渡り人
食後の賑やかな談笑の中、俺はとある疑問を口にする。
二人があまりにも普通に接してくれるから、すっかり忘れていたが。
「そういえば二人に聞きたかったんですけど、…僕の事怖くないですか?首無いんですよ?」
俺の疑問に対し、アルマが不思議そうに答えた。
「別に?怖かねーよ。むしろ実物を見られてワクワクしてるさ。単騎で千の兵を相手にする伝説の亜人、首無し族。その辺の子供でも知ってる英雄譚の一つさ。」
え?俺亜人なの?しかも伝説?どゆこと?
頭の中が疑問で埋め尽くされた俺は、つい考え無しな質問をしてしまう。
「その首無し族?ってのは、そんなに珍しいんですか?」
俺の言葉を聞いて、突如真剣な表情になったアルマ。
しまった!つい本音が。こんな質問したら…
「お前、自分の種族を知らないのか?そういえばあの武具も…」
ですよねー!どうにかして会話の軌道修正をしないと、俺に対するイメージが娘を助けた命の恩人から、自分の事も知らない頭のおかしな奴に塗り替わってしまう!頭無いけど。
「いやぁ、これはそのー、えーっと…。」
必死に言い訳を探している俺をよそに、何かの結論に辿り着いたアルマは聞きなれない言葉を口にする。
「お前もしかして”渡り人”か?だとしたらあの意味不明に強力な武具も説明が付く。」
アルマは何も知らない俺の状況を察したのか、色々な事を教えてくれた。隣にいたリリーも興味深そうに聞き入っていた。
彼曰くこの世界では時々”渡り人”と呼ばれる神に祝福された存在が現れるそうだ。その者たちは皆一様に、世界に対して無知であり、同時に強大な力を秘めている。真意は不明だが物語に出てくる英雄や魔王の何人かはその”渡り人”なのだとか。
そこまで聞いたところで、英雄を見るようなキラキラの眼差しで、俺を見つめるリリーに気が付いた。正直今の俺はそんなにすごくないんだけどね…。
「ところでお前を連れて来た神は…って、そうか首無し族は死を司る神の眷属だったな。」
「ええ、その通りです。人間に転生させてくれって頼んだんですけど、上手く行かなかったみたいで…。」
俺はもう少し情報を集めるべく、この世界の事についてアルマに尋ねることにする。
「アルマさん、もう少しこの世界について教えていただけませんか?」
「あぁ、いいぜ。ただし条件がある…。」
そう言うとアルマはニヤリと笑った。




