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投影

作者: miduki

 「一緒に帰ろう。」

 彼女のクラスまで迎えに行く。周りの冷やかした視線の先には、マフラーで表情がよく見えない彼氏と、恥ずかしそうに照れる彼女がいる。格好良さの中に学生らしい純粋さが、彼氏によって演出されているかのようだった。彼氏は、彼女の目の奥をじっと見つめている。他の学生がいる前で手を繋いだり、必要以上のスキンシップはあまり請けが良くはない。友達といるよりも近い間隔ではあり、しかしながら決して当たらない均等な距離を設定し、歩き始める。


 「今日は少し風邪気味なんだよね。」

 「学校来れそう?」

 「学校は休めないから頑張って行く!」

 「無理しないでね。」

 「大丈夫だよ」


 朝のメッセージでやり取りをする。彼女が風邪気味だと知った彼氏は、いつもより少し、家を早く出て、コンビニに立ち寄る。はちみつレモンののど飴と温かいお茶を買って学校へ向かう。彼女のクラスを覗いてみると、まだあまり生徒はいないようだった。自分のクラスに戻り、一限の準備をし、トイレで髪型を整え直す。自転車通学は髪型の最悪の敵となった。鏡を見て違う角度からも入念に確認し、もう一度彼女の元へ向かう。登校時間五分前になり、だいぶ人も増えていた。彼女の席の周りには彼女の友達が集まっていた。クラスに入り、彼女の席でコンビニの袋を渡す。彼女の恥ずかしそうな笑みがマスク越しでも伝わった。彼氏は彼女の目をじっと見つめ、暫くして少し頷いた。周りの友達は茶化すと言うよりも羨ましそうな顔でこちらを見ている。授業が始まるチャイムがなり、ほとんど喋らずに教室を後にする。袋の中に入っていたお茶は完全に冷めてしまっていた。


 クリスマスの時期には、高校生という立場ではあったが、素敵なプランを予定していた。総額三万円もする豪華なものになった。食事とプレゼントと遊園地の料金、全て彼氏が請け負った。彼女はどの時間を切り抜いても笑顔であったと思う。そんな彼女の純粋な目を彼氏は見つめている。ああ、なんて素晴らしいのだろう。彼女も喜んでいたが、彼女の目の奥を覗くたびにそう言った感情に襲われる。クリスマスというイベントを謳歌し、彼女の家まで送り届ける。その日の最後まで彼女の瞳は美しかった。


 冬休みが明けると、彼女がクリスマスに撮った写真やプレゼントを友達に自慢していた。あまり言い過ぎると周りから嫉妬されることもあるが、そんな事はお構いなしだ。

 

 授業を終え、彼女とその友達の集団が廊下に出る。また、彼氏もタイミングよくすれ違う。今日も彼氏は彼女の目の奥を見つめていた。彼女と一通り話すと、彼女の友達も彼氏に話しかけた。その時、彼氏はその友達の目の奥も彼女の瞳と同じようにじっと見つめていた。彼女の友達の瞳にも美しいものが映っていた。

 皆さんは、こんな彼氏どう思いますか?

 男性だったら、お手本のような彼氏に見える方もいますが、逆にちょっとあざといと思ってしまう方もいるのかもしれませんね。逆に女性なら、尽くしてくれる彼氏のように感じる方もいれば、自分にだけの存在であってほしいと思う方もいるかもしれません。怖いのは、まるで彼女のことを見ているかのようで、自分の評価を気にして無意識に演じ、自分自身を見ているときです。そこに愛はあるとは思うのですが、少し歪んでいます。本当に相手を見れていますか。他人に映った自分は、どんな鏡より綺麗に映してしまうのです。

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