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第57話 はじめての海釣り

 俺達は太陽の照りつける海の上をとりあえず北へと向かっていた。


 この世界は世界法によって貿易そのものが完全に禁止されているので、別の大陸へ向かうものも測量することもなかった。よって航海図の類も存在しないためどう進めば、他の大陸に行き着くのか、全く分からなかった。


 森の大陸はチサの行動範囲であったが故にたどり着くことができたが、他の大陸はそう簡単にはいかないのだ。勿論、キラークィにも聞いては見たが、知らないと言われただけだった。


 俺は首長竜の背中でチサと並んで座り辺り一面に広がる海を眺めていた。


「なあチサ、釣りやってみないか?」


 俺は不意にそんなことを思いチサに尋ねる。


「釣り?それはどう言うものじゃ?」


 俺はチサに言う。


「木の枝みたいに細長い棒の先に糸を結びつけて、その糸の先に餌と、それからJ字に湾曲させた針をつけるんだ。後は魚が食いついたら、その針が魚の口に引っかかって、取れなくなるから、その魚を引き上げる感じかな。」


「おお、それは面白そうじゃの!次の大陸に着くまでの余興としては良いのう。だが、釣りの道具どれほど集まっておるのじゃ?」


「棒は大陸を出る前にかなり拾ったからな。とりあえず2mくらいの木の枝を使おうと思う。糸はブラウンエルフの服飾店でフォレストアント討伐のお礼にもらったけど...。」


「けどどうしたのじゃ?」


「針と餌が無いんだ。」


「ふむ。つまりそれらは自分で調達するしかないのじゃな。」


「そういうことだ。チサ頼めるか?頑丈な角か骨を持つ魚と、餌にする魚が欲しい。」


「うむ。わかったのじゃ!ではジンは妾の胃の中へ移動するのじゃ。心当たりがあるでの。飲み込むから仕留めるのは任せたからの。」


 そんなわけで、俺はチサと共に胃の中へと移動する。相性の問題なのか、海の魔物や生物達にとって、チサの水系の攻撃は効きが悪いのだ。

 よって俺が倒すのだ。チサは通常であれば、丸呑みからの、胃酸の海への突き落としで全て終わらせてしまうからね...。


 そして俺達が首長竜の背中から首長竜の中に入った時、首長竜はその深紅の巨体を器用に操り海の中へと潜っていった。


「ジンくるのじゃ!!」


 そうチサが叫ぶのを聞いて俺は身構える。


 しばらくすると、まずは第一陣とでも言うべきだろうか。15〜30cm程の小魚の群れが胃の中へ入り込んでくる。


 俺はまだ慣れない黒影切を振るい、魚達のエラを突き刺し、切り裂き、絞めてゆく。そして絞めたものから順にインベントリへと収納する。


 いくらか絞めきれなかったものが胃酸の海へと落ちていったが、それは全く問題無い。


「さあ!ジン!ここからが本命なのじゃ!」


 そして胃の中へ物凄いゴツい見た目の生物が現れる。ステータスウィンドゥが表示される。つまり、モンスターだ。


 名前:イッカクグマ

 lv:52

 体力:170/170

 総合:D


 このモンスター俺の注文通りで、1mはあろうかという巨大なノコギリ状のツノを持っていた。顔は熊なのだが、足は水中生活に適応するためだろうか?4本全てがヒレとなっていた


「グアアアアアアアアア!!」


 俺はそんな威嚇を無視して気配遮断を使う。


「グアア!!??」


 いきなり目の前の敵が消えたことに戸惑いを隠せないイッカクグマ。

 俺はその側面へと移動すると、黒影切を構え、その首に向かって一つの技を使う。


「黒・ジン」


 その瞬間、イッカクグマの首が宙を舞う。俺はイッカクグマが死に気付くことも無いままに討ち取ることに成功したのだった。


 この後、首長竜が地上に戻ったことを確認してから、俺たちは地上に出た。これから釣り竿を作成するのだ。勿論手作りだから簡易版だけどね。


「チサここにある木の枝を切り揃えてくれるか?」


「わかったのじゃ!」


 そういうとチサは自分の手に水を纏わせてスパスパと細かい枝を切り落とし、木の皮を剥いでゆく。


 俺はそんなチサの手際に感心しながらも、先ほど倒したイッカクグマの角を使い、角を切り分けて、黒影切でJ字に近い形になるように削ってゆく。


 こうして3日ほど、チサと2人で釣り竿作りに全力を注ぐ。こうして、不格好ながらも釣り竿を10本ほど完成させることに成功した。


「できたー!」


「出来たのじゃ!」


 俺たちは俺の知識だけを頼りに釣り竿を完成させる。そして糸の先に着いた針の先にとりあえずぶつ切りにした小魚を餌に取り付ける。勿論チサの針にもつけてやる。


 こうして釣り竿をしならせ俺は綺麗に糸を飛ばした。のだが......。


「あー。絡まったのじゃ。ジン助けて欲しいのじゃ〜。」


 俺の真似をして釣り竿をしならせ糸を飛ばそうとしたチサは見事に糸を釣り竿に絡めてしまっていた。俺は俺の釣り糸を回収すると釣り竿を置いてチサを手伝う。


「あーそうか。これ慣れないと難しいよなあ。仕方ない。チサ!一緒にやろうか。」


「うう......。すまんのじゃ。でもジンに教えて貰いながら釣りをするのも悪くないの。」


 そんなわけで俺はチサへと釣りを教えてゆく。ただ俺は感覚で釣りをやっていた為、結局釣り糸を投げる姿を見せてチサのどの辺が悪いのかを指摘するということしか出来ず、チサが綺麗に投げられるようになる頃には日が沈んでいた。


「ジン、教えて貰って悪いのじゃが、教えるの下手じゃの。まあ、これはこれで楽しかったからよしとするかの!」


「チサ......。ごめん。」


 俺は謝るしか無かった。


 結局、釣り竿が完成して初日の釣りは釣果無しのまま終わったので、チサに獲物を取って貰いそれを狩って食べた。勿論生色である。


 ただ、黒影切のお陰で、鱗や分厚い皮を食べなくても良くなったので、生であっても魚を美味しく戴けるようになったのは感謝しかない。


 チサはどうしてるかって?勿論丸呑みである。大きな魚ならば噛み切ってやはり丸呑み。


「うむ。やはり魚は生でも十分に旨いのじゃ!」


 鱗や皮をも美味しそうに食べるその姿はとても羨ましい限りだ。分体であっても首長竜は首長竜なのだと俺はそう思うことにした。


 明日は魚が釣れるといいな。そう思いながら、食事を終えた俺たちは、首長竜の胃の中で眠りにつくのだった。

というわけで、次の大陸に着くまでの繋ぎで釣りをやってみました。作者は釣りというものを小学校の頃にじいちゃんに連れて行って貰った数回程度しかも磯釣りしかやったことがないんですよねぇ。

いつか海釣りも人生に一度はやってみたいなあとそう思いながら書いた57話でした!


第58話もよろしくお願いします!


20/12/1

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