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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この感情について一言で表しなさい

 中学生の頃、俺には親しい友人がいた。

 ソイツとは小学生の頃からの友達で何かがきっかけで友達になった。

 性格は明るく、優しく、そして顔立ちが整っていた。

 ......まぁ、そりゃあ女の子からは人気が出ていた。

 中学に上がり、同じ部活に入ってからもオフの日には他の友達と一緒に遊んだりすることが多かった。

 彼と話をしているだけで日常生活にあった嫌な出来事が全部消えて無くなるぐらい、俺にとって大事な友達になっていた。

 周りの友達がからかうぐらいには。


 高校に入学してからは別の学校になってしまったが、休みの日が合えば一緒に遊んでいた。

 夏休みは一緒に勉強をしたり、ゲーセンで二人で門限ギリギリまで遊んだりと幸せな日々を送っていたが......現実は甘くなかった。

 もう何も思い出せないが俺は些細なことで喧嘩をしてしまい、疎遠になってしまった。

 仲直りをしようと、連絡を取り合おうとしても向こうから会話を拒否された。



 あれ以来、俺は斉藤と疎遠になってからと言うものの、魂が抜けた抜け殻のように毎日をすごしていた。

 何をやっても上手くいかず、部活もレギュラーからベンチメンバーへと落とされた。

 物事の上手くいかなさを解消するために色々な女の子と付き合ってみたけれど、斉藤との絆を埋めてくれる子は誰も現れなかった。

 そりゃあそうだろう、俺は心のどこかで斉藤と比べてしまっていたのだから。


 ......放課後、俺は何を考えていたのか、校内に張り出されているポスターを見て、保健室へと足を運んだ。

 自分のこのモヤモヤした気持ちを誰かにわかってもらいたい、理解してもらいたい、そんな俺にピッタリの人材がこの学校にはいた。

 俺は保健室にいた周防彩季という女性に自分が抱えていた悩みを打ち明けてみることにした。

 どんな回答が来るかは分からない、でも誰かに知ってもらいたい。

 そんな不安を理解したのか、周防先生は俺の話を真摯に聞いてくれた。


「高野くんは斉藤くんといてどんな気持ちだった?」


「それは......楽しかったですよ。自分の嫌だったことが斉藤と会うだけで安らぐぐらいですから。でもアイツが他の人と話をしているとこを見るとイライラして......」



 周防先生は俺の悩みがごく当たり前かのように俺に適した解答を落ち着いた表情で話をした。



「その感情はね、好きというものなんだよ」



「俺が......斉藤を好き? 男なのに?」


「高野くんの場合はずっと行動を共にして、お互いの嫌なとこや好きなとこを共有したから好きになっていたんじゃないかな? 人として」



 思春期に入ると、気づかない内に魅力的な同性を好きになる傾向があると先生は答えた。

 確かに言われてみれば俺は斉藤と一緒にいると、機嫌が良かったような......



「先生のおかげで......気持ちが晴れました」


「そりゃあ、良かった。少しは役に立ってたようで。でもこれだけは忘れないでよ?」


 先生はパズルの欠けたピースを埋める一言を教えてくれたあと、笑顔で俺を送り出してくれた。



「いつかどこかで会えるといいな」



 触れてしまえば壊れてしまいそうなこの想いを知っているのは今の俺だけで充分だ。

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