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第75話 契約と賞金

 俺とチサは、予選終了から1週間後、この大陸に来て4度目となる領主の館の応接間へと訪れていた。ただ、今回はベガはいない。


 それもそのはずで、今回は勝者である俺とチサへの配当の受け取りと闘技大会本戦の概要の説明が領主の館への訪問の目的であった。


 金銭が絡むために流石の監視役のベガであってもともに話を聞くわけにもいかず、この時だけは別行動であった。


 だが、実は今日の俺達には別の目的もあった。


 それを最初に話すと今回の領主の館への訪問の目的が果たされない可能性があったので最後に切り出そうとチサとは話をつけてある。



 応接間で待っている俺たちの前に、この都市の領主であるアルがやってくる。


「ジン、チサ。ようこそ。何度も呼び出してすまないね。それから、闘技大会予選突破おめでとう。会場で見させて貰ったが、最後のジンの一撃は圧倒的でしたね。」


「ああ、実際チサがいなければあの技を使うことはなかった。チサが皆が死なない程度に相殺してくれたからな。」


 俺はひとまず、別の目的の件で胸に一物あるのは置いておき、無難に話を進めることにする。


「相殺されてあの威力でしたか。全く気づきませんでしたよ......。まさかあそこまでの一撃が実は本当の威力じゃなかったとは。」


「妾も少し驚いたのじゃ。結局、皆にジンの斬撃が当たる直前と、皆が闘技場の壁にぶつかる瞬間の二度、衝撃を緩和してギリギリといったところじゃった。ジンもあんなに魔力を込めずとも十分じゃったろうに。」


 チサに咎められるが、間違ってもあの時、アルの不正に気付いて少しでも困らせてやろうと思ったなんて風には言えない。今、口に出せば、闘技大会のことや、折角貰える配当が貰えなくなるからね。


「まあ、俺にも色々と思うところがあったんだよ。」


「それはあの大ブーイングの件かい?」


「そういうことにしておいてくれ。俺も少し気が立っていた。」


「全く。ジンもまだまだ子どもじゃの。もうすぐ23なんだから少しは周りに配慮をすべきじゃと思うぞ。」


 うっ。チサが痛いところをついてくるな。いくら俺があの時何を思っていたかを知っているとは言え、それは酷いぞ。チサ。

 だが俺はチサの言葉を否定することも出来ず、


「次は気をつける。」


 そういって周囲から笑われることとなる。納得のいかない思いを抱きながらもひとしきり俺が笑われた後、話は進み始める。


「さて、改めて闘技大会本戦出場決定おめでとう。ただ、今大会は3人しかアル・フォー・ラーゲルからは選出されなかったから、あの後色々と大変だったよ。」


「それはすまなかった。」


「妾がもう少し衝撃を抑えられていればもう1人や2人は立てていたかもしれぬのじゃ。」


「いやいやいや! 君達は何も悪くないから謝らないでください。こちらとしては今年は死者無しで終えられてそれだけで十分感謝してます。大抵の年は死者が出てしまい、そこで忙しくなる分が、今年は無かったですから。」


「それで、足りない2人分の枠はどうなるんだ?」


「結論から言えば、そこは不戦勝となります。その分ウチの都市の取り分が減ってしまうのは少々辛いですが、仕方ないですね。」


「取り分?」


「ええ。闘技大会本戦も今回のように賭けがあるのですが、そこでの儲けと、それから観客達の観戦料が出場選手の人数比で各都市に割り振られるのです。」


「つまり今年は3人だから、いつもよりも少ない額になるってわけか。」


「ええ。困ったことに。なので、来年はかなり都市の運営予算が減ることになりそうで、今から頭を抱えているところなのです。」


 そう言うアルは、何も知らない人からすれば、自領の為に頭を悩ます良き領主に見えるのだろう。だが今の俺にとっては白々しい言葉にしか聞こえなかった。


「それは妾達には関係ないからの。恐らく来年はこの大陸にはおらぬであろうしの。」


 チサが冷たく言い放つ。


「そこは何とかしますよ。領主の手腕にかけても。貴方達が他の大陸に行っても私が領主であることに変わりは無いのですから。」


 アルはにこやかに笑ってそう言うと、話題を転換する。


「さて、では闘技大会本戦の内容に入る前にまずは配当です。エルス! ギュジットを呼んでください。」


「アル様、かしこまりました。」


 アルは、部屋の隅で控えていたエルスを呼ぶと、ギュジットという者を呼びにいかせる。


「ギュジットって誰だ?」


 実は俺は闘技大会が終わった後の1週間でギュジットという男については調べ尽くしているのだが、ここは知らない体でいた方が自然なので、敢えて聞いてみる。


「ギュジットは今回の闘技大会における資金運用の管理を任せています。彼はこの手のスペシャリストですからね。彼が居れば闘技大会の運営がスムーズに進むのでとても助かっています。」


「なるほど。確かにアル1人で闘技大会の運営は出来ないよな。そんな有能な奴がいたのか。」


 そんな風に会話をしていると、エルスがギュジットを連れてやってくる。

 この男、体型はりんご......いや、風船と言った方が正しいか。彼は歩くだけでも肩で息をするほどには運動不足だった。


「ハァハァ、これはこれは。ジン様とチサ様ですね。今回は、闘技大会予選突破おめでとうございます。ワタクシ、今回のお二方の配当金の受渡しを担当しますギュジットと申します。この場だけ名前を覚えて頂ければ恐縮でございます。ハァハァ。」


 ギュジットは歩いてきた時もそうだったが、喋りながらもずっと息切れをしていた。


 その後、ギュジットは紙とペンを取り出すと、俺達の倒した相手が何番人気で、配当額がいくらかと言うことを、その鈍く動きにくそうな見た目からは想像できぬほどのスピードで書き記してゆく。


「ハァハァ。と言うことで、ジン様は2468万5665ラーゲル、チサ様は83万6354ラーゲルの配当金、更に、闘技大会予選突破賞金として、1000万ラーゲル、合わせまして、チサ様が、1083万6354ラーゲル、ジン様は3468万5665ラーゲルをお支払い致します。こちらご確認下さい。ハァハァ。」


 俺とチサはギュジットから、紙幣と大量のコインが入った袋を受け取るとその金額を確認する。30分ほどかけて俺たちはその金額に間違いが無いこと確認してチサの袋と一緒にインベントリへと収納する。


「確かに受け取った。」


「ハァハァ。ではこちらの木版に手を置いてください。ここでこの契約が履行されたことを証明する控えを作成します。二枚作って片方はワタクシ、もう片方はジン様とチサ様が持つ物となります。ハァハァ。」


(ギュジット、お前この三十分ずっと座って休憩してたのになんでまだ息切れを...。気にしたら負けか。)


 俺はそんなことを思いながら、木版に手を置く。

 それを確認した時、ギュジットが技能を発動する言葉を発する。


「我らは、この木版に契約の履行を示す者なり。ここにジンへ闘技大会予選における配当金と勝利報酬である3468万5665ラーゲルの受渡しを完了したことの印を刻む。」


 その後チサにも同様の方法を取り、俺達は木版を受け取る。


「ハァハァ。この木版はワタクシの技能:契約によって今の取引が無事に履行されたことを証明します。この木版に向かって、今のワタクシの様に、『我は、この木版の正当なる所有者なり。この木版に記された印を読み上げよ。』と命じますと、その契約内容を木版が音声として伝えてくれます。ハァハァ。」


「なるほどのう。一つ聞いても良いかの?」


 チサが尋ねる。


「ハァハァ。何でしょう?」


「この技能:契約というのはどれほどの強制力があるのじゃ?」


「ハァハァ。ワタクシの場合ですと、両者が完全に同意して、その内容について契約した印を2つ用意するのですが、この二つの印のどちらかが残っている限りその契約はワタクシが死なぬ限り永遠に残り続けます。それは如何なる契約であってもです。ハァハァ。」


「なるほどのう。それならば、詐欺などもできぬわけじゃ。妾、配当や賭け金で詐欺が起こらぬのかと思うておったのじゃが、そんなカラクリがあったのじゃな。」


 その後、ギュジットがエルスに連れられてこの場を去り、闘技大会本戦の内容についての話に移ってゆくのだった。

遅くなりました〜

(ん?昨日も2話投稿してたはず......いつから感覚狂ったんだ。)


本当は昨日中に投稿したかったのですが、今話結構書き上げるのに時間がかかりまして、日付変わってしまいました。更新楽しみにしてた皆様申し訳ないです。今日は3話投稿できるように頑張ってみます。(出来るとは言ってない)


第75話は内容的に切れなかったので増量してお届けいたしました!


ではでは第76話もよろしくお願いします〜。


20/12/8

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