秘策
試合開始の合図とともに、俺とアルマは一斉にその場から飛び出す。もちろん先手を取ったのはアルマだった。技量で劣る俺は迷わず防御を選択する。
アルマの狙いは頭…いや胴体だ!
斬り結ぶ瞬間、右側で持っていた剣を体の左側で受ける形に構え直し、直後、木剣から体全体に軋むような衝撃が響く。なんとか初撃は防げたようだ。
防いでいる剣に力を込めたままアルマが問いかけてくる。
「どうして俺が左脇を狙うと分かった?」
「勘です…よっ!」
そう答えながらアルマを押し返し、続けざまに二連撃を叩き込む。が、華麗に受け流され、お返しと言わんばかりに左肩に反撃を喰らった。
「イッ!」
後ろに大きく飛びのき一度距離を取った俺に、アルマは挑発的な態度で余裕を見せる。
「おいおい?そんなもんじゃないだろ?もっと全力で来い!」
ふぅ、と息を吐き、手に持った剣に集中する。ここからが俺の作戦の始まりだ。
息を整えた俺は、先程よりも数段速い速度で連撃をアルマに叩き込む。右へ左へ躱され、受け流されても休むことなく打ち込み続ける、まさに怒涛の剣撃だった。
「あ!!」
試合の行く末を見届けていたリリーが、思わず声を上げる。
連撃を繰り出していたカロンだったが、上段からの斬撃をアルマに弾かれ大きく仰け反ってしまった。
致命的な隙だ、だというのにカロンの顔に何故か焦りはなかった。不思議に感じていたリリーだったが、直後、興奮と共に信じられない光景を目にする。
体勢の崩れたカロンの足元にアルマの木剣が迫り、いつものように転がされそうになった瞬間、彼は弾かれた勢いを利用して後方に宙返りをし、攻撃を躱した。
カロンの動きはそこで終わらず、着地後即座に反撃に出る。
回避された事で後手に回ったアルマだったが、持ち前の反応速度で、すぐさま防御姿勢に移ろうとするが、俺の剣の方が速かった。
カーンッという乾いた音と共にアルマの持っていた木剣が宙を舞い、地面に刺さる。
「ハァ、ハァ…俺の勝ち…ですよね?」
「そのようだ。おめでとうカロン、合格だ。」
「おめでとう!すごかったよカロン君!」
極度の緊張で息の切れた俺はその場に大の字に倒れこみ、剣を掲げて勝どきを上げた。
「よっしゃぁぁぁ!!」
これでもうアルマに転がされずに済む!思えば長い道のりだった、最初の頃は体幹を鍛えろと転がされ、やっと剣を持たせてもらったら転がされ、ほかの武器を持っても転がされ、抜き打ちだとか言って訓練以外でも面白半分で転がされ…本当に地獄の日々だった。
懐かしくも忘れたい記憶で胸が一杯になった俺に、ある変化が現れる。
「おい、カロン?目のとこからなんか出てるぞ。」
「白い…火?あ!もしかしてカロン君泣いてるの?」
「バッ!そんなわけないだろ!ちょっと…感極まっただけだよ!」
どうやら俺の炎は感情で色が変わるようだ。本当に迷惑な体になったもんだ。




