神の憂鬱
カタカタカタカタカタ…
真っ暗な部屋、パソコンの薄明りに照らされた一人の神が座っている。
彼は俗にいう死神だ。
死神と言われれば、骸骨の顔と漆黒のローブ、手には大鎌を携え、死期の近いものから魂を刈り取る、恐ろしい存在を想像するだろう。昔はそうだった。
「時代の流れかねぇ。」
タンッという子気味よい音と共に大きく伸びをする死神。その姿はあまりにも想像とかけ離れたものだった。
くたびれた上下グレーのスウェットに、かわいらしいモコモコのスリッパ、唯一黒いフードと骸骨の顔だけが彼が死神であることを証明している。
「ハァ~。昔は良かったなぁ、鎌を片手に死にかけた人間の枕元に立つあの愉悦感…、もう一度味わいたいなぁ。」
自分たちのスタイルに確固たる自信を持っていた死神業界も、迫りくる電子化の波には逆らえなかった。
今やボタン一つで死亡宣告から魂の回収までできてしまう、便利な世の中になったもんだ。
今と昔の違いを噛み締めつつ、部屋の片隅に置かれた大鎌を見つめる。ホコリを被ったかつての相棒は、今やただのローブ掛けに成り下がっている。
死にかけた人々との蜜月の日々を思い出しながら、机に置いてあったマグカップを取ろうとし、中身をキーボードにぶちまけた。
一瞬で脳内パニックに陥ったスウェット姿の死神は、必死で卓上に広がっていくコーヒーをふき取る。
やっとの思いで終わらせた仕事のデータが消えるのだけは、冗談抜きで洒落にならない。
そして一通りの大惨事を乗り切った死神は、パソコンの画面を見て絶句した。
「やらかした…。」
どうやら、まだ死期の来ていない人間をあの世に送ってしまったようだ。
この小説を読んでくださり、ありがとうございます。
わたくし赤原いもりは、書いた小説を貯めて置けないタイプです。
調子がいいときはポンポン出してますが、出てないときは、悩んでいるんだなと思って優しく見守っていただけると幸いです。皆様に愛される作品になるよう努力いたしますので、今後ともご愛読頂ければと思います。




