揚げ物に釣られて
素振りをしながらアルマを待っていると、昼食の後片付けを終えたリリーが様子を見に来た。
「あれ?お父さんまだ来てないの?」
「ああ、もうすぐだと思うけど、ところで最近よく訓練見に来るね、なんかあった?」
俺の質問に一瞬固まったように見えたリリーだったが、何かを思いついたのか悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ん?えーっと、ほら!カロン君の成長がすごくて、見てて面白いなーって、あとしょっちゅう転がされてるのとか?フフッ。」
「あ!リリー、今絶対馬鹿にしただろ?」
「かもね~?悔しかったらお父さんに勝って見せてよ。もし勝てたら今日の晩御飯は、カロン君の好きな鶏の揚げ物作ってあげる。」
「ったく、俺で遊ぶなっての。まあでも揚げ物は食いたいな…。よし!勝つぞー!!」
俺の奮起の声に、リリーも「オー!!」と声を上げ、二人で笑いあった。そんなことをしていると、肩に木剣を担いだ今日の対戦相手が現れる。
「おー元気だねえ二人とも。で、カロン俺に勝つ算段は付いたか?」
「ええ。まあ、やるだけやってみますよ、アルマ師匠。」
アルマは「ほう。」と一言発すると最初に会った時と同じように、持っていた木剣を低く構え、俺も同じように構える。
この剣を低く構える姿勢はアルマの我流剣術の一つで、名を”飛燕”と言う。
相手の視線より低い位置から素早く距離を詰める事で、視界から消えつつほぼ回避不可能な攻撃を繰り出せる構えだ。動体視力がズバ抜けていれば対応できるらしいが、今の俺には無理なのでアルムと同じ構えで迎え撃つ事しかできない。
「開始の合図は…リリー、頼めるか?」
「うん。それじゃあ、よーい…」
リリー掛け声で両者の間に緊迫した空気が流れる。
「はじめ!!」




