第157話 オーガの都へ
今話はストーリー構成の都合、少し短いですm(__)m
「ジンが倒れてしまったのじゃ......。」
チサはジンが急に取り乱し訳の分からない叫び声を上げた後、倒れてしまったことにチサはジンに対する心配や不安よりもこの場では疑問が勝っていた。
(どういうことじゃ? 確か、ジンはロックスタンという言葉を聞いた瞬間から様子がおかしかったのう。それにヴァルボーゲンのステータスを見てより一層絶望の色が強くなったのじゃ。おそらくジンの故郷のことが関わっておるのじゃと思うが......。)
チサはそうは思いながらもジンの介抱が先だと。起きてから事情を聞くべきだと開き直る。
とにかく、ジンが気絶したままでは会議の続行は不可能であり、まずはヴァルボーゲンにその旨を伝える必要があった。
「すまぬのじゃ。ヴァルボーゲンよ。今日のところは一旦仕切り直させてはくれぬかの?」
「分かったでごわす。肝心のジンがこれではこれ以上の話は聞けそうにないでごわすから。ただ――。」
「ただ、どうしたのじゃ?」
「いや、これはおいたちの話でごわす。気にしないで欲しいでごわす。それより、チサはロックスタンというリザードマンをしっておるか?」
「いや、知らぬのじゃ。もしかしたらジンが少し話しておったのかもしれぬが、それにしたって一度聞いたかどうかといったところじゃったからのう。でも、【結界神】と言っておったはずじゃから、ジンの故郷のことが関わっているのは確かじゃとおもうがの。」
ヴァルボーゲンは頷きそして机をリズムよくたたき始める。
トントトントトトトントトン――。
ヴァルボーゲンは何か法則性でもあるかのように机をたたく。部屋の中にその音が響き渡ってしばらくすると席を外していた二人が部屋へと入ってくる。
「ヴァルボーゲン様、話は終わったと?」
「終わってなかったら呼ばれないたい......。ん? どうしてジンが倒れていると?」
「少しおいが不用心にジンの中に踏み込みすぎたのでごわす。三十年前、ロックスタンがこの大陸から忽然と姿を消してしまった後、初めてその足取りを知るものと出会ったことで少し舞い上がってしまったでごわす。」
ヴァルボーゲンはその後、チサへと向き直って「すまぬでごわす。」と謝罪した後、二人の女性オーガ、ロベルティナとランバージェリーに指示を出し、あばら家を片付けるように指示を出す。
「さあ、帰るでごわす! チサとジンは客人として。ジークハルトはまずはお前の友人に無事に帰ったと知らせてやるでごわす。三十年前から続く戦いでかなり亡くなってしまったでごわすが。」
「わかったでごわす。」
その後、片付けの邪魔になるということでジークハルトがジンを担ぎ、チサと共にあばら家の外へ出てある程度キャリーカウの頭から離れた場所にジンを寝かせその場に腰を下ろす。
「ジークハルトは知っておったのかの? ロックスタンのことや、ヴァルボーゲンの強さのことは。」
「当然でごわす。ロックスタンは敵の首領だったし、族長はオーガ族の中で最も強い者がなると代々決まっているでごわす。おいどんは戦士の中でナンバーワンだっただけでごわす。」
ジークハルトがそう答えた時、今までずっと動いていなかったキャリーカウが動き出す。
「む? 一体どういうことじゃ!? この牛バックしておるのかの?」
キャリーカウは向きを変えることさえなくまっすぐと、もと来た道を後退し始めたのである。
「このキャリーカウは訓練されているのでごわす。これだけ大きいと、向きが違うだけでキャリーカウの入る牛舎に入ることができないでごわすから。」
ジークハルトの説明にチサは「ふむ。なるほどの。」とジークハルトの説明に納得するように頷くとオーガ族の都スフィアクレストを見つめて、
「残念じゃったの。ジン。こんな面白いものを見逃してしまうとはの。そう言ってチサは器用にバックしてゆくキャリーカウの上からオーガ族の都を見据えるのだった。」




