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過労系聖女ちゃん、男に転生す~次こそ自由な生き方を~  作者: 雪野マサロン
第一章 聖女?は転生す
13/61

過労系 エピローグ

 世間は聖女擁護派と過激派に分かれた。


 それだけあの配信が強烈で、裏表のない蔵人の本音に世間の注目を集めた。



【聖女働けスレ】

 547:名無しの一般人

 許されない所業だわ。あんな人だとは思わなかった


 548:名無しの一般人

 お前にしか蘇生出来ないんだから文句言わずにやれよ


 549:名無しの一般人

 ふざけすぎでしょ! もっと自分の立ち位置を考えて欲しいわ!!


 550:名無しの一般人

 マジでクソ。ニートと同レベルでクソだわ。毎日無駄に生きてるだけやし

  


 奇跡は共有すべきだとする過激派は蔵人の行いを悪だと断じ、世界の為に働くべきだと掲示板やSNSなどで罵倒が繰り返されている。当然中には完全に自分の事しか考えていないコメントもあり、誹謗中傷が蔓延(はびこ)っている。


 しかしその逆もあり、蔵人を責めたりしない意見。むしろその姿勢に共感する者たちが強い反論をしていた。



 551:名無しの一般人

 >>548

 ならお前も限界まで働いてみろよ。二度とそんな口聞けないわ


 552:名無しの一般人

 >>550

 働くのがどれだけ苦痛か分からんやつが言う資格ないわ


 553:名無しの一般人

 クラウディア様はもっと自分に優しくあるべき



 こうしてネットでバチバチと火花が散り合う中、当の本人はと言うと。


「宿題見せてくれ」

「なんでやねん」


 宿題のやり忘れに気付いて焦っていた。


 昨日の断面でやりたい事がやれて満足してしまった蔵人は学校の宿題があるのをすっかり忘れて就寝してしまっていた。それに気付いたのは学校に来て椅子に座った時。やってしまったとなった矢先に孝介が来たので即行で頼んだわけである。


「しっかし珍しいやん。蔵っちが忘れるなんて」

「厄介ごと処理してたら記憶から飛んだんだよ」

「さよけ」

「で、見せてくれ」

「嫌やし」

「おいこら」

「見せるメリットないやん」

「貸し一で」

「ん~、もう一声」


 完全に足元を見ているだけに嬉々として報酬を吊り上げてくる孝介に若干苛立ちを覚えながら弱みを見せた自分が悪いと報酬を追加する。


「分かった。昼飯奢る」

「ならええで」


 報酬を追加すると孝介はあっさりノートを渡す。


 貸し一と昼飯分の価値が果たしてこのノートにあるのか。しかし時間も無いのでこのノートをさっさと写すしかない。蔵人はさっそく自身のノートに孝介のノートの答えを書き写していく。


「弱み見せるなんてらしくないで?」

「その弱みを突いてくる奴の言うセリフじゃないんだよな」

「そら突ける時に突かんと勿体ないやん」

「ちっ」


 逆の立場なら嬉々として弱みを突いてるだけに何も言えない蔵人は舌打ちしつつノートを黙々と写していく。


「そういや蔵っち聖女ちゃん見た?」

「………見てないが?」


 実際自分自身なので見るのは不可能。そもそも昨日が原因で宿題をやり忘れたぐらいなので蔵人としては微妙な気持ちであった。


「そうなん? あれは凄かったで。聖女ちゃんの独壇場って感じやったし」


 確かに好き放題やっていたなと思う反面、答えるべき事は答えたし蘇生の方法はちゃんと伝わっただろう。出来るかどうかは別として。


 必要な魔力量が高過ぎて魔石頼りにしないと不可能な蘇生魔法を希望の一つとして金持ちたちが実施するだろう。そして実感する筈だ。この魔法は蔵人だからこそ出来る魔法だと。


 現実問題として魔力量もそうであるが一番はその膨大な魔力量をコントロールする技量だ。それが無ければ集めた魔力が霧散してしまうだけに、この世界の魔法に適正がある者たちでも数十人でコントロールして高価な魔道具が複数あってようやく使えるレベルになる。


 このコントロールを魔道具頼りにしてしまえば膨大な魔力に魔道具が耐えられず壊れてしまう上にそれこそ蘇生したはいいもののゾンビのような出で立ちになり直ぐに死んでしまう。


 だから必死にコントロールする術を模索して今もこの世界のどこかで魔法職が悲鳴を上げているのだろう。そして実感するのだ。蔵人は化物だと。


「ふーん。まあ関係ないし」

「達観しとるなー。でもオモロかったで? 阿鼻叫喚で世界のトレンドにもなっとるし、あのアイドルの配信が切り抜きでバンバン上がっとるわ」


 蔵人は知らなかった。あの配信を二百万を超える人が見ていたの事実を。見る者が多ければその分伝わるか、くらいにしか考えていない蔵人に誰がどれだけ見たとか興味がない。


 それに蘇生魔法は教えた気でいる。もう関わるなとも伝えているし大丈夫だろうと極めて雑な考えを持っていたりする。しかし蘇生魔法の難しさからより蔵人を捜す動きが活発化するのを蔵人は知る由もなかった。


「そのアイドルたちはもう被害に巻き込まれてないのか?」

「ん? まあ完全にヘイトも聖女ちゃんに行っとるから一部を除いて騒いどらんで」

「そうか」


 あれから確かに理解を示さなかった者たちが何度も事務所に突撃したりもしているが、配信でも公言している通り連絡先を一切教えていないのでお帰り頂く形となる。それでも諦めない人が警察の世話になっているだけで公式でも『クラウディア様の連絡先は一切存じ上げませんので何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします』と発表している。


 まだ月日が経っていないので沈静化はまだまだ先だが、本人が配信でも明言しているだけに事務所との関係性はないのでいつまでも聖女を出せと騒ぎはしないだろう。


 肝心の聖女が海の向こうに飛んでいったのも大きい。


 元々が銀髪でどう見ても日本人ではなかっただけに別の国へ行ったと騒がれ始めている。見た目からロシア人の可能性があるとしてそちらを捜索され始めたりもしているが、あくまでも前世の姿。肝心の聖女は男で高校生として勉学に励んでいると分かる者はいない。


 他の国に行かれたと思っているだけに事務所を強襲した者たちが原因だとして今度はそちらが叩かれ始めているのはもはや笑い話だ。


「なんや? アイドルたちのファンやったん?」

「……珍獣として見る分には面白かったな」

「珍獣って」


 思い返すとリアクションが中々楽しかったなと。三人寄れば姦しいとは言うが、傍から見る分には動物園の珍獣を眺めている気分になれていた。


 ダンジョンにはまだまだ潜る気でいるだけに、もしかしたらまた会うかも。そんな予感がしないわけでもなかった。二度あることは三度あるなんて言うだけに何かしらの縁で会うのかねとは考える。


「そういや授業でダンジョン潜るのいつやっけ?」

「来週だろ? パーティ組むとかダルいが」

「一人の方が気楽やしの」

「そもそも組む相手がいない」

「そこは強制的に組まされるしええんとちゃう?」

「一番ダルいわ」


 そんなアイドルなんて記憶の隅に追いやり、学校の授業を思い出す。


 ダンジョンから採れる物質は国としても非常に有用でダンジョンに潜れる人間は多ければ多い程良い。


 少しでもダンジョンに興味が持てるように国の政策で学校の授業にダンジョン探索が入れられた。


 保護者には冒険者を付けるので安全性を謳いつつ、ダンジョン探索の基本やマナーを教える事で生存率を上げて少しでもダンジョン探索する者たちを増やす。


 結果としてそれが身を結んだかと言えば、どちらかと言えばやらないよりマシかな? のレベルでしかない。それよりも動画や配信によるインフルエンサーたちが作る名声や成功の方が人々の心を駆り立てた。


 そっちはそっちで無理をして撮れ高を作ろうとして命を落とすケースもあり、あまりに強過ぎる成功体験は毒にしかならない状況ではある。


 少し話は逸れてしまったが学生の内にダンジョンを学べが国の方針である以上、蔵人もダンジョンに入る必要があった。


 いつものように一人で入る分には問題無いが、残念ながら授業な為にパーティを組んで入らなければならずいつものチート的魔法が使用出来ない。


 最悪使っても構わないのだが、そこからクラウディアに結び付きかねないので剣一本でダンジョンに入る羽目になるので面倒以外何物でもなかったりする。


 ストロベリータウンの三人が出逢ったイレギュラーなんて余程運が無ければ遭わないので冒険者がどうにかするだろう。







「どうも初めまして。ストロベリータウンの木島未来と」

「御手洗有栖と」

「近衛詩音です」


 何故か教室に()()として現れた三人。


「「「ふぉぉおおおおおおおっ!!!」」」


 盛り上がる男性陣を他所に蔵人は愕然と三人を見つめる。




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