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第60話 ねずみ返しの岩壁

「これはまた......。どうやって中に入ればいいんだ?」


俺とチサは大陸のすぐ側までやってきていた。

辺り一面に雪がしんしんと舞っており、海の上にまで雪が積もり、そこはまるで、夢の中の銀世界といった様相だった。


俺は上半身裸なので、寒くて寒くて仕方ないのだ。のだが......不死身のお陰か、これ以上の寒さを経験したからか、なんとか平静を保てるレベルではあった。


そんな中俺たちは、岩の大陸へとやってきたわけなのだ。勿論チサは寒さなど微塵も感じさせず、


「わあ!綺麗なのじゃ。冷たいのじゃ!白いのじゃ!これが雪というものかの?妾初めて見たのじゃ!」


大陸に近づくにつれてこんな風にはしゃぎまくっていた。そんなチサを見て、俺は微笑ましい気持ちになっていた。


だが、大陸に近付いて見てみればその岩はねずみ返しのような形状になっていた。長い月日をかけて波で削られて出来たのだろう。下手な崖の何倍も登りづらい。そんな雰囲気を感じられた。


「チサ、どうすればいいと思う?」


「妾の魔力がもてば、この大陸を一周して、入れる場所が無いか探しても良かったんじゃがのう。まだもうしばらくはもつが、大陸一周は流石に無理じゃ。」


「仕方ない...。これを登るしかないか。」


「それは良いが、どうやって登るのじゃ?」


俺は考える。


(黒影切を岩へ突き刺して登るのはアリだな。だが、どう頑張ってもあのねずみ返しの部分で海へと真っ逆さまだよなあ。)


今の俺の手持ちは、黒影切、チサと一緒に取った海の魚とモンスター、手作りの釣竿、番の指輪、ブラウンエルフの街にある家の鍵代わりの腕輪、縫製様の糸、釣竿に使えなかった木の枝。


いくら考えても登る手段は思いつかなかった。


「あのネズミ返しさえ無ければなあ。」


俺は考えながらも呟く


「のう、ジンよ。あのネズミ返しの部分さえ無ければ、岩の上まで登れるかの?」


俺の呟きを聞いたのか、チサが俺へと聞いてくる。


「ん?ちょっと待ってくれ。試したいことがある。黒影切!」


俺の両手に2本の双刀が現れる。俺は、手を伸ばして、その刀を岩壁に向けて平行に差し込む。

スッ......。俺は安堵する。どうやら黒影切が刺さらぬほど硬いというわけでは無かったようだ。


次に俺はチサに肩に座っている状態から、背中へと回って貰う。そして黒影切に少しずつ体重をかけてゆき、俺の体が宙に浮く。


黒影切は折れる気配さえなく俺とチサの体重を支えていた。これなら、問題なさそうだ。


俺は黒影切を抜いて、チサの作った水陣の上に再度着地する。そして俺の肩の上に座り直したチサへと言う。


「あのねずみ返しがなければ登れるぞ。」


「なら、少し派手になるが、あのねずみ返しを破壊しても構わんかの?」


「うーん......。まあ仕方ないだろう。このまま泳いで大陸を......。やっぱ無しだ!この雪の積もる海の中を大陸一周寒中水泳とかどんな罰ゲームだよ!!!」


俺はそれを想像しただけで今までこの寒気の中でも何とか震えずに耐えていた俺の体が震えだす。


「では、ジン。妾もジンに泳いで大陸を巡れと言うほど鬼ではないでの。少々騒ぎになるかもしれぬが、派手にゆくのじゃ!ジンも力を貸してくれるかの? ちょっと耳を貸すのじゃ。」


チサはそういうと俺に耳打ちする。周りに人や他の生物の気配があるわけではないのだ。ないのだが、チサは俺の耳元で(ささや)く。


「ああ、なるほど。たしかにそれならいけるかもしれないね。」


「うむ!では打ち合わせ通りに行こうか。」


「水竜天女の法衣」


「水波・竜水樹!」


チサが体中に流れる水でできた衣を纏い頭には可愛らしいティアラが乗り、俺の肩の上でバランスを崩さずに立ち、チサの持つ大技を放つ。


水でできた竜の衝撃波がねずみ返しへと向かって放たれる。


「黒影切!」


「黒・ジン!」


俺もそれに呼応して、真っ黒に染まった斬撃をチサが放った水竜へと纏わせるように放つ。


すると、水色の竜が漆黒の鎧甲冑を纏ったかの如き見た目となり、竜が生き物のように咆哮を上げる


「ガアアアアアアアアア!!!」


その瞬間俺とチサは同時にその技の名を叫ぶ。


「合技!黒水竜・ジン!」

「合技!黒水竜・ジン!」


頭の中に浮かんだ言葉を叫んだその時、岩の上にあったねずみ返しは消し飛び、大きく抉れていた。そして俺たちの放った竜は天高く登りやがて霧散した。


「ぎゃおおおおおおおおす。これはイッタアアアアインの!」


それと同時にこの岩壁の上で奇妙な悲鳴が響き渡るのが聞こえた。


「チサ......。これはちょっとやりすぎたかもしれない。」


「うむ。妾もそう思うのじゃ。」


俺は改めてチサを肩から背中に移動させて背負う。覚悟を決めて大きく抉れてしまった岩壁を黒影切を刺しながら登ってゆく。


途中から、抜くのが面倒になって来たので、片方から手を離すたびに黒影切の名を呼びながら登っていった。黒影切には「呼応」という能力があるから、呼ぶだけで俺の手へと戻ってくる性質を利用したのだ。


「黒影切」

「黒影切」

「黒影切」

「黒影切」


「のう、ジンよ、そっちの方が楽なのは分かるがの、聞かされる方からすればちょっと怖いのじゃ...。」


俺の体がピクリと硬直した。


「何......? そうか、怖いのか。」


チサから指摘を受け、俺はまた元の登り方に戻す。チサに怖いと言われた時、心にズッシリとしたダメージを受けて、いくら楽でもあの方法を俺はもう取れなくなってしまった。


ザク、ザク、ザク......。


淡々と俺はチサを背負って岩壁を登ってゆく。そして頂上へと手を掛けた時、


「うおおおおおおお!!??」


「おお??ジンどうし......なんじゃあああああ!!??」


俺たちは突然目前に現れた馬面に思わず、岩壁から腕を離しそうになるのだった。



というわけで祝!60話です!

今日メンテってこと完全に失念してまして、投稿が遅れることとなりました。申し訳ありません...。


今日今から頑張ってもう1話書こうと思いますので、間に合えば、夜に投稿します!

覗いてやってください。


あと、勝手になろうランキングとやらを始めてみたので、気が向いたら、下へスクロールして、タップして貰えればと思います。


では第61話お楽しみに〜


20/12/2

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