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過労系聖女ちゃん、男に転生す~次こそ自由な生き方を~  作者: 雪野マサロン
第三章 配信者は愛を欲す
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過労系3 プロローグ

評価ありがとうございます。もうすぐストック切れますが読んで頂ける限り書いていきます。

 井出蔵人(いでくらうど)にとって色恋沙汰は理解の範疇を超えていた。


 何せ恋をするとは人の何かしらを好むところから始まる。


 まずは第一印象。細めの眉や切れ目とかそう言ったパーツ面もありつつ、その大きさや距離から造られる黄金比率がある。他にも小顔である、胸の大きさ、背の高さなど人の好みに大小はあれどその組み合わせによって出来る『美』によりその人の印象は上がる。


 当然そこには努力によって埋められる差もあり、運動による体重のコントロールや服装に化粧などの外的要因による『美』によって人の印象は変えられる。


 しかしそうして出来た『美』に蔵人は興味が無かった。


 大前提として蔵人の前世であるクラウディアは美少女だった。見慣れた自分もありナルシストではないが、生まれた基準はどうしても前世の自分。そうなると見た目には清潔不潔の差異は認識しても似たり寄ったりにしか見えてなかったりする。



 なら性格面ではどうなのか。


 生憎と蔵人自身他人と関わる性格ではない。どれほど良い子であろうが、素直な子だろうが努力を怠らなく正義感が強くて誰に対しても平等で分け隔てない聖人のような人間だろうと関わらなければ発展はない。ってか性格なんて偽れるから表面的要素に意味はない。


 たとえ教室内でグループ活動があって一時的に関わったとしても人の内面の薄汚さは前世で学習済みである。


 周囲には良い顔ばかりしてクラウディアの手柄を根こそぎ奪い取り、最後には王子と結婚した悪女だっていると理解している以上自身に『利』を感じない者に惹かれる要素はない。


 結論として蔵人は他人に関心が無く、生物的な欲求はあれど恋や愛を理解出来るほど人間不信を止めていなかった。


「お前さえいなければ……」


 だから理解が出来ない。創作物でも現実でも『恋に狂う』人間の心理が。


 触れ合うのが無理なら諦めてしまえばいいものを。他にも人はいるんだから諦めてしまえばいいものを。


 たった一人に執着して身を崩す。そんな目の前の人間の気持ちは蔵人が前世を含めた上でも理解するには程遠かった。


「ルカさんは僕のものだっ!!」


 だから胸に突き刺さるナイフにも理解が示せなかった。


「は、はは……、これで僕の、僕のルカさんだ……ハハハハハハハハッ!!!」


 倒れた身体が血で濡れる。


 意識が飛ぶ感覚に襲われる中であっても蔵人には目の前の優男の気持ちが1mmも理解が出来なかった。

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