我が兄弟よ
時は転生開始よりしばし遡り。
エルドロー大陸、その南方に広がるニンブル大森林の中、とある遺跡がひっそりと佇んでいる。
今は滅びた古代人によって造られたその遺跡は、かつて神々への生贄を捧げるために使われており、こういった場所は山賊や、狂信者たちにとって格好のたまり場となっていた。
このニンブル古代遺跡も例外ではなく、死の神を信奉する集団によって占拠されていた。
彼らは死の神の眷属を召喚し使役するため、周辺の村々から生贄と称して人を攫い、殺害している過激な集団だ。
彼らは互いを兄弟と呼び合っているが、実際は世間に居場所を失った除け者や、没落した貴族などの、はみ出し者の寄せ集めだ。
古代遺跡内部、地下の祭儀場へと続く階段を黒いローブ姿の集団が降りていく。
先頭を歩く小太りの男が、隣にいた女性の信者に尋ねる。
「我が兄弟よ、儀式の準備は?」
「滞りなく済んでおります、兄弟よ。」
「ウム、それは上々。して、今回の贄は?」
女性信者とは別の、年老いた男が答える。
「あぁ我が兄弟よ、年若い村娘を用意しておるそうだ。」
「そうか、ならば今度こそは成功できるやもしれん、なぁ?兄弟たちよ。」
後続の集団が口々に同意の言葉を口にする。
しばらくして、ローブの集団は遺跡の地下にある祭儀場へとたどり着いた。
その場所は円形に吹き抜けた、天井の高い造りになっており、部屋の中央は他の部分より少し高くなっている。
少し高くなった部屋の中央部には巨大な魔法陣が描かれており、その上に両手両足を縛られ、体中に意味不明な模様を描かれた裸の少女が横たわっていた。
「聞け!我が兄弟たちよ!」
ナイフを片手に持った小太りの男が、魔法陣のある壇上から、祭儀場にいるほかの信者たちに向けて高らかに語り掛ける。
「今宵、我らが敬愛する死の神から、恩寵を賜るための儀式を執り行い…!?」
突如小太り男の背後から眩い光が発生し、爆風と共に周囲は一瞬、昼のような明るさに包まれた。
「んなっ!何事だ!?」
立ち込めていた粉塵が徐々に晴れていき、その奥から何者かが現れる。
それは騎士のような恰好をしていた。
赤い差し色の入った漆黒の鎧、濃紫色の外套を纏い、背中にはギザギザの返しが付いた長槍を、腰には幅広の長剣と鞭を携えていた。そして何より注目すべきは、本来頭があるはずの場所でユラユラと燃え盛る、青白い炎。
「首無し騎士…。」
静まり返った空間で、誰かがボソリと呟いた。
カロンの転生する異世界では、基本的には亜人と人間は共存しています。亜人と魔物の区別としては、知性を持つかどうかになります。魔物と呼ばれる存在は、温厚な種もいるが、ほとんどが本能で生きている生物です。
また、人間国家の中には亜人や魔物を悪とし排除する国や、奴隷として労働力に用いている国も存在します。その逆も然りですが。
亜人と魔物繋がりの話になりますが、筆者はゴブリンが亜人なのか魔物なのか前から疑問でした。
作品により様々な立ち位置に存在するゴブリンですが、この小説内での扱いは亜人です。
ですが人間と同じで、良い奴ばかりとは限りませんが。以上余談でした。




