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プロローグ 君の紡ぐ世界
私はただ見たかった。
あの人が紡いでいく心を、世界を。
でも、もう全てが遅かったのだと思う。
何年も積み重なって、塗りつぶされて、刻み込まれ、そうやって溢れ出てきてしまったものはもう止めることはできなかった。
別に恨んでるわけではない。
世界はそういうものだと嫌になるくらい知っているから。
世界の悪意を一番知っているから。
もし願いが叶うのならば。
もしも私の思いが届くのならば。
どうか紡いでみせて欲しい。
私に見せつけて欲しい。
それは何年かかるか分からないけれど、百年だって千年だって待つことにしよう。
それまで私は壊し続ける。
私は否定し続ける。
たとえそれが終焉を導こうとも。
最後になるけれど一言だけ。
——あなたの心が紡ぐ世界が、どうか優しさで溢れますように——