天災
「ほら、掴んで」
上から差し出された姉の手を掴む。
軽々と引き揚げられた。
「着いたよ。ほら、どう?この景色」
私は辺りを眺める。
世界を包む一面の星空、赤い彗星。
そして、地上へ落ちてくる星屑。
滅んだ街、どこまでも広がる瓦礫の山。
思わず、口から零れた。
「綺麗」
姉はそんな私を見て笑顔を浮かべる。
「でしょ?幻想的で素敵!」
そんな彼女に、
可哀想なものでも見るような目を向け、言った。
「幻想的、ね。
残念だけど、これが現実だよ。お姉ちゃん。
人間は終わったんだ。逃げないで」
私は急に姉に両肩を掴まれ、驚く。
「ねえ、私の可愛い可愛い妹の睡蓮ちゃん」
「な、なに」
「私の目を見て」
真っ直ぐな目だ。澄み切った目だ。
ちゃんと生きてる。なんで、生きてるんだよ。
私達しか、もういないってのに。
「どう?」
「何が言いたいのか、分からない」
「残念だねえ」
姉は手を離し、ため息をつく。
「私はね、生きたいんだ。最期まで。
この世界が、私が、どんなになっても」
彼女は腰に差す剣の柄に触れる。
「なんで?理解出来ないよ」
「だってさ」
抱きしめられ、囁かれた。
「可愛い妹がいるから」
私は姉の背に手を回し、顔を埋める。
「お姉ちゃん、桜姉ちゃん。
あはは、やっぱり私、死にたくない」
「うんうん、いいよ。姉ちゃんが守ったげる。
私にはね、この名刀政宗があるんだから」
「普通の光線剣じゃん、それ」
私は少しだけ、笑顔になってしまった。
姉が死ぬまで、私は死ねない。
だって、私が死んだら、
桜姉ちゃんも死んじゃうから。