サラリーマンと死神
「それじゃあヨミさん、お先でーす。」
「おぅ、お疲れー。……はぁ~。」
最後の同僚が帰り、上司に頼まれた山積みの仕事を眺め、ため息を付く男。
彼の名前は 夜水野渡 年齢28歳 職業サラリーマン 独身
彼はとても疲れていた。迫りくる仕事の期日、部下への教育、パワハラまがいの上司、正直言って彼の精神状態は、いつオフィスの窓を突き破って重力に身を任せてもおかしくない程にやつれていた。
一通りの残業を終え、深夜に近づいた時計を横目に退社する。冬の到来を感じさせる肌寒い夜風が吹き抜ける中、夕飯を買うため近くのコンビニへ向かう。
「飯買って、家帰って、風呂入って――って全然寝る時間ねぇじゃんか!…はぁ~、ゲームは無理か。」
信号待ちをしながら、唯一の癒しであるゲームの時間がない事にため息を付いていると、横断歩道の向こう側に一瞬何かが見える。大きな鎌のようなものを持った黒い人影、まるで死神のような。
「いよいよ疲れが目に来たな、死神だなんて馬鹿馬鹿しい。」
自分の見たものを否定しつつ、横断歩道へ一歩を踏み出し、―――死んだ。
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目を覚ますとそこは不思議な空間だった。
周囲は真っ暗なのに自分の体はハッキリと見える。
「どうなってるんだ?確かコンビニへ向かおうとして…。」
不意に何者かの気配を感じ振り返る、そこにはスーツ姿で土下座をするフードを被った骸骨がいた。
「この度は!誠に申し訳ございませんでしたぁ!」
頭が割れるんじゃないかと思うほどの勢いで、床に額を打ち付ける謎の人物。俺はただただ困惑した。
「あ、あの?ここは一体?それにあなたは?」
するとスーツ姿の骸骨は、正座したままピンと背筋を伸ばし、自己紹介を始めた。
「申し遅れました、わたくし死神と申す者でして、死の宣告と、魂の回収を生業としております。この度は私の不手際で夜水野様を死なせてしまい、その埋め合わせをと思い、お呼びした次第で御座います。ちなみにここは私の自室です。」
「はい?つまり俺は死んだんですか?」
「心中お察しします。」
なんてこった。まだ28歳だぞ、なのにこうもあっさり死ぬとは。もともと早死にの家系だから覚悟はしてたが、それにしても早すぎる死だ。酒浸りの親父ですら40歳まで生きたってのに。
ろくでなしだった父親より早く死んだことを嘆きつつ、死神にこれからの事を問う。
「それで?これから俺はどうなるんです?」
「非常に申し上げにくいのですが、夜水野様には消えていただきます。」




