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過労系聖女ちゃん、男に転生す~次こそ自由な生き方を~  作者: 雪野マサロン
第三章 配信者は愛を欲す
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過労系3 12

 ルカは先の衝撃もあり二重の意味でショックを受けていた。


「まさか誠はんも襲いに来てたとはなぁ」


 信じたくなかった。誠がこうして来たのはあくまでも友人として自分に会いに来ただけで何か危害を加えに来たわけではないと。


 しかし現実は残酷だ。


「こっちは蔵っち殺しに来たみたいやけどな」

「ちゃんと刺さったしな。あんな魔道具があるとは思わなかったから油断した」


 証拠品となる短剣もあり蔵人が刺され破れた服もある。蔵人の返り血と思われるものも服に付着している。ここまで状況証拠があって否定するほどルカは子供ではない。


 当の本人は未だ目覚めず、子どもの様にスヤスヤと寝ている。引きずられた事による身体中の細かい砂汚れを気にしなければ。


 ある意味図太い誠に内心感心しつつ今後について考える。


「俺は恨みは無いが蘇生を知られてる可能性がある以上ここで始末しておきたいが」

「それは少し待ってくれへんか?」


 蔵人は誠に対し恨みは無い、寧ろ魔道具による危険性を教えてくれたと言う意味では感謝している。だからこのまま放置でも良いが、それは対応として正しいのか。


 出来るなら始末したい。それは単純に恨みではなく蘇生した所を見られた事によるリスク回避のため。


 あれをただ死ぬ前にポーションを使っての回復と誤解しているのなら百歩譲って生かしも良いが、万が一を考えると蔵人はこのまま安らかに死なせる方が都合が良かった。


「でも、どないしようかねぇ」

「どないも何も蔵っち殺そうとしたんや。ワイはダンジョンに放り込まれても仕方ないと思うで」


 感情面で何も感じていない蔵人に対し、孝介の方が寧ろ怒りを顕にしていた。


 姉の恩人である蔵人を殺した。それだけで孝介にとって百害あって一利なしとダンジョンで処分するのさえ厭わない。ただ心のどこかで殺さなければならないのかと問われると難しかった。


 何せ実質的被害を誠はもたらしていない。それこそ精々蔵人の服が破れた程度。だから殺さなければならないかと聞かれると待ったがかかってしまう。


 それに孝介は被害者ではない。それこそ車に轢かれた猫が可哀想と感じるような立場、どちらかと言えば傍観者。被害者は蔵人とルカで、加害者は誠。この図式の中に孝介はいない。


「まあワイが何を言っても意味ないでな。二人が決めてな」

「そうなるよな」

「なら誠はん起こして聞くんがええなぁ。感情抜きで裁定するなら蔵人はんにとって害があるかどうかやし」


 ルカは石を拾うと誠に向かって投げる。


「ほれ、とっとと起き」

「ほげっ!? 〜〜〜〜〜〜〜っ!??」


 しかし当たった場所が酷い。よりにもよって男のシンブルに当たってしまう。


「「躊躇(ちゅうちょ)ないんか」」

「いらんわ、そんないなもん」


 ルカの身体はまだ治っていない。それだけに近付けば臭いと理解しているので遠くから気付けするとなると自然と投擲で物をぶつけるしかなかった。


 ただ釈明をすると運動らしい運動をしてこなかったルカの辞書にコントロールの文字はない。偶々投げて当たったのがチ〇コだっただけ。


 しかしそれを気の毒とは思わない。何せルカにはそんなもの付いてないので痛みも分からないし、どの道蔵人を殺した男ならこれくらいやっても文句は言えないと割り切った。


「#*%$#%$%&#~~~~っ!!??」


 未だ股間を押さえて悶える誠を痛みが分かる二人が気の毒そうに見守るとようやくその痛みも治まったのか涙目で周囲を見る。


「~~~~~っ!? あ、ルカさん!!」


 ここで近くにいる蔵人たちではなくルカの名を呼ぶ辺り愛が凄い。


「おはよう誠はん。気分はどうや?」

「っ?! く、臭くない!! この距離でそんなに臭くないなんて…。そうか遂に僕は臭いを克服したんだ!! 僕はルカさんと結婚出来る!!」

「これ壊れとらんか?」

「孝介お前どっかぶつけて来たろ」

「……かなり引きずったんは否定出来ん」


 全身くまなく砂まみれな誠は頭まで念入りに砂埃を被っていた。引きずる際も足を持っていただけに頭部へのダメージもそこそこあった。


 しかし誠の能天気さは天然で自分勝手な性格は前からなので今更感は拭えない。


「まあええわ。誠はんウチは全部聞いたで? その上で聞かせてもらうわ。誠はんはなんでこんな事したんや?」

「それは……」


 まだ良心の呵責があるのか目を逸らして言いよどむ。


 しかし目を逸らした先にいた蔵人にピントが合い、誠の顔は歪んでいく。


「そいつが、そいつが僕のルカさんを奪ったから!!」


 そして自分こそが正しいと頭お花畑の誠は自身の主張を口にした。


「ルカさんと僕は結ばれる運命にあるのに横からそいつが現れたから。邪魔にな奴を排除するのは当たり前だろ! こんなにも僕はルカさんを想っているのに横入りなんて許せるはずないじゃないか!!」


 あまりな自己中心的発言に蔵人と孝介は愕然とする。


「……これ頭大丈夫か?」

「元からイかれとったんかい」


 想っているだけで結ばれるのなら苦労はしない。


 相応に誠は努力を重ねていたが世の中その程度でどうにかなる事の方が少ない。諦めなければ願いは叶うと言うが努力の方向性を間違えれば目の前の壁に打ちのめされて挫折する。


 ただ誠は壁そのものを間違えた。超えるべき壁が何かを見失い、誤った壁に狙いを定めそして負けた。


「はぁ、………なあ誠はん」


 そんな誠にルカは呆れなのか、それとも虚しさからか言い様のない表情で見つめる。


「この距離でもなんでウチが臭わんと思っとるん?」

「………え?」


 あの臭いが根性で耐えられるものではない。それは誠が一番分かっている。それこそ嗅覚がバカになっていない限り一秒も傍にいられないのは重々承知。


 だから自分が臭いを克服したと勘違いした。これで僕はルカさんと結婚出来ると喜んだが自身が何をしたのか頭から綺麗に抜け落ちていた。


「今さっき誠はんが殺そうとした蔵人はんがウチの身体を治してくれとるんやで? それお前さんが全部台無しにしようとしたんや」

「は!?」


 目を白黒させて驚く誠は蔵人とルカを交互に見る。


「そんな、有り得ない!? 彼はただの学生にしか見えないじゃないか! 大体どうやってルカさんを治すんだ!? 僕がどれだけ調べても何とかならなかったのに!!」


 騒ぐのも当然か。治せるような病ならとっくに治している。それこそ誠はルカと結婚するためにそうした面でも力を入れていた。金の力であらゆる医者に調べさせ、その上で治療する方法どころか病名さえも分からないと結論付けるような結果に終わったのだ。


 だからパッとでの学生に何とか出来るなら自分が何とかしていたと誠は豪語する。


「彼にルカさんをどうにか出来る筈がない!!」

「ならなんでウチはこの距離で臭わんのや?」

「そ、それは……」


 言いよどむ誠にルカは畳みかける。


「ウチはな諦めてたんや。臭いはどうにも出来ん。ならこの臭いに耐えられる人としかウチは一緒に生きられへんと。せやからウチは誠はんと一緒には居られんと諦めとった」

「……え? それって」


 彼らは噛み合わなかった。


「でも蔵人はんはウチの治し方を知とった。せやからウチはもう一度誠はんとやり直せるんやと、好きやと言えるんやないかと思ったんよ」

「ぼ、僕たち、相思相愛っ……」


 ただ只管(ひたすら)に嚙み合わなかった。


「まあウチの治療の過程で色々見られとるし蔵人はんに責任取ってもらおうかとも思ったんやけどな。暴漢に襲われて頭に浮かんだんは誠はん、お前さんやったんよ」

「おおっ…」


 もしかしたら違う未来もあったかもしれない。


「な、なら僕と…」

「けどな()()()()

「……………………………………え?」


 しかしそんな未来はもう用意されていない。


「ウチの恩人殺しに来よってからに。お前さんはウチの恋心を冷めさせたんや。そないに自分勝手で独りよがり、まあその辺りはウチも人の事言えへんけど、それでも殺しはアカンわ。人として終わっとる」

「あ、ああ…」


 誠は自ら終わらせた。ルカと二人で歩んでいただろう未来を自ら蔵人と一緒に殺してしまったのだ。


「踏み越えたらアカン一線を誠はんはあっさり踏み越えたんや。そらウチの心も冷めてまうわ」


 ルカはつくづく()が悪かった。もし蔵人が来た時に誠が来ていなければ、もし治療が終えてから来ていれば、もし襲いに来なければ…。そもそもこんな病に罹っていなければ違う未来があった筈だ。


 しかし全てが悪い方向に噛み合い運命が二人を切り離す。


「じょ、冗談だよね? 僕を好きだって…恋してるって……」


 誠は喜びから一転、絶望した顔で嘘だと呟く。


「好き【やった】やな。これを蛙化現象言うんやろうか? もう生理的に無理やわぁ。こんなつまらん男に惚れとった自分が恥ずかしい」


 それは紛れもない拒絶。上げて落とす鬼畜な所業に蔵人たちはドン引きしていた。


「鬼かよ…」

「姉ちんそらないで…」


 殺された蔵人であっても不憫な仕打ちに同じ男として流石に誠が可哀想だと思わさられる。


 実は両想いだったと告げてから生理的に無理とかガラスの心を砕いた上でタップダンスでもするような所業。ルカよ、お前に人の心はないんか?


「待って……、待ってよ! 僕が好きなんだろ?! 些細なすれ違いじゃないか! もう一度チャン「無理や。百億積まれてもこの気持ちは揺るがん」そんな……」


 ばっさりと切り捨てるルカに涙を流して絶望感を顕わにする誠はルカの顔が見れなかった。


 何せその誠を見る目は台所で見つけたGよりも酷い。生理的に無理が言葉だけでなく表情からも読み取れてしまい誠はその現実を受け入れられずにうつむいてしまう。


「それに誠はんは耐えれるん? ウチは既に蔵人はんに身体を余すとこなく見られとるやで? 治すためとはいえ、人には言えへんような姿いっぱい見られたんや。そんなウチでも好きやと言えるんか?」

「そ、それは……」

「どもっとる時点で誠はんに希望はないなぁ」

「うがぁ…」


 ユニコーンと呼ばれる処女信仰。誠も例に漏れずその側であり、不貞を良しとはしない古い考えの持ち主だ。


 それだけに蔵人にルカを汚されたと激怒し犯行に及んだわけだが、そんな姿にルカはどうしようもない嫌悪感を抱いてしまった。


「そもそもウチがエロ売りしとるんわ配信で見とるやろ? 耳舐めASMRに際どいコスプレまでしとるんやからなぁ。一応言うとくけどこの身体やから経験ないだけでエロは好きやで? 貞淑(ていしゅく)淑女(しゅくじょ)を求めとるんやったら他あたり」

「………」


 止めて、誠のライフはもうゼロよ。


 追い打ちに追い打ち重ねて傷に塩塗り泣きっ面に蜂で踏んだり蹴ったりフルボッコだドンみたいなルカの容赦ない言葉のナイフに誠は魂はここにはなかった。

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