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「ミア、またか」

「若様。また、とは何のことでございますか?」


 部屋に呼び出したミアの追及が始まった。


「また。だろう。ネリーネにドレスを贈ってもまだ早いだなんだ言ってすぐ隠してしまって。今度はミザリー嬢もか。そもそも、ミザリー嬢には俺と父が用意したドレスを着てもらうはずだったろう。ドレスはいったいどこに隠したんだい」

「まぁ! 若様ったら隠しただなんて人聞きが悪い! 私はネリーネお嬢様のご意向を尊重して、代々デスティモナ伯爵家に伝わるドレスのお着替えをお手伝いしただけでございます」


 ハロルド様はため息をつく。責めるというよりも呆れたような様子だった。

 ミアは平然としていて悪びれてすらいない。


 どういうことなの?


「君が仕えているのはネリーネかもしれないが、その前に、デスティモナ伯爵家の使用人としての責務は果たしてもらわないといけない。父や俺の指示を蔑ろにしていいわけじゃないんだ。ネリーネを説得するのが君の仕事だろう」


 ミアは渋々頭を下げる。


「でも、若奥様にはあのドレスは不釣り合いだと思いますけど……」

「それを決めるのは、ミア、君の仕事ではない」


 仕方なさそうに、贈り物のドレスを隠していたありかをミアは自白し、ハロルド様は使用人を呼び取りに行かせた。


「来賓をこれ以上お待たせするわけにはいかない。ミザリー嬢の着替えが終わったら、広間にお連れするように」


 そう使用人に指示を出したハロルド様は、わたしに片目をつぶり部屋を去っていった。


 行違いのように運びこまれてきたドレスを見て息をのむ。


 これは……。


 レースにフリルにリボンに刺繍に宝石──。


 ありとあらゆる装飾品がふんだんに取り付けられて、ドレス自体の生地が見えない。

 豪華を通り越して……なんというか……。

 なんとも表現し難い。


「……旦那様も若様も、お亡くなりになられている大旦那様も、人格者で大変素晴らしい方々なのですが、センスにかなり難がございまして……。豪華であればいいとお思いなのです。こんな悪趣味なドレス、嫌がらせにしか思えないでしょう? ネリーネお嬢様にもこんなドレスばかり贈ってくるんです。最近はネリーネお嬢様まで感化されてきていて、困っております」


 ミアは嘆く。


 そう、言うなれば悪趣味なドレスだった。


「昔から支えていた父や祖父の話だと、大旦那様も旦那様もご実家の代わりにドレスを用意していたのを、大奥様も奥様もお断りされて、さっきお召しになったドレスを着られたとのことです」


 遠い目をしたミアの顔を見て、少しでもミアを疑ってしまったことを猛省する。


「わたしもこのドレスを見たら、さっきのドレスを選ぶわ」

「そうでしょうとも! ……どうなさいます?」


 絢爛豪華なドレスはわたしに不釣り合いだけれど、ワインの染みがついたドレスのままでは流石にいられない。


「このドレス、着るわ」


 憐れむミアに頼み、新しいドレスに着替える準備を進めた。

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