第36話 チサ奪還戦①
そうして時はジンがチサの捕まる台座を確認した時へと戻る。
俺はチサの姿を見て安堵すると同時に駆け出していた。本能的とも言える部分でチサのことを感じ取ってはいたものの、やはりチサの姿を見ると俺は早く無事を確認しなければいけないとそして一刻も早く奪還しなければいけないとも。
(待ってろよ....チサ!今助けるから....!)
俺は心の中でそう呟くや否や、気配遮断で急速にチサの捕まる台座を目指す。
チサの捕まる台座の近くには一人の何処か疲れきった様な男がいたのだがそんなことは関係ない。
俺は気配遮断でチサに近づく。
(チサ....!チサァァァァァァ....!)
そうして台座まで後一歩というところで、俺は全身に物凄い衝撃を感じると同時に吹き飛ばされていた。
「は...?ぐあああああああああああああああ!!!」
俺は台座から遠ざかる様に吹き飛ばされ、この空間の壁に叩きつけられる。
ドォォォン..!!ガラガラガラガラ......
壁に叩きつけられ、その衝撃で崩れ落ちた土砂が俺に降りかかる。
俺は壁に叩きつけられて漸く、俺がチサを目にしたことで冷静さを失っていた事実に気づく。
が、時すでに遅し。トリスとチサの近くに居た男に存在を知られてしまう。どうやら気配遮断も解けてしまった様だ。
「な.....何が起こった!!?」
トリスは急に発動した、台座を護る為にあいつらから譲り受けた衝撃波のトラップが発動し、壁に叩きつけられている、見た目15くらいの少年の姿が急に出現していることに驚きを隠せなかった。
「まさか...!この少年は、さっき報告があった例の人物だとでも言うのか...?」
「おやおや....勘弁してくださいよ〜トリスの旦那!何跡つけられちゃってるんですか!ここは誰も入れちゃいけない場所なんですよ???ここを取られたら、俺達は全滅しちまうじゃねぇですかい。今のを受けて生きていられるとは思いませんが...敵が馬鹿で良かったですよ。」
チサの近くに居た男。そうバッツは言う。
「すまんバッツ。まだ村の外で待って貰っているとのことだったから、時間稼ぎをさせている間に俺もここへ来て万が一に備えた方が良いと判断した。まさか既に俺の跡をしかも俺には全く悟らせずについてくるとは思わなかった....!」
トリスは予定外の事で、慌ててバッツに謝罪しつつも少年へと向き直る。バッツもまたトリスを責めるのをやめて少年が居た方へと目を向ける。
「......!!!!!??????」
2人は同時に声にならない驚きを浮かべる。
そこにはあれほどの衝撃を真正面から受けてなお、立ち上がる少年の姿があった。
俺は直ぐにでも立ち上がることは出来た。今のトラップも普通ならば軽く即死レベルの衝撃はあったが、不死身と自動回復の技能を持つ俺にとってはまるで取るに足らない攻撃だった。
バッツの言うことを聞いた俺は思う。
(ここに来た時から思うが、時々ここの見張りやトリスとやらが口にするあいつらってのは一体なんなんだ?)
俺はそう思いながらも立ち上がる。
そうしてゆっくりと動き始める。
2人はそんな俺に気付いて信じられないものを見た様な驚愕の表情を浮かべている。
あのゲチスだって、深海の高圧だって俺を殺しきることはできなかったのだ。今更こんなトラップのひとつやふたつ、どうということはない。
俺は笑みを浮かべながら2人へと告げる。
「お前ら、チサに手を出した覚悟はできてるんだよね?」
その笑みは重圧となって目の前に居る2人へとのし掛かる。得体のしれない、不気味でありながら自分よりも圧倒的に強いと感じられる重圧を受けたトリスはそれに耐えられずに走り出す。
「ト....トリスの旦那ぁぁぁぁ!今飛びたしたらその少年の思う壺ですよ!」
バッツが叫ぶが一度走り出したトリスの足はもう止まらない。トリスは腰から鋭利に加工された木製の長剣を抜くと俺へと走り出した勢いそのままに斬りかかる。
(これは凄いな。木製であるのが確かにわかるのに、これで斬られたらタダじゃ済まなそうだ。)
一度冷静になった俺の頭は斬りかかるトリスを見ながらそんな風に思っていた。
「虚像分身」
俺はトリスが斬りかかる直前、技を発動する。確かに斬った筈なのに手に感触がなく、斬った相手がブレて消えてしまったことにトリスの頭は困惑する。
「何だと....?????」
その一瞬の隙がトリスにとって致命傷だった。
ブチッ!!
周囲に何かが切れた音が響き渡る。
「ぐああああああああああああああ....!??」
その瞬間、トリスは急に足から走るこれまで体感したことの無い急激な痛みに悲鳴をあげる。
そうして膝を突きながら振り返ると、そこには1mほどの木の枝をふり抜いたジンの姿があったのだった。
虚像分身で易々とトリスの攻撃を躱した俺は気絶させると情報が聞き出せなくなると思った。
なんせ俺やチサはこの大陸のことを何も知らない筈なのだから。
そう思い至り、インベントリから拾っておいた木の枝の中でもよりしなやかな枝を選んでトリスの背後へと回る。
トリスは木で出来た鎧は着ていたもののレガースのような足のスネや腱を守る為の装備はしていなかった。動きやすさを重視した為だろう。そんなわけで俺は木の枝をトリスの腱の部分へと背後から一閃する。
こうしてトリスは両足の腱を切られ、倒れる。意識はあるがもう自分の意思で立つことはできないだろう。誰かの支えがあれば別だろうが。
そんなトリスを見て俺は瞬時にトリスの握っていた長剣とトリスの持つ袋を奪い取る。
「なっ......!返せ....ち...ちくしょう。」
トリスは呻き声をあげるもそれは俺の知るところではない。意識を残したからには、投擲や罠の類を仕掛けられても厄介なわけで。俺は無情にもトリスの持ち物をインベントリへと投げ込む。
「俺の剣と袋が....。」
「大人しくしてたら後で返してあげるから。」
俺は悲痛な顔をするトリスにそう言うと、台座へと向き直る。冷静になって見れば、台座の周囲を覆う様にに薄いベールが張られているのが分かった。
(こんな罠にかかるとは俺どんだけ冷静じゃなかったんだよ...。)
俺は気持ちを切り替える。
「だが、あると分かっていれば、その罠も突破する術はある。」
俺はそう言うと台座へと...いや、チサへと向かって一直線に走り出すのだった。
第36話はここまで!
ジンも漸く武器を....(木の枝ですけど。)
作者としては嬉しい限りです。
リアルタイムで物語考えていますので、どんな風に展開していくかは作者である自分にも分かりません(おい!)。
引き続き宜しくお願いしますね!
では37話でお会いしましょう。
20/11/23
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