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過労系聖女ちゃん、男に転生す~次こそ自由な生き方を~  作者: 雪野マサロン
第五章 死者は野望を果たす 
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過労系5 4

 ルカたちがテレビを見るとそこには紛れもなくクラウディアが立っていた。


「何でや!? 有り得へんやろあれは!!」


 叫ぶ孝介に全員がそうだと首を縦に振る。


 何せクラウディアの姿でかつ横に立つのはブリステット教の重鎮と思わしき煌びやかな法衣をまとった女性。


 あんな蔵人が嫌う相手が横にいて嫌悪を示すどころか虚空を見るような目で立っているのだから驚きを隠せない。


「あの目、正気じゃないナ」


 李はクスリを使った拷問の経験がある。あの時拷問した奴と似た虚な瞳から正気ではないと断定する。


「同じ宗教さんはご存知やないんかぁ?」

「生憎と私も今初めて知りましたー」


 浮かぶ困惑を隠しきれない二人が互いの目を見やるもテレビに映る事実は変わらない。


 何故あんなところに蔵人が?


 いるのは東京のスクランブル交差点。まるで見せつけるかのように立つクラウディアの周囲をブリステット教の集団が武装した上で囲っている。


 それだけにやじ馬たちが所狭しと現れてはクラウディアと横に立つ女性を遠慮なしに撮影する。


 そしてそれはSNSに上げられクラウディアへの救済を求める声が再熱する。


『皆さん、困惑されるのも無理はないでしょう』


 テレビから聞こえる堂々とした女性の声。そしてその立ち振る舞いと姿からエリスが口を開く。


「教皇様は何を考えてらっしゃるのでしょうかー?」

「知っとるんか?」

「一応あの人がトップですのでー」

「かなり若いナ」


 それこそクラウディアと並べば姉妹と見えなくもない。


 金髪で美容に磨きを掛けたスタイル抜群の麗しさと近寄りがたい印象を受ける美女だ。


「若作りではありますけどねー。でも四十代後半らしいのでトップであるのを考えれば若いと言えば若いですねー」

「あれで四十後半なんか…」


 そのトップが蔵人ともに姿を現した。どう考えても良い方向に話が進むとは思わなかった。そしてその予想は当たる。


『我々ブリステット教はクラウディア様と手を結び、皆様に救いの手を差し伸べる事を宣言します』


 誰も言葉が出ない。


 蔵人がそうした救いを拒絶していたのは誰もが知っている。


 それだけに救いの手、つまり死者の蘇生を他人の為に行使すると言ってのけた教皇に驚愕しかない。


 SNSでは狂喜乱舞、阿鼻叫喚の声が溢れ返る。



 ・私のお父さんを生き返らせてくれるの!?

 ・おいおいどうやってあのクラウディアを捕まえたんだ?

 ・クソッ、先に持ってかれた!!

 ・娘を生き返らせてくれ!!



 クラウディアを手に入れようと画策していた者、純粋に親しい者の蘇生を願う者、このお祭りに乗じて騒ぐ第三者と立場は違えど皆がクラウディアに注目を集まる。


 そんな白熱した状況化を利用するのがあの教皇だ。


『皆が皆、蘇生を望むのは分かります。しかしクラウディア様でも出来る事と出来ない事があるのです。

 まず蘇生にも制限があります。亡くなってから何もせず長く放置していた者は魂が完全に抜け、更に火葬まで済ませてしまうと魂は浄化されてしまいます。

 そうした者たちは蘇生が困難となります。そうした方たちは諦めて下さい』



 ・そ、そんな…

 ・クラウディアが蘇生に協力的なら生き返らせたのにもう無理なのかよ!!

 ・まだいける。私の父はまだいけるよね?

 ・この人殺し!!息子を返してよ!!



 蘇生の条件に困惑の声は益々広がる。


 何せクラウディアが逃げ回っていた事で生き返れた者が生き返らなかった。それはクラウディアに対する憎しみに変わる。


 しかし憎しみの声が広がる中、唯一蔵人から魔法の手解きを受けていたルカが不可思議な声を上げる。


「教皇は何であないな嘘言うんやろうなぁ?」

「嘘? 姉ちん嘘ってなんや?」


 蔵人の使う【リザレクション】についてよく知らない孝介は疑問を投げかける。


「ああ愚弟は知らへんか。蔵人はんの使う【リザレクション】は確かにどこまで死んだもん生き返らせられるもんちゃう。けどな? 蔵人はんなら()()()()()()で生き返らせれへんわけやないんよ」

「マジか」


 【リザレクション】は残留する魂から蘇生を行う。それだけに肉体の欠損有無より魂の有無に関係する。


 そこに欠損した肉体のレベルで消費する魔力量が変わるのもあって【コフィン】による棺桶によって肉体と魂の保存で蘇生を補助を促す。


 前世で一般的な【リザレクション】であれば魂があったとしても欠損の酷い肉体であれば蘇生も失敗する事も多々あるが【リザレクション】を日常でこなした蔵人であれば火葬した肉体だろうと蘇生は出来る。


「もっともその際に消費する魔力は莫大やねぇ。殆どない肉体を蘇生させるんやから蔵人はんかて甚大な労力が掛かるなぁ」


 それでも蔵人の膨大な魔力と【リザレクション】の修練度から少なくとも二十人は蘇生が出来る。伊達に戦死した者たちを生き返らせていたわけではなかった。


「魂の抜けはった肉体やったら蔵人はんでも無理やろうけど逆に言えば魂さえあれば何とかなんねん。それをあの女は出来へんと言いよる。不思議やわぁ」

「もしかしてヘイトコントロールでもしたいんですかねー?」

「あとは単純に何でも生き返らせれると思われんのを防いどるんちゃうか? 流石の蔵っちでも一年も二年も経った死体を生き返らせれると思えへんからな」

 

 話す内容はあくまでも予想でしかない。しかしその予想は外れていた。


 今の蔵人をブリステット教の教皇は知らない。それだけに自分基準でしか話をしておらず、その上で膨大な利益を得ようと画策した結果があれだ。


『しかしながらクラウディア様を持ってしても蘇生させられる数には限りがあります。その権利を我々はブリステット教へのお布施によって決める事としました。誰もが救われたいと願うのは当然でしょう。ならその権利は皆様によって決めるのが一番だと愚行いたしました』


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