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第41話 新種

「見たことない妖霊機(ファントム)。照合できません」


「エルの言う通り、妖霊機(ファントム)の反応を示してるけど何か不明」



 メタスターシスは大襲来発生後の新種で転移種だ。この時代はまだ出現してないはずの妖霊機(ファントム)だ。照合してもデータがあるわけがない。



 あれは背中にある大きな輪を使って、妖霊機(ファントム)たちの支配領域から直接跳躍できる転移ゲートを作り出す厄介な敵。



 転移ゲートは大型の妖霊機(ファントム)や大量の魔物を転移させらないけど、小型や中型の妖霊機(ファントム)や魔物を送り込めるので、安全とされた後方地域への奇襲戦術の要としてメタスターシスが使われることが多かった。



 ただ、ナイトウォーカーたちとは違い、隠蔽偽装の能力は持っていないため、発見はしやすい。見つけたら、即座に破壊するのがセオリーだった。



「エル、あれは敵を送り込んでくる可能性がある気がする」


「え? どういうことですか?」


「そういう嫌な予感がするだけだ。シア、学校に通報を頼む。緊急度は最大でだ」


「はいはい、送った。王都から即応の近衛機士到着までのカウントを追加したわ」



 だいたい10分か……。それだけの間、放置したらゲート設置されて転移される。あいつ単体なら戦闘力は低いし、やれないこともないが――。ザガルバンドのエレメントライフルじゃ、あいつはぶち抜けない。せめて、近接武器があれば――。



 戦闘するべきか、迷っている俺の目の前に剣が突き立った。同時に新たな通信モニター枠がポップアップした。



「必要でしょ? 使って。誰が先に未確認のアレを落とすか競争。エル先輩も含めてね」



 通信の主は、ソラだった。



「ソラさん!? 実戦ですよ!」


「分かってます。でも、初陣が早くなっただけ。そうでしょ、エル先輩」


「そうですが……」


「礼は言わないでおく」


「期待してないから大丈夫」



 俺は目の前の剣を手にすると、対メタスターシス用にエレメントライフルの調整を急いで指示する。



「シア、エレメントライフルの設定変更。威力と射程減らして、リロード速度上げてくれ」


「少し時間ちょうだい」


「任せる。終わったら教えてくれ」



 シアに調整を任せると背中の輪を広げ始めたメタスターシスに向かって駆け出した。



 後続にはソラとアリエス、最後にエルが続いている。敵に向かって進む中、警告音が鳴り響く。



「敵から発せられた誘導光を感知! 照射されてる!」


「攻撃がくる。誘導された弾体がくるぞ!」


「は? 誘導弾? 嘘」


「ソラ様、私が前に」


「アリエス、その必要はない。避ければいいだけでしょ」



 背中の輪を広げつつあるメタスターシスから、唯一の自衛武器として搭載されている追尾型の誘導弾が一斉に射出された。誘導光から外れようと左右に大きく蛇行しながら機体を走らせるが、警告は鳴りやまない。



「来るぞ! シア、エレメントライフルの調整は?」


「えっと、終わった!」



 調整を終えたエレメントライフルを構えると、こちらに迫る誘導弾に向かってビームを放つ。



 1、2、3、4、5! 



 連続して放ったビームは、俺に迫っていた誘導弾を次々に撃ち落とした。



 再調整で威力と射程を最低にまで押さえ込み、オーバーヒートまで5発連続で撃てるようになっていた。



 ザガルバンドのエレメントライフル程度じゃ、最大級に威力を上げてもメタスターシスの機体に傷すら付けられないため、敵の唯一の攻撃である誘導弾を封じるくらいしかできない。



「ルシェ、また来るよ。残り7」


「リロード終わるまで、回避するさ」


「ルシェ君、シア様、援護します!」



 別方向から俺を狙っていた誘導弾を、エルが上手く撃ち抜いて破壊してくれた。戦闘参加を渋っていたわりに周囲の状況はしっかりと見えているようだ。



「援護、感謝する」


「まだ、終わってない。残り4」


「問題ない。リロード完了だ」



 時間差で来た誘導弾を再びエレメントライフルで撃ち落としていく。



 メタスターシスが放った誘導弾は、俺だけを狙ってるみたいだが……。精霊王位と契約しているソラやエルがいる中で、俺が一番の脅威判定をされたのか? それとも俺だけを狙ってるのか?



 まぁ、今はそんなことどうでもいい。誘導弾の迎撃をしたことで、ソラたちに後れを取ったし、転移ゲートがもう開いてしまう。



「ソラ先輩、アリエス先輩、もうじき輪が完成します。敵が跳んで来る気が――」



 メタスターシスの背負った輪が広がりきり、輪の内側は漆黒の闇に変化すると、黒い稲妻が周囲に何度も飛び散った。



「君は何を言って――」


「ソラ様! 敵がっ――」



 輪の内側に出来た漆黒の闇の中から、新たな妖霊機(ファントム)が魔物を引き連れて姿を現してきた。


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