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過労系聖女ちゃん、男に転生す~次こそ自由な生き方を~  作者: 雪野マサロン
第五章 死者は野望を果たす 
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過労系5 1

 蔵人(くらうど)は最近自分の周りがおかしくなっていると自覚し始めていた。


「お前ら少しは遠慮しろ」

「「「何が?」」」


 蔵人の家に入り浸るルカ、孝介、李、そしてエリスは我が物顔でリビングを占領していた。


 それこそ自宅にいるような気楽さで寛ぐ姿はどう見ても友人の枠を超えている気がしてならない。


「ルカは下着見えてるぞ」

「別にええんやない? パンツの中まで見合った仲やし問題あらへんよ」

「情緒がないんだよ」

「何度も抱いとるんやし気にせんでもええのになぁ」


 ルカは寝転がりながら漫画を読む。小さな身体に不釣り合いの揺れる巨乳とぶかぶかなシャツ一枚が非常に危うい姿を晒しているが男は身内の孝介を除けば蔵人しかいないのでルカは全く気にしていなかった。


 しかしそれを間近で聞かされる身内は微妙な顔をする。


「姉ちん蔵っちに抱かれたとか言わんでくれへん? 流石にキツイわ」


 チャラ男な見た目にしては女性関係で特に何もない孝介は李と柔軟体操をしながら目の前で聞かされる男と女の関係は中々厳しいものがあった。


「愚弟、人間は大体が食うか寝るか抱くかや」

「もっと生産的な要素入れるべきやろ」

「もう働く必要ないんよ。金ならたっぷりあるからなぁ」

「……お前太るゾ?」


 最近では何故か孝介に体術指導をする李は高身長でモデル体型なだけにルカとの対比は凄い。


「はぁ!? 見てみこのロリボディ! 胸が張って腰はしっかり細いやないかぁ!! 若干お腹に無いでも無いけどあくまで抱くんに心地ええレベル、……そうやろ蔵人はん?」


 そのロリボディを堪能している蔵人は否定し切れなかった。


 個人的な感想になるがガリガリで骨が浮くレベルとなると欲情より心配が勝る。それだけにルカの身体は丁度良い塩梅だった。


「まあ多少の運動はしとけ」


 が、それはそれとして食って二重の意味で寝るだけの排他的生活は流石にどうかと思う。


 あの事件以降配信頻度は減っても活動はしてるが、どっちがメインかと捉えると圧倒的に蔵人との性活が主となっているのは事実だ。


「モーモー、牛になってしまいますよー?」

「……抱かれるのも運動やもん」

「ますます牛だナ。それは経済動物と同じだロ」

「姉ちん、それはないで」


 生活習慣に割と顰蹙(ひんしゅく)を買うルカだが本人の名誉の為に言うならば魔法の練習()している。


 そもそもそうしなければまたあの臭い身体に逆戻りだ。何の為に蔵人が頑張ったのか分からなくなる。


 ルカもそうなるのは嫌なので魔法も生活の中には取り込んでいるが、他人から見れば食って寝て抱いての自堕落な生活をしているのには変わらない。


「うがあああっ!! なら牛にでもなったるわ!! 母乳でも出して蔵人はんに飲ませたる!!」

「やめろ。俺にそんな趣味はない」


 非難轟々にキレて突拍子もない発言をルカはぶちかますも蔵人の性癖にオギャりを求めるものはない。


「母乳って姉ちんマニアック過ぎるで」

「ちょっとないですねー」

「全部お前らが言わせたんやからな!!」


 うがー、とじたばた子供のように腕を動かして暴れる見た目は幼女。しかしこの中では李の次に年上の大人だ。


 そんな年上がお金は持っているとはいえ自堕落な生活を堪能していると、それはどうよとなるのが人間だ。


 魔力過剰蓄積症で長年苦しめられたが故に今更人間社会で貢献出来るようなものでもないと思わなくないが特に弟の孝介からすればせっかく身体治ったんやしもうちょい人間らしくせえへん? である。


「まあ牛の事は良いだロ。…孝介次は型を教えル。庭に行くゾ」

「うっす」


 そう言うと李と孝介はリビングから出て行く。


 あの集団毒殺事件から孝介も意識が変わったのかよく続くと感心する。


 幼い頃から武道を習っているなら分かるが孝介は完全な素人。それだけに基礎なんてものが無い。


 組み手が出来る程ではないだけにひたすら型をマスターさせられている。後は李から聞いた話だと朝晩走り込みをやらせて体力を上げてるそうな。


 孝介はどこに向かってるんだと思わなくないが本人が何かしら思ってやり続けるなら頑張れと言うしかない。


「まったくうるさくて可愛げのあらへん愚弟や」

「なら生活習慣改めろよ。魔法の修練も多くないだろ」


 魔法がなければ本当に食うか寝るか抱くかだ。配信業も週一やるかやらないか。それなら孝介たちに言われるのも無理はない。


「分かっとるんよ? けど長年人肌に触れられへんかったのがこうして触れ合えるようになったとなると抱かれたくなんねん」


 物心ついた時から一人で生きるしかなくなったルカは反動からか蔵人を求めるようになった。


 にしても蔵人自身多くないか、と言いたくなる半面やはり性欲が絶好調な十代では拒否する方が難しい。


「蔵人はんも嫌やないやろ?」

「否定はしない」


 だから求められれば答えてしまう。気が付けば魔法はあらゆる合間にやる暇つぶし作業に近くなっていった。


 それでも蔵人はルカの習得レベルに舌を巻いていた。これが全く魔法が使えませんとなると話も変わるが簡単な魔法なら既に片手間で使えるレベルになっている。


 詠唱もその内必要としなくなるだろうがそれにはまだ修練は足りていない。


 しかし蔵人はそれで良いと思っていた。魔法を過剰なまでに酷使して使うのは心情としても求めていなかった。


 何せ魔法は自分が使えるから。あくまでルカの肉体の不調が出ないように使う習慣を取り入れて魔力過多に陥らないようにするだけだ。


 だから片手間で十分。なのになんでこんなに魔法の習得が早いのか。時代が違えば天才と持て(はや)されていただろうと思わなくもないが本人が自堕落な生き方を望んでいるのなら尊重するのが蔵人だ。


 無理に働かされる苦痛は二度と味わいたくないだけにその信念は他人にも付随する。


「まあ程々に使っとけよ。反復練習したら詠唱もいらなくなるし」

「分かっとる。流石にあんな思いはゴメンやし」

「なら一緒にやりませんかー?修行中の身なのは私も同じですしー」

「せやな。それもええか」


 エリスに促され三人で魔法の練習に励む。もっとも蔵人は教師として。


 新たな魔法を模索しつつ二人に魔法を教えるのだった。


 このスローライフをいつまでも楽しみたいそう思う自分がいて少し驚きを感じるも嫌ではない。










―――蔵人は警察により逮捕された。

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