表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労系聖女ちゃん、男に転生す~次こそ自由な生き方を~  作者: 雪野マサロン
第二章 アイドルは冒険す
25/61

過労系2 エピローグ

 蔵人(くらうど)のやった事はまた世界に知れ渡った。


 ダンジョンの外を出ると講師をしていた他の冒険者たちが武器を持って警戒していた。後は野次馬根性の優れた危険を(かえり)みないバカな生徒。そしてそのバカな生徒がご丁寧にSNSで拡散してしまう。


 そいつはスタンピードが起きたにも関わらず危険性を無視したふざけた文面で投稿したのもあり炎上したが、それ以上にクラウディアが現れた事で異常な賑わいを見せた。



 ・なんであんな低級ダンジョンにいたんだ!?

 ・クラウディアはスタンピードを予知出来るのか?!

 ・やっぱりストロベリータウンはクラウディア様と繋がりがあるんじゃないか?

 ・そんなダンジョンに行くよりも蘇生してくれよ!!



 ダンジョンの異常を感知する能力がクラウディアにはあるんじゃないかとする新たな考察。クラウディアとストロベリータウンはやっぱり繋がってるんじゃないかとする考察。そして毎度ながら蘇生を求める声で白熱した。


 これには蔵人も辟易しており、ただ巻き込まれただけだと声を大にして言いたかったが正体をバラさずに発信出来る媒体もないので放置となっている。


 一番の被害者であるストロベリータウンの三人もまた炎上してしまったが生き返った当初程ではない。何せ今回はスタンピードに巻き込まれた側。精々またお前らかとする驚きや呆れの声が多かった。



「取り敢えず誰にも言わなかった事だけは褒めようか」



 ストロベリータウンの三人は今回の件で少し活動の方向性が変わった。


 前のように安全マージンを過剰に取る方向ではなく、少し冒険者としてのステージを上げたレベルアップを目的としたアイドル性を下げて冒険者としての活動を主軸とした方向へ舵を切った。


 それがどんな影響を与えるか分からないが、蔵人としてはまあ頑張れと言うしかない。なんせただの偶然から関わっていただけに興味はそこまでなかった。


 ただクラウディアとしてでなく蔵人としてだが連絡先は貰った、と言うか押し付けられた。


『スタッフはいつでも募集。待ってるから』


 詩音の根気は見習わざる得ない。ああした者が成功を掴んでいくのかと感心させられる。



「さてお前に選択肢をやろう」



 それよりも問題はこちらだ。何せ蔵人は孝介に正体をバラシてしまった。


 緊急時だったとしてももっと上手いやり方があっただろう。素知らぬ顔で隠れて魔法を行使しながら逃げて他の冒険者が現れるまでサポートするか、もしくは補助魔法でストロベリータウンの三人にギリギリのラインまで戦わせるとか、魔法は使えど自分じゃありませんとした態度で出来なくはなかった。



「鮮やかな青い海か」



 しかし蔵人にとって自己犠牲によるスタンピードの防衛は一種のトラウマであっただけに三人が手足の一つも失っていただろう行為は許容するのが難しかった。


 実際ゴブリンに襲われた者は逃げられないように先に手足の腱を切られるケースが多い。そうなればポーションのような魔法薬はあっても後遺症は残る。何より心の傷は深く残るだろう。


 そうなれば今度こそ冒険者として引退することになる。ある意味二度目の死を味わうのだ。今度は徹底的に凌辱の限りを尽くされるのだからそれこそ死を選んだとして不思議ではない。


 だから蔵人は正しい。これも一種の自己犠牲と言えなくはないが勝算があるだけにストロベリータウンの三人に比べれば理性的でリスクヘッジはされている。


 もしも犠牲と言うものがあるとすればそれは蔵人ではなく――



「生い茂った緑の山か。さあ選べ」

「完全に殺して沈めるか埋めるか気やん。勘弁してや!!」


 

 ――絶賛強制土下座中の孝介になるか。


 誰に聞かれてもマズいと蔵人の家で話合いと言う名の尋問と拷問が行われていた。


「別に沈めたりも埋めたりもしないが? 単に海か山のダンジョンに捨てるだけだ」

「そっちの方が酷いで。もっと人道的にいこうや」

「は? 信用も信頼もないだろ?」

「そうやない。ワイらに必要なんは取引やろ? ワイは誰にも言わん黙っとる。蔵っちはある事をしてもらう。それで手打ちにしようや」


 平和的交渉。日本人らしく相手を重んじて平身低頭して蔵人に頼みをする。


「あ”? ダンジョンに捨てたら終わりだろ」


 しかしそこは元異世界人。培った価値観は日本人らしさとはかけ離れていた。


「黙らすなら永久に黙らした方が合理的だと分かった上で言ってるんだよな?」

「相変わらず鬼か!? 大体蔵っちが言うたんやんけ!! 帰ったら交渉するんちゃうんか!?」

「だから海か山か選ばしてるじゃん」

「最初から殺る気満々やったとか泣くで」

「まあ冗談だ。この状況に面白がってるだけだがな」


 つまり遊びである。もっともクラウディアの件で今後も脅し続けるつもりなら本気で山か海に捨てる気なので孝介も油断出来ないのだが。


「で、そのある事ってなんだ? 内容によっては遠慮するぞ」


 遊びは終わりと本題に入る蔵人に孝介は顔を上げる。


「正直解決出来なくてもええんやけどな? 一縷(いちる)の望みってやつや」

「一縷の望み、ね」


 死者さえ蘇らせる蔵人に対しても()()()()()()と言い切る何か。果たして孝介は一体何を望むのか。その何かに蔵人は不覚にも惹かれてしまう。


「蔵っちには姉ちんを助けて欲しいんや」


 それは手足がもげているのか。それとも意識不明の重体なのか。それとも余命僅かな病人なのか。だが、その程度であれば蘇生魔法が使える蔵人が一縷の望みにはならない。そんなレベルであれば瞬く間に回復させられる。なら一体何が孝介の姉を蝕んでいるのか。


「死に掛けか?」

「ちゃうで」


 取り敢えずと投げた解答を孝介はあっさり否定する。


「……‥いんや」

「はい?」


 そして僅かに言いよどみながら孝介は言う。


「……物凄ぉお~~~~~~~~く臭いんや」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」


 

丁度この話で10万字超えました。思いの外書いてた自分がいてびっくりですわ。

ここまで見捨てずに読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ