第70話 絵合わせ
チサと雪遊びをした次の日、俺とチサとベガは3度目の領主の館への訪問となった。
領主の館へと向かう途中、俺たちを見る人々からこんな声が聞こえてくる。
「あら!あの子達また領主様の館へと向かっているわ。」
「聞いた話では、街の外で爆撃したらしいぞ。ここの領主様を脅して、金を無心しているとか。」
「もし、あいつらがそんな悪人なら、領主様が自由に街中を歩かせたりはしねぇだろう。俺はあの人の威圧を受けたことがあるが、気付いたら気を失っていたよ。」
「それは分からないわよ。この辺りで見たことが無い格好してるし、もしかしたらこの大陸の外からやってきたのかも。」
「そんな筈ないさ!第一どうやって外から来られるのさ。船にしたってそうだが、今まで新天地へ旅立った船で一隻でも戻ってきたか?それなのにあんな小さい子らで海を渡れるわけがないだろう。」
「それはそうだけど......。」
毎日のように足繁く領主の館へと通う俺たち一向は街中ではいい意味でも......いや、圧倒的に悪い意味で有名人になりつつあった。中には俺たちの存在について核心をつくような話もあり一瞬ヒヤッとした。
それでも、ベガの存在と俺たちが領主の館へと向かっていたのもあって街の人々は直接俺やチサに接触してくることは無かった。
そして領主の館に着き、俺とベガはエルスに促される間もなく、衣装室へと向かう。3度目ともなればもう慣れたものだった。
こうして俺たちは応接間へと案内されて、アルと3日連続で対面する。
「貴方達、今回は何をやらかしたのです? 今朝門兵から連絡が来ましたよ。外の森の入り口手前で、まるで爆撃が起こったかのような惨状が広がっていたと。ベガは気絶していて、その時に起こった事は覚えていないと言いますし。」
「そう言われてもなあ。俺たちは全力で遊んでいただけなんだけど。なあ。チサ?」
「ああ、そうじゃの。アレはとっても楽しかったのじゃ。またやりたいのう。」
「ちょっと待ってください。ええっと。本当に遊びで爆撃されたかのような風になるのですか?」
俺たちの反応にアルは、思わず困った顔をする。
「全力で遊んだら仕方ないよな?チサ。」
「うむ。遊びとは常に全力だからこそ楽しいのじゃ。わざわざ都市の外まで行ったのだからよいじゃろう?」
「いや!?普通は遊びでそんなことにはなりませんし......。はあ。まあ仕方ないのかもしれませんね。大陸を渡る力を持つ者が普通という定規で測れる筈もありませんし、貴方達が嘘を言っているわけでもなさそうですしね。」
アルは諦めたような表情をする。
どうやら、都市から出れば全力で遊んで良いと思っていた俺は甘かったらしい。
「貴方達に悪気がなかった事はわかりました。目を見る限り何か企んでいるというわけではなく、純粋に遊んでいただけみたいですし。今回は水に流しますが、もう絶対に全力で遊んじゃダメですよ!」
「分かった。」
「わかったのじゃ。」
俺とチサは領主の言葉に素直に返事を返す。
「では引き続き、ベガには彼らの護衛兼監視をお願いします。彼らはこれでも大切な客人でありますから、住民に無用に絡まれるわけにはいきませんからね。」
「アル様ッ。了解しましたッ。」
「では、一つ、私達の大陸で室内遊戯として親しまれている絵合わせをプレゼントさせて頂きますね。これなら問題なく遊べる筈です。」
アルは裏面は全て同じ模様が、表は様々な絵柄の入った紙束を2つ俺たちに渡す。
「私達の大陸では、この紙束を裏向きにしてお互いが交互に絵柄を裏返し、絵柄が合えばその絵柄が自分のものとなり、合わなければ裏返して元に戻す。最後の組が揃った時、手持ちの枚数が多い方が勝ちと言った風に遊びます。」
「なるほどの! それは面白そうなのじゃ! 家に帰ったら早速やってみるのじゃ。」
「遊び方はこれだけではありません。他にも考えようによっては様々な遊び方がこの紙束には含まれています。私からこれ以上説明するのは野暮というものでしょう。貴方達で考えて見つけてみてくださいね。」
「ありがとう。アル。」
俺は礼を言う。正直なところ俺からすればこうしてチサの笑顔が見られるだけでとても心が暖かくなるのだ。
領主の館でそんなやりとりがあった後、俺たちは解放される。この後、俺たちは、そのまま借りている家へと戻る。
まだ時間は昼過ぎではあったので、ベガを誘ってさっきアルから貰った絵合わせで遊ぶことにする。
ただ、ここでベガは想像以上の強さを発揮する。この大陸由来の遊びであるがゆえに、ほとんどの絵柄の生き物が白いのだ。
よって俺とチサはそれらの絵柄を覚えるのに苦戦する。だが、ベガはそんなことなどお構い無しに絵柄を合わせ続ける。
「そこヲッ! はイッ! よシッ! 今回も私の勝ちだナッ。」
「ぐぬぬ〜強いのじゃ! 次は負けないのじゃ!」
チサが悔しさを声に出す。
「それそれそレッ! 残念だったナッ。どうやら今回も私の勝ちだナッ。」
「くそっ。その馬面で言われると余計に腹立つぜ...。」
俺もまたこうして悔しさを滲ませる。
この後20回ほどこんなやり取りを繰り返して、一度も勝てず、俺たちは呆然としていた。
「結局一回も勝てなかったのじゃ......。」
「くそっ。こんな馬面に記憶力で負けるなんて。」
「ジンッ。それは失礼であろウッ。だが、そう言いたくなる気はわかるゾッ。再戦はいつでもいいからナッ。ではもう夜ダッ。私は帰らせて頂こウッ。」
完璧な勝ち逃げだがこればかりは仕方ない。ベガだっていくら監視といえども、夜は寝るために家に帰らねばならない。流石のベガといえども俺のように眠らずに動くと言う事は出来ないのだ。
そんなわけで夜の間は外で俺たちになるべく気付かれない位置にベガの代わりの監視がついていた。
こうして、闘技大会までの間、俺とチサは絵合わせにのめり込み、ベガに挑み続けるも結局一度も勝つ事は出来なかったのだった。
1万字チャレンジ3話目投稿です。今日中にもう1話、気合で書いていこうと思います!
さて、話は変わって、祝!第70話でした。次の話からこの大陸の主題とも言える闘技大会に移って参ります!是非是非お楽しみくださいね。
話は変わりますが、第3章入ってから、宣伝はもういいかなと思ってしていなかったのですが、これからは10話置きくらいにさせて貰おうかなと思っております。
というわけで!
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では第71話執筆頑張ります。




