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第77話 暴かれる不正

 アルは俺が持ってきた木版を呆然と見つめていた。


「それを渡してくださいと言っても勿論ダメですよね?」


「当然だ。」


「ジンが持つ木版は私を失脚させるには十分な効果を持っています。もしかすれば、懲役にもなるかもしれません。ですが、ずっとこの大陸に居るわけでないジンがそれを使うのは割にあいませんよ? 領主の私の後ろ盾を失うだけでなく、間違いなく騒動になります。」


「だからなんだ? 割に合わなかったら気付いた不正に目をつぶれって言うのか?」


 実はこの事はチサにも言われていた。だが、俺は絶対に不正を見過ごす事はできなかった。例えそれを(あば)くことが、俺にとって不都合であったとしても。


「くっ......、覚悟は決まっているのですね。」


 アルは力なくソファから地面に落ちて膝をつく。

 俺は決して目には見えないアルの生気が抜け出てゆくのが見えた気がした。


 そうしてしばらくした後、アルは力なく俺に向かって言葉を発する。


「では、どうやって......、どうやってそれを手に入れたというのですか。私は貴方がそれを明るみに出した時点で終わりです。教えて頂けませんか?」


「教えてやる義理はないんだが......。まあ、いいか。」


 俺はその場で力なくヘタリ込む、アルを見て酷く同情してしまった。気の毒に思ってしまった。

 今のアルからは初めて会った時のオーラは微塵も感じられなかったのだから。


 俺は話し始める


「そう、あれは―。」


 6日前。そう、あれは闘技大会の翌日の話だった。


「ふああ......!おはようなのじゃ。ジンは昨日闘技大会だったのに起きるのが早いのう。」


 闘技大会予選の当日は疲れで俺とチサはアルから借りている家に帰るや否や眠ってしまっていた。

 当然だが、俺の技を相殺する役だったチサの方が疲れていたのもあって俺の方が一足先に目覚めていた。


「おはよう。チサ。今日は、アルの不正の証拠を抑える必要があってな。今から情報収集をするんだ。」


 そんな俺の言葉にチサは心から不思議そうな顔をして俺に尋ねる。


「不正? アルは何か不正をしたのかの?」


「いや、まだ確定したわけでは無いんだが―。」


 俺はチサに俺が闘技大会予選の開始前にベガから賭けの話を聞いた時に気付いた推測を話す。

 推測と言いながらも俺はこれが間違い無いとは思っている。


「なるほどのう。確かに言われてみればその可能性は高そうじゃ。」


「ああ、だから俺がその証拠を押さえてアルには領主の座を降りるか、それとも責任を取って貰おうとは思っている。」


「じゃが、妾達にとってその行動には利益がなさすぎる。むしろマイナスじゃ。この大陸にずっと留まるわけでは無い以上、放っておいても良いのでは無いかの? 確かに、アルの不正に無断で利用されたことに腹が立つ気持ちはわかるがの。」


 チサの言葉は全くもってその通りだった。

 今ここでアルを領主から下ろしても滞在が面倒になるだけだし、騒動だって起こるだろう。


 だが、俺はその言葉を絶対に認めるわけにはいかなかった。俺は、故郷でゲチスが行った民を蔑ろにする行為をその身をもって知っているのだから。


「チサ、確かに言う通りだ。これを見逃したってこの都市は特に困る事は無いし、俺たちが滞在している間不自由する事はないだろう。」


 俺は言葉を切る。チサは俺がこれから言う事はきっと分かっているだろう。

 チサは今となっては俺の過去を知る唯一の存在なのだから。


 俺が言葉を切ったにもかかわらず、チサは俺の次の言葉をじっと待っていた。


「だけどな。俺は見逃せない。民を自分の私欲の為に蔑ろになんかしちゃいけないんだ。俺の故郷程じゃないにしろ、この不正に泣くかもしれない人がいるのなら、俺は止めなきゃいけないんだ。」


 俺は言葉を紡ぐ。


「ふふっ。ジンは相変わらずじゃの。ジンならそう言うと思っておったのじゃ。好きな様ににすれば良いのじゃ。ジンが困ったらいつだって妾が助けてやるからの。」


「ありがとう、チサ。」


 俺はちょっと泣きそうになるがここは堪える。

 そうして、俺は技能を発動する。


「実像分身」


 俺は10人程、分身を作成する。


「気配遮断」


 俺は作り出した分身に気配遮断をかける。


「ほう、なるほどのう。ジンが行くのかと思ったが、そう言うわけではないのじゃな?」


「ああ、アルはかなり用心深いからな。俺やチサがここから離れたらすぐにバレるだろう。常に俺たちには監視をつけるくらいだしな。」


 そうして俺はチサに外に一緒に出るように言う。


 実像分身だからこそ、当然ながら、何かを透過したりは出来ない。だから、外に分身を出すときだけは、俺たちも一緒に外に出る必要があった。


「のう、ジン。何故実像の方を使ったのじゃ? 虚像の方が物体を透過できるから都合が良いのではないかの?」


「いや、それがそう便利な物でもないんだ。虚像の場合、感覚器官の共有や、証拠品を持ち運ぶことができない。だから、虚像分身では、俺が近くにいないと使い物にならないんだ。」


「ふむ。そういうものなのじゃな。」


 そんな会話をしながら外に出た俺たちは、外で、俺たちの護衛兼監視役のアルの部下の兵に挨拶すると、家の庭でチサと適当に雪遊びをする。この間に分身を誰にも気付かれることなく領主の館近辺に配備してゆく。


 そして一通り配備が終わった後は、チサと一緒に家でご飯を食べたり、遊んで過ごした。

 そして俺は寝ずに分身を操る生活に入る。寝たら技能が解除されてしまうから。


 そして、4日前、遂に俺はアルが不正を行う瞬間を捉える事に成功した―。







昨日投稿出来ず申し訳ありません!


活動報告でも書いたのですが、2話分、約5000字分が意図せぬ形で消えてしまい、投稿することができませんでした...。


頑張って書き直しておりますので、楽しみにしていただければ嬉しいです!


では第78話でお会いしましょう!


20/12/10

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