ちで鑑定魔法を使って調べるように頼んでいたのだ。
そして、武器を持っていないと分かると否や、シャーラは男を助けるためにアカネの前に立ちはだかったのだった。
シオンに褒められたお手柄シャーラは、照れくさそうに笑うと、未だに怯えている男に声をかけた。
「怖い思いをさせてしまいすみませんニャ」
「あ、あぁ……ところであなた方は誰なのですか? それにここはどこなのですか?」
明らかに困惑している男に、シオンが声をかける。
「それに答える前に、あなたを拘束させていただきます」
「こ、拘束!? 私、何もしていませんよ!」
再び怯えだした男に、シャーラが慌てて言い募る。
「だ、大丈夫ですニャ! あなたに危害を加えることは一切しませんですからニャ!」
「は、はぁ……」
シャーラの言葉に気の抜けた男は、シオンの拘束魔法と他の相談員が持ってきた魔封じの魔法で身柄を抑えられ、厳しいボディチェックを受けると、そのまま相談室に連れて行かれた。
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