廃部寸前写真部新入生を捕まえる。
今日は4月8日 新年度が始まり、部活動も始動し始める。窓の外をふと見ると野球部がツルピカ頭を光らせ、今日も地獄に向かう。
「高校野球が人気あるならライトも人気ありそうだな〜。今日から部活始動かーよくあんな洗脳できるなー」
目の前で制服美少女の講義を受けているが内容など全く耳に入ってる様子はなく、帰りたいとしか思っていない。
この学校では昔からの慣習だとか言い今日から各部活動が始まる。我が部活も例外はなくこの流れに乗っかっている。
部員と思われる背の少し低い男の子は目の前で制服美少女の講義を聞き流している。そしてその内容は『今年の新入部員獲得方法』てあった。一通り言いたいことをぺちゃくちゃと喋り満足したのか、チョークを指に持ち部員君に差し向ける。
「さて、この部に足らないものは何かな?答えたまえ部員君。」
廃部寸前写真部部長時田咲が黒板にチョークでデカデカと書きながら、また騒ぎ始める。この人黙ってれば美人なのに、胸も平均よりあって背丈も部員君とほぼ同等の170近くあってモデル体型だけど痩せ細ってるとは思わせない美貌がある。
「我が部活唯一の部員君答えは」
そう、この部は俺と先輩の2人しかいない。
正確には去年まであと3人いたが卒業と同時に。行方不明になった。そして今日抜けた3人を穴埋めするために珍しく
黒板が汚れる。
「はぁ、金髪巨乳の外国人?」
「ラルセンブルク出身の?私じゃ物足りないと」
「はいそうです。」
「私だってあるわ。それにそれはフィクションだよ 」
「そうですか」
「部員君。そうじゃないの、」
「僕の本名は『部員君』ではないのですが」
「雄太くん?」
いつの間にか俺の目の前まで歩いてきて、しゃがみ込むと少し日焼けした胸元から目を逸らす。
「・・・っ!」
「どうしたの?ゆうちゃん」
「きゅ、急に名前で呼ばないでください。心臓に悪い。」
「蒼井 雄太ほら覚えてるわよ」
「あお君で良いよね」
「嫌です」
楽しそうな先輩を調子に乗せないようにきっぱりと断るが先輩は諦ない。
「え〜、可愛い美人先輩に呼ばれたくない?あおくーん、あーん、ほら?食べないの?」
スプーンを持つ真似をする。や、呼ばれたい。でもこの人あとが怖い。つい先日のお昼も人の教室にふらっとやってきて『あおくーん!デートしよ』と誤解を招く表現をクラス全員の前でやられた。あの時は死線で死ぬかと思った。
この人には自分立場というものをわかって欲しい。
普通の学校生活で美人先輩が後輩のクラスを尋ねる事なんてない。たとえあっても『デートしよ』なんて言わない。
「咲さん」
「な、何?部員君?告白?」
珍しく名前で呼ばれたせいか頬が赤くなる。
恥ずかしいのかそれとも突然のことに動揺したのか気になるがまだその時ではない。
「ほらね急に名前で呼ばれたら誰だってそうなるでしょ」
「死ね!女の子を弄ぶなんて・・・くすん、」
下を向いてしまった時田先輩は鼻をならす。
「せ、先輩、すいませんでした。その、あの」
「フンっ、罰として今日は帰らせないからね、」
拗ねて何を言うのかと思ったがロクでもねぇ、なんか色んな意味を感じるが・・・ダメだ聞いてはダメだ。
「えっ?俺帰りますけど、」
どうにか、ダメージを受けながらも先輩の誘惑を交わし、攻守逆転を目指す。
「ならついていくから、」
「やめてください俺が殺されます。先輩、自分の立場わかってください。」
もし先輩かおれんちにまでついてきたことが誰かにバレたら・・・串刺し。いや事故に遭うかもしれない。
ただでさえ三年美人先輩の携帯番号を知ってる数少ない2年生ということで、ことあるなどに番号を教えろって脅迫紛いの手段を使われることがある。それに加えて、家にお持ち帰りしたなんて噂が立てば・・・本当に事故では済まなくなる。
「大丈夫よそうなる前に私の彼氏だって言い張れれば誰もあお君に手を出すようなバカはいなくなるわ、」
「それ、俺の胃が持ちませんよ、憎しみの視線を感じながらあと2年俺に過ごせと?」
そんなこと、俺は耐えられない。
「私はいつもそういう視線を感じてるわ、特に胸元ね」
先輩は自分の胸元を指差す。残念なことにあお君もおとこである。ガッツリ見ている。先ほどとは違い服の下に隠れている胸を想像しながらバレていないと思い込んで凝視するあお君に冷たい声が届く。
「どこ見てるの?」
「いえ、その自慢していたのね、ね、そういうものなのかなと思いまして。」
全く言い訳になってない。それどころかガッツリ見たとこを肯定しようとしている。
「あお君も男・の・子・だもんね」
うんうんと先輩は分かったような表情をし黒板に書き込む。
『誘惑して部員を捕まえる』
「それはやめた方がいいと思いますけど」
「でも〜あお君はみたいでしょ」
「話が変わってるような気が・・・新入部員の話ですよね、何故それが既成事実の話に?」
可哀想な新入生よ、生きろ。
●
全部活が熱狂と怒号と涙みに包まれる、4月10日の入学式が目前に迫り、運動部系の部活はもちろん写真部みたいなマイナーな部活も羊を捕まえるためなら狼となる。
うちの学校は入学式を体育館で終えるとそのまま新入生たちが校舎を見学するという手筈となっている。その時が新入生を捕まえる絶好のチャンスである。うぶな新入生を・・・と、そんなことは置いといて。例年、どの部活にも捕まらずに無事校舎を出られるものは数えるほどしかいないと噂されている。
そしてどの部活も今日明日はピリピリして
「さて、部員君、今、私は何を思っていると思う?」
「もっと、痩せたいですか?」
「違う」
「全国のJK女子高生の願いでは?」
全部とは言わないが痩せたいと思っているJKはかなりいると思う?知らんけど。
「私はすでに痩せている。部員君にとやかく言われる筋合いはない。君こそ春休み食べすぎて太ったのでは?」
あー、そう言うこと、だいたいわかった。この人春休みに食べ過ぎて太ったんだ。言ったら殺されるんだろうな・・・でも同情して欲しいのか、はぁ、面倒っちーな
「そういえば少し食べすぎたような気がしますね」
「やはりか。そうであったか私の見立ては間違ってなかったな」
「先輩、申し訳ないですけど新入部員の話はどこに?このまま新入部員が入らなかったらこの部は廃部ですよ、カメラとマイホームは取り上げられるんですよ。わかってますか?」
「愛の巣か。部員君にもそんなことが言えたのだな、女の子に体重の話をする屑だと思っていたよ」
ショック。最低でもこの人よりマシだと自負してたのに。
「でもJKってよくスリーサイズがうんたらって騒いでますよね、それと同じでは?」
「それとこれは違う」
「でも下着は見られたくないでも水着は見て欲しい。それと同じでは?」
「全く違うの、じゃ新人君、新入部員獲得の方法を考えて」
男子にはわからない領域というものがあるのだろうか?
膝上と膝下のスカートでは印象が違うといったところであるのだろうか?
「考えよう、じゃないんですね」
なんでそこで俺に全部投げるんですかねこの人、仮にもこの人この写真部の部長だと思うのだが?思い違いだったのだろうか。
「では先輩を使いましょう」
「私?」
時田先輩はまさか自分に向くとは思っていなかったのか普段絶対聞かない裏声が出る。
「うふん、な、なんで私?」
「正確に言うならば先輩の体です」
「いやーん、えっちだねーあお君は〜」
と胸を隠すがそれもエロい。隠す仕草もエロい。良い。
「先輩。そこらへんに台でも置いて背景でなんかいい感じの海持ってきてその上で水着着てだっちゅーの、しましょうよ、それで写真撮らせて背中トントンしてあげるんですよ、『とったね』ってそうやって恐喝―ではなく、説得して入部にこぎつけましょう。」
やり切った感を出しているが全くやり切ってもいないしなんなら脅すとその口が自白した。
「なんか私、損してない?それによくそんな古いの知ってるね、今は菜々緒の方じゃない?」
案外乗る気みたいだがやはり抵抗は強い。
「やります?」
少し勃つのを感じながら想像の時田先輩の恥ずかしそうな顔をして黒の水着を着た先輩を想像する。
「いいわね、」
「え?」
想像の中の先輩がそう言うと現実でもリンクする。
「あお君が今から筋肉つけてボディビルダーみたいなことやれば女の子から悲鳴が上がるわよ」
悲鳴。黄色い悲鳴のわけがない。逃げ出す時の悲鳴なんだろうな。
「恐怖の悲鳴ですね、そもそもあと2日じゃ絶対無理です。はー・・・」
半年はかかると口が滑りそうになったがどうにか塞がった。もしそんなこと言ったら本当に半年間写真部が筋トレ部へ変わるところであった。
「どうしたの?」
急に黙り始めた部員くんに不自然な視線を向けるがいつもの事なと勝手に納得する。
「いえ、なんでもありませんね」
「まぁいいわ、どっちにしても水着もボディビルダーもなし。恥ずかしいし気持ち悪いし今度海行く?」
「恥ずかしいはどこに行ったんですか?」
自分で恥ずかしい〜とか言ったながらからである。この人天然なのか馬鹿なのか時々わからなくなる。
「そうよコスプレさせてそれを私達で写真撮るのは?」
これ名案とばかりに時田先輩は黒板に書き込む。
「却下ですよそんなもん。誰がそんなことするんですか、ノリだけで生きてるJKじゃないんですから」
「JKはノリだけで生きてるんじゃないわ」
「そこ違う、」
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様は?」
「先輩の口からそれが出るとは思わなかったですよ、いっそのこと先輩がやりましょうよ、で丈の短いスカートにしてお触り放題にすればより食いつきがよくなりますよ」
うん。その方が面白そう、と言っている。どちらも馬鹿である。
「お触り禁止よ、私レディだからそもそも本場のメイドさんはそんなことさせないわ。メイドにお触りできると思ってるいるのは日本だけよ」
可哀想ねと呟くのであった。
「なんですか可哀想ねって最初にやり始めたの先輩でしょ」
と時田先輩のせいにしようとする。だから!先輩のせいだろ!おっとバレたか。一体さっきから誰だ!うるさいな。
「ではどうします?。何をしますか?水着もダメ、メイドもダメコスプレもダメ、今流行りのイ◯ス◯映えってやつですか?真新しい制服で黒板に入学おめでとうって書いてジャンプさせてJKたちがイチャイチャしあうのを俺が見てろっていうんですか?嫌ですよ。」
とその決意は固い。
すぐに後悔した
「うん。それで行こう!」
「えっ?俺、嫌って言ったばっかですよ?」
人の話聞いてましたと?その目の死に方で何が言いたいのかよくわかる。
「私が監督するから部員君はカメラマンね、なんか人形持って『ほらっ、こっち向いて』ってやる役どう?」
残念なことにこのあと部員君がどんなに抗議しようと先輩の結論は変わらず、カメラマンとして部員君も動員されることに決まった。
その交換条件として人形の件はなくなった。
流石に人形持ってこっちも向いて〜きつかった。
その後生徒会次期役員が勧誘方法の回答期限ということで回収に来た。
この時期はどうしても生徒会長が卒業してしまっているので前年の役員が各部活動から新入生勧誘の方法を集めている。
今年も来月あたりに役員選挙とか言う俺には関係ないアピール合戦が繰り広げられるのであろう。
去年は立候補者がレモネードの屋台をしていたな。安くて美味かった。あの金どっから出てきたんだろ。ブラックボックスってあるんだな。
当選したら学食でレモネードなどの清涼系飲料を格安で提供するって言ってたな。それも見事当選して今じゃ学食が飲み放題に変わってる。俺もその恩恵にあやかっているから文句を言う気はないが。
●
4月10日
昨日は酷い目にあった。用意だとか言われ美人先輩に買い出しに付き合わされた。デートなんて生温いものではなくただの荷物持ちとして同行しただけなのだが。今朝は校内全体が俺に殺意を向けていたような気がする。俺は被害者なのにな。ついでに下駄箱にゴミが入ってた。
そして昨日買ったものはまぁ後ろ用の背景だな。
3m✖️3mの背景を5枚。
夕陽
海
砂浜と夕陽
車
図書室背景
と本物の砂を20キロ。配達してもらった。
何故車?かと思ったが先輩曰く、『こう言うのに釣られる奴が絶対いる』との事。そんな奴絶対ロクでもねぇと思うけど、先輩は『そんな奴いたら調教ーーじゃなくて躾すればねうん。』とさらに酷いことを言っていた。まぁ。学校で身元調査もしてるし新入生にそんな奴いるとは思わないが。
ここ最近へんな噂が流れてるんだよね、学校が生徒のネットを全て監視してるって、呟きも投稿も全て筒抜けだってまぁ俺は全部偽名でやってるから大丈夫だと思いたいが、カーストトップグループなんで本名でやってるの多いからな。
さっき、乗り込むだとか物騒な喋り声が聞こえてきた。
今頃職員室は血の海とかしているのかもしれない。俺には関係ないや。だけどあれか今行っても職員室は空か。
「部員君。準備はできた?」
「先輩こそグラビア撮影の用意は?」
「グラビアっていうのは水着着た写真って意味じゃないよ、確か印刷の技術をグラビアっていうらしいよ。それにそんなに期待するならいつでも着てあげるよ、今も着てるよ見る?」
不意に爆弾を投下するが強靭な心で耐えきる。
「・・・いえ、結構です。それは写真で送ってください」
いや耐えきれなかった。
「わかった」
「え!?なんて?」
「送ってあげる。」
その当日から、毎日22時にジャンプ系のグラビア写真の真似をした時田先輩の写真が送られてくるようになった。
水着ではなく制服であったが学校で見るよりも際どい格好であった。
それはそれで美味しい写真なのでちゃんとクラウドに全部保存していた。
だが悲しい。あお君は先輩の写真よりも女の子の部屋という聖域に釘付けとなっていた。時々わざと映る、私服や下着を密かに楽しむのが日課となっていた。
●
『全校生徒に案内をします。まもなく入学式が閉式します。このあと新入生が校内を見学します。過激な行動、勧誘、脅しは控えてください。』
毎年恒例となっている放送部による注意喚起の放送が今年も生徒たちの耳を刺激する、そしてそれは餌を待つ動物を呼び起こすこととなる。
『野郎ども!今年も!生きのいい新人を捕まえるぞ!』
『『『おおぅぅぅう!!!』』』
『今年の目標は10人!!達成できなかったら、平手撃ちだ!!』
『おぅ、おうぅぅぅぅ』
『喰らいたい!』
今のは女子テニス部平田先輩だな、部活系部長の可愛さをうちの時田部長と陸上部の葉田部長、篠田生徒会長合わせて4大美人トップの座を日々争っている。
平田部長はラリーで黒髪ロング浮き上がる時に除く頸がが良い。テニス部が試合の時は学校を休んででも試合を見に行く馬鹿がいた。その他にも先輩の練習風景を盗撮した写真が校内の闇ルートのブローカー経由で一枚500円で売られていると噂になっている。
葉田先輩は他の3人に比べたら胸は決して大きくないが適度に主張する程度にはある。引き締まったボーイシュな体型で肌は日焼けで少し茶色くなるのがまた良い。校内ではスカートの少し下が白く、茶色の日焼けした痕との境目が人の目を引く。一度見たらその脚の虜になると3年生の葉田先輩の隣の席座るA氏は語る。
生徒会長の篠田先輩は最高!!おっぱいも大きくてウエスト細くてふくらはぎは引き締まり筋肉感がすごい。太もももたるんでるではなく引き締まって鍛えていることが窺える。それになんと言っても生徒会長である証である。黒髪ロング!
制服のスカートも校則に則って履いているのに脚が長い!
スカート巻いて脚を長く見せている量産系JKではなく
天然の超美人である。一度見たらもう抜け出せないほど美しい。人呼んで蟻地獄。
どこかのお嬢様なのか朝と夕方は必ず校内に先輩が『じいや』と呼ぶスーツの似合う老人が迎えにきて車で帰って行く。馬鹿な奴は自転車で追いかけようとするが何故がじいやの車が通る時は信号が青なのに自転車が通る時は赤になると噂になっている。
そしてなんと言っても天然で有名でこの中で1番引っかけ安い時田先輩。胸は会長よりも小さいがそれでもでかい。
背丈は会長とほぼ同じ、会長と知り合りなのかたまに生徒会室に出入りしている。怒られてるだけかもしれない。出入りしお茶菓子をたらふく食べていると噂されている。
会長が計算された美人だとすれば
時田先輩は子供の頃はかっこよかったけど成長したら美人に―なって帰ってきた幼馴染と言った感じである。誰にでも愛想が良く話し相手になれる逸材である。
とあるバカは時田先輩を盗撮しどっかの芸能事務所に送りつけた噂になった時があった。
「部員君。来るよ、私たちの初めての共同作業―」
「ケーキの話ですか?。なら俺ショートケーキ苺なしで」
「珍しくチョイスだな、」
流石の先輩もこれならもう黙るだろ。
「わかった探してくる。それで白いドレス?」
「いつから結婚式の話に?」
「えっ?違ったの?」
「はい。違います。」
「そんな真面目顔して言わないでくれない〜冗談じゃん」
「じゃあさあ―」
「嫌です」
「何にも言ってないじゃん」
「絶対ロクでもない事です。」
「私達も外でやっている事やろうって言おうとしたのになー」
「勝手にやってください。」
「フン、良いわよ、あの写真公開するから」
そんなものない。ないと思いたい。
●
すでに用意が済んでいる写真部部室。
普段黒板があるところには買い出しで買ってきた背景が5枚並べられている。足元にはブルーシートの上に本物の砂が敷かれた。よくこんなもの買ってきたな〜、経費、落ちるかな。自腹はヤダ。
「上がってきたわね。部員君、私が外に立つから部員君は中で拘束して」
「これって部員の勧誘ですよね、いつからハニートラップに?」
「バニーガールの方が良かった?」
「裸エプロンで」
「それは恥ずかしいから嫌だ。制服エプロンなら良いわよ、気づいてないふりしてスカートに引っ掛けてパンツ見えてる感じにして」
「あんた普段から何考えてるんですが」
つい、へんな口調が滑ったがほんと何言ってんだこの人?
「女子のそういう光景よく想像するでしょ」
「・・・しますね」
「風で煽られて巻き上げられるスカート。プールで水着の食い込みを直す美人、階段下に隠れてスカート覗かれる女子。その多くは計算してみせてるのよ」
「露出狂ですか、先輩もですか?」
「えっ、私違うわよ」
違うのかい!えっ、あの写真は?まじもん?
今この瞬間部員君の下半身事情が大変なことになる。
「来たわ!捕まえないと」
「君!」
茶髪のショートボブの小柄な女の子に声をかける。
「写真部入らない?今なら本物の砂浜を体験できるよ、入って入って!」
先輩はその子の腕を掴み部室に誘拐する。
そうして写真部部員狩りが始まった。俺の仕事も忙しくなる。
「ようこそ、写真部へ、こちらに名前とクラスと出席番号を書いてもらえる?」
もちろんカーボンである。先輩が閃いた馬鹿な作戦である。
「ここで実際の砂浜を使って雑誌の撮影体験をしてもらいます。部長よろしくお願いします!」
俺はカメラを撮り女の子を部長に任せ所定の位置にカメラを構える。もちろん、コピーの準備も万端。紙切れインク切れの心配なし。これをお持ち帰りしてもらって、勝手にカーボンを提出する運びとなる。
外では興味を惹かれた女の子たちが数人、中を見ている。
「さぁ!君たちも見ているだけじゃなく入っていいよ!、今捕ってあげるから!」
と先輩が声をかけると2、3人が勇気を出し中に入る。そして俺はカーボンに名前を書かせる。
「じゃあ撮るよ。ポーズは気にしないで大丈夫。君が思うままに好きにして」
撮られるのに慣れてないのか少し頬が紅潮している。そんな顔もいい。被写体としては最高の物件である。
これが俺の写真家人生の第一歩であった。