降り注ぐ太陽の下
アルマさんはこの世界について教える代わりに、二つの条件を言い渡してきた。一つ目はここに滞在する間は農場の手伝いをすること、二つ目は武器の扱いと戦い方を覚える事、後者はどちらかと言うと武器もロクに扱えない俺の身を案じてのものだった。
そして今、日差し降り注ぐ太陽の元、麦わら帽子を被った鉄兜に作業着という珍妙な姿の俺は畑を耕していた。
ちなみにこの鉄兜は、俺が首無し族だというのを隠すために、農場近くの村でアルマが買ってきてくれたものだ。
見た目がバケツみたいなので正直気に入ってないが、「正体を晒しておくと、何かと面倒ごとに巻き込まれるかもしれない。」とアルマに言われ、仕方なく被っている。
「二人ともー!そろそろお昼ですよー!」
母屋の方からリリーの元気な声が聞こえた。左頬の傷跡は残ってしまったが、卑屈になることもなく、むしろ出会った頃より遥かに元気になっていた。最近では俺に対しての遠慮が無くなり、隙あらばからかってくるようになった。まるで本当の兄妹のようだ。
「おーう!ほらカロン、飯にいくぞ。」
「はい!」
俺は一緒に作業していたアルマと一緒に、母屋の方に歩き出した。
ここで暮らし始めて二ヵ月、午前中は畑仕事に家畜の世話、午後は空いた時間にアルマとの戦闘訓練というハードな毎日だったが、おかげで心身ともにかなり逞しくなった。
師匠であるアルマは、冒険者時代に武器の達人と呼ばれたほど、様々な武器の扱いに精通していた。俺の持っていた剣と槍、それに鞭の扱いまで、時間は掛かったが一通り教えてくれた。
畑仕事を終え昼食を始めて少し経った頃、アルマが今日の訓練について話し出す。
真剣な顔だ、しばらく一緒に居て分かったが、大抵この顔をする時はとんでもない事しか言わない。前にこの顔をしたときは、リリーを嫁にしてここで暮らせと言ってきた。その後、顔を真っ赤にしたリリーに鉄鍋で思いっきり頭を叩かれていたが…。
「なあカロン、今日の訓練は模擬戦形式でやろうと思う。俗にいう卒業試験ってやつだ。お前が今まで学んだこと全部俺にぶつけてこい!」
「え?…本気ですか?」
「でたよ。お父さんの思いつき今日の訓練。」
何度か戦って分かったが、この男アルマは滅茶苦茶に強い。素の力は俺の方が上だが、反応速度が段違いに早い上に技量も高い、どんなに剣を振ってもすぐに見切られ地面に転がされる。正直勝てる気がしない。
「俺は家畜にエサやってから行くから、昼飯食べ終わったら準備しとけよ?」
そう言い残しアルマは早々に出て行ってしまった。呆然とする俺にリリーが皮肉めいた励ましを送ってきた。
「まあ、カロン君。ドンマイ!」
「いや、まだ負けてないから!っておいリリー!?」
俺のツッコミを聞き終わるより先に、小悪魔のような笑みを浮かべたリリーは、食べ終わった皿と共に台所の方に消えていった。リリーの奴、絶対見返してやる!と思いつつ俺は食べかけの食事を頭に放り込んだ。
その後、食事を終えた俺は訓練の準備をしながらアルマに勝つための作戦を練っていた。
さて、アルマには正攻法じゃ勝てない、かといって下手なフェイントは通用しないし…。
「よし!アレで行くか。」
俺はとっておきの秘策で迎え撃つことに決めた。




