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彼の名は……【番外編SS】(☆☆☆)

『外敵女騎士のわたしが竜王様の寵妃に!? 降伏から始まる溺愛生活』番外編ショートストーリー


時間軸は本編最終話前。

単話で読めます。本編よりコメディ感、溺愛度強め。

タイトルは聞き覚えのあるものを拝借してつけています。

「ばかやろ! 帰ってくんのがおせぇぞ!」

 

 ヘスティア王国から帰還した時、出迎えたリグの第一声がそれだった。

 ドラクの地を発ってからひと月近くが経過していた。


 純度を高めた冥界の石とは言え、エネルギーが無尽蔵に得られるわけではなく、わたしが持参していた分量ではやっとという状態。

 

「てめぇ、ベルの様子がヤバいじゃねぇか!? なにやってんだ!?」

 

 ベルファレスは意識が朦朧としていて喋ることもままならない。


 精魂尽きた様子のベルファレスを見て、リグは再びわたしを怒鳴った。

 普段はそっけないくせに、実はベルファレスのことを家族のように大切に想うリグの気持ちに胸が熱くなる。

 

 ベルファレスはそれから自室のベッドで眠り続けた。


 眠る彼の傍に寄り添って3日目のこと。 

 微かに目蓋が開き、わたしと目が合った。

 

「レ……」

「ベルファレスッ!!」

 

 わたしの名を呼ぶより早く、彼の名を呼び、抱きつく。

 

「レラ……、無事に……帰還したようだな」

「ああ。無事だ。目覚めて安心した」

 

 もうこのまま目が覚めなかったらどうしようと不安だった。わたしの視界が涙で霞む。

 

 彼はわたしの目尻に溜まった涙を指ですくい、「大丈夫だ。泣くな」と言い、微笑んだ。

 

 彼の手のひらを掴み、わたしの頬に当てる。

 久しぶりに触れあう暖かい指の感触に心の底から安心していると、彼は言い出しにくそうにわたしに告げた。

 

「……本当の名前で呼んで欲しかった」

「え?? 本当の名前って……?」

 

 わたしの頭に疑問符が浮かんだ。


 彼の本当の名はベルファレスではなかろうか。

 話の整理がつかなくて混乱してくる。

 

「……ふっ。ちゃんと教えてなかったな」

 

 彼は苦笑しながら、説明を始めた。

 

「……首長になる時に真名に音を足して、首長としての名前を命名するんだ。それが“ベルファレス”。俺の真名は“ベル”だ」

 

 ……そういうことか!

 わたしは“ベルファレス”が真の名前で、“ベル”は愛称だと思い込んでいた。

 

「二人きりの時こそ、ベルと呼んで欲しい」

 

 そう付け足した言葉に、彼の部屋で初めて顔を会わせた時、『ベルと呼んでくれ』と言っていたことを思い出した。


 それは本名で呼んでくれと、願いがこもったものだったのだと、今悟る。

 

 愛しい人の名前を勘違いし、本人の前で呼び間違える大失態!!

 穴があったら入りたいどころか、棺桶に持っていきたいくらいの内容だ。

 

 永遠の勘違いにならなくてよかったが、しばらくは申し訳なくてベルファレス……じゃなかった。ベルの顔を見れそうにない。

 

「失礼なことをした! 申し訳ない!」

 

 頭を下げて詫びると、ベルは瞳を閉じてこう言った。

 

「……もう一度やり直しだ。お前からのひと言と、詫びを態度で示して欲しい」

 

 心なしか唇を尖らせている。

 

 なに? 口づけで詫びろと?

 しかも、言葉を添えて……?

 

 自分から口づけなんて、とても勇気がいる。

 どうしたものかと慌てたが、わたしの失態が覚悟を決めさせた。

 

 もう、やるしかない!

 

「ベル……、起きて……」

 

 添える言葉を考えあぐねた結果、甲斐甲斐しく夫を起こす妻の言葉しか浮かばなかった。

 妙に芝居がかってしまい、吹き出すのを必死に堪えた。


 口元をふるふるさせながらベルに覆い被さろうとすると、頭を掴まれ先に唇を奪われた。


 我慢できないとばかりに、深く口づけられる。

  

 言おうとした言葉を全部封じられてしまい、頭がぼぅっとなって、体の力が抜けていく。

 

「まだ、起きない。お前もこい……」

 

 そのままベッドに引きずりこまれ、再び唇を重ねた。

 

 しばらく離してはくれず、ベッドから出ることも許されなかった。


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