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始まり


はぁ、はぁ、


───呼吸までもが震えてる。


目の前には眩しく光る小さなライトが3つ。

スマホの画面越しに私の事を見ている彼らの顔は、暗闇の中で笑っていた。


何やら話しているようだが会話の内容は頭に入ってこない。

私に聞こえるのは自分の荒い息づかいと激しい心臓の鼓動だけ。

心音と同調する様に眼球も揺れ、焦点が定まらない。

流れた汗で目の前が霞み、涙へと変わっていく。


砂埃だらけの手で握りしめたガラス片を彼らに向けるが、戦う勇気なんて私にはない。

足もガクガクしてしまい、紐がほどけた靴で後退りするのがやっとの状態だった。


息をする度に錆びた鉄の匂いが肺を満たしていく。


もう押さえ付けられるのも触られるのも嫌だ、ただこの状況から早く脱却したいという思いが自身を焦らしていく。


追い詰められた私がガラスの向きを変えて突き立てたのは、自分だった。





こうするしかなかった。


この状況を変えるために何をすべきか他に思い付かなかった。


でもこれが恐怖と絶望の日々の始まりだなんてこの時は思いもしていなかった────

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