その日の夕食
アルマのと模擬戦に勝利した夜、リリーは約束通り鶏の揚げ物こと唐揚げを作ってくれた。
「それじゃあ、カロン君の勝利と今後の活躍を願って…乾杯!」
「「乾杯!」」
リリーの乾杯の合図とともに、ささやかな祝賀会が開催される。テーブルにはリリーお手製の料理の数々が並び、中央には大皿に盛られた大量の唐揚げが鎮座していた。
いくつか料理をよそっていると、アルマがしみじみとした様子今日の模擬戦について話し出した。
「しかしまあ、飛燕の初撃を防いだのにも感心したが、最後の宙返りからの突進には流石に驚かされたぞ!」
「そんなこと言って、しっかり防ごうとしてたじゃないですか!」
「そうなんだけど…。クッソォ、あそこで足払いしなけりゃ…。」
「でた、お父さんの負けず嫌い。」
本気で悔しがるアルムをリリーと二人で笑いあう。こうしていると本当の家族のようだ。
だが、こんなに楽しい夕食ともしばらくお別れだ。
急に静かになった俺の気持ちを察したのか、リリーが少し悲しげな表情で口を開く。
「あーあ、カロン君ともあと少しでお別れか。少し寂しいな。」
俺はアルマに稽古をつけてもらうにあたって、ある約束をしていた。もしアルマに勝てるほど強くなったなら、ここを出て世界を回るという約束だった。
なぜ?という俺の問いかけに対しアルマは「可愛い子には旅をさせる。が俺の信条だからだ。」と答えた。世界を回って、それでもここに戻りたい思ったのなら、いつでも戻ってこいと言ってくれたのを覚えている。
「そう言うなリリー。俺はお前にも…。」
そこまで言うとアルマは急に言い淀んだ。
無理もない、このアルマの信条とやらが原因でリリーと喧嘩になり、結果彼女は誘拐されてしまった。父親としては、もっと外の世界を彼女に知ってほしいそうだが、娘としてはたった一人の父親を残して行けないという水掛け論の果ての喧嘩だったそうだ。
静まり返った空気をどうにかするべく、俺は気まずさの海へと漕ぎ出す。
「まあまあ、リリーもアルマさんもそんな湿っぽくならないでくださ―」
「お父さん!…私決めた、行くよ!」
俺の言葉を遮ってリリーから決意表明の言葉が放たれる。
「ほ、本当か!?でもどうして急に…お前あんなに嫌がってたじゃないか。」
そう言われたリリーは少し恥ずかしそうにしながら、俺に視線を向けつつ一言呟いた。
「なりたいものが…できたから。」
「へぇ!それって何?ちょっと教えてよ!」
俺の問いかけに少し照れ臭そうにしていたリリーだったが、すぐにいつもの調子で小悪魔のような笑みを浮かべる。
「…カロン君には教えないよーだ!フフフッ」
その後も何度か聞いたが、リリーは結局最後まで”なりたいもの”が何なのか教えてはくれなかった。
楽しい晩餐はあっという間に過ぎ去り、その数日後、俺は慣れ親しんだ農場を出発した。




