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第86話 嫌な予感

「アルが失踪しただって!!?」


 俺はそう言いながらも、頭の中で、アルについて思い返す。この3週間足らずの間で、俺が寝ている時以外はずっと監視していたはず。


 その時だって、俺に不正の証拠を握られているおかげか大人しかった。

 逃げようとする様子や、誰かの手引きで逃亡の企みなどしている様子は無かった。


 少なくとも、昨日俺が寝る前に領主の館から分身を消した時はアルはそこに居たのだ。


 俺は領主の館に先ほど向かわせた分身を通じて領主の館を隅々まで見て回る。確かにアルは領主の館の何処にも居なかった。


「どこかに出かけているんじゃ無いのか?」


「それはあり得ません! 今日はマキラ・フォー・ラーゲルから闘技大会本戦へ招待する迎えが来ることが決まっておりました。それを差し置いてまでしなければならない事など―。」


 エルスは本当にアルが失踪した理由がわからないようだ。


「アルが自らの不正を糾弾されるのを恐れて逃げ出したというのはどうだ?」


 こう聞いてはみるものの、そもそもの話として、アルの不正がバレる可能性のある筋はすべて俺の分身を駆使してカバーしてある。

 だから、ゼロとは言わないが、アルの不正が他領にバレている可能性はかなり低い。


「確かに私もそれは考えました。ですが、それにしては不可解な点があるのです。」


「不可解な点?」


 俺は首を傾げる。ただ逃げただけでは無いのだろうか?


「はい。アル様が部屋を出た痕跡がないのです。部屋は締め切られたままで、まるで消えたかのように地面にアル様が来ていた服が落ちていたのです。」


 それは確かにおかしい。少なくとも普通に外に出たのでは無いということだ。

 併せて、見事に俺の分身が居ない時間にこの件が起こったということ。俺はとても嫌な予感がした。


「ジンッ! アル様を探せるカッ?」


 俺に向かってベガは言う。


「わかった。とりあえずアル・フォー・ラーゲル内を探してみる。」


 そう言うと俺は精神を集中して分身達を都市内様々なポイントに移動させ、調べてみる。


(まずは大通りだっ! いない。ならば全ての道はどうだ? うーん...。何処にも居ないな。建物の中はどうだ? 民家を除いて行くのは気が進まないが......。)


 俺はそんなことを考えながらも数十分かけて辺りの確認を終える。


「ジン様! どうでしたか?」


 俺は不安そうに尋ねるエルスに首を振る。


「アルはすでにこの都市内にはいない可能性が高い。 俺の捜索には引っかからなかったみたいだ。」



「不味いですね。もうすぐ領主の館に迎えが来るはずです。ジン様! 本当にアル様は何処にも居ないのですか?」


「ああ。少なくとも、すべての建物と通りにアルもアルらしき人物もいなかった。」


 俺の言葉にベガとエルスは困った顔をする。


「どうしましょうか。闘技大会に領主が居ないとなってはこの都市の威信に関わります。なんせ年に一度のお祭りですから。」


「私はどうしようないゾッ。今回も選手として出るからナッ。助けられンッ。」


「分かっております。ですが、今は何とかしてアル様の不在を隠さねばなりません。何か良い案は......。」


 俺はそんな二人を見て一つ提案する。


「なあ、アルのことは一旦急病という事にして誰か代わりの奴が向かうというのは無理なのか?」


「それは出来ません。良くも悪くも、このアル・フォー・ラーゲルは現在の領主であるアル様の力が強すぎたのです。ですから、アル様の代わりが務まる者は誰一人として―。」


 エルスは力なく口ごもる。

 俺はここで一つ腑に落ちたしたことがあった。俺が今も不正の証拠である木版を持ち続けている理由について。


 俺は闘技大会前であるあの時、領主の館でアルに木版を見せた時、この証拠を公には公開しなかった。否、できなかった。俺は密かに気付いていたのだ。この領地にアルの代わりが務まる執政者がいないという事に。


 そして俺はそこまで考えて一つの可能性に思い至る。いや、こうまで状況が整ってくると、それ以外に考えられなかった。

 俺は重大なミスに気付いてしまった―。


「不味いな。」


 俺はそう口にする。


「はい。アル様の代わりがいない以上は―。」


 エルスの言葉を俺は遮る。


「いや、そうじゃない。確かにそれも不味いんだろう。お前達にとっては。だが、それは俺にとっては大した問題じゃない。」


「ならば、ジンッ! 何が不味いのダッ。アル様が闘技大会の直前で消えた事以上に不味いことがあるというのカッ?」


「すまない。ベガ。どうしてもここで話すわけにはいかないんだ。」


 エルスとベガは俺を不可解な物でも見るかのように覗き込んでくる。

 俺はそんな視線など気にも留めず、考えにふける。


 そのまま十分ほど時間が経った時、エルスが口を開く。


「ジン様! そろそろマキラの使者が参る時間です。この辺りで私達は領主の館に戻らせて頂きます。」


 その言葉を聞いた俺は、先程アル探しに巻いた分身に視線を移してゆく。すると、領主の館から離れた、俺たちがこの都市に入った門とは反対方向の門の近くに、人が5人ほどで引いている屋根付きの人力車の様なものが映る。


(なるほど。あれが、マキラ・フォー・ラーゲルの使者か。確かにアルには無い華美さがあるな。)


 俺はそんな事を思いながらも、一つ領主の館へと戻るエルスに尋ねる。


「なあ、俺もその使者と共にマキラへ行くことは出来るか?」




まず謝罪を...。

昨日は更新できず申し訳ありません!

この先の展開を考えた時に筆が止まってしまいまして...。

二日ぶりの更新です。楽しみにしてくださっていた方申し訳ありません。


ここから頑張って立ち止まらずに書き切りたいと思っていますので、気長に待っていただけると、しょた丼としましては嬉しい限りです。


では、第87話でお会いしましょう。


20/12/16

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