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第156話 喪失

 俺は数秒固まったまま思考する。それほどまでにヴァルボーゲンが俺へと尋ねた名は衝撃的だった。それだけでは無い。今の問いをよく思い返してみれば、ヴァルボーゲンはほぼ間違いなくレベル200を超えている。

 何故なら、「()()()()ーーこの大陸へ上陸できたか?」なんて問いはレベルの低い者では絶対に出来ないからだ。


 俺とヴァルボーゲンの間に流れる空気が周囲の温度を少しずつ下げてゆく。突然流れ始めた先程とは質の違った張り詰めた空気にジークハルトもチサもまた話の重要性を察したのか、口を挟むどころか、身動き一つすることなく、待っていた。


「そうか。その反応を見る限りジンだけがロックスタンを知っているでごわすか。ジン、ロックスタンについて知っていることを少しでもいいからおいに教えてほしい。」


「ヴァルボーゲン、答える前に一つ聞かせて欲しい。」


「なんでごわすか?」


「レベル今......いくつなんだ? 間違いなく200は超えているんだよな?」


 かつて、ゲチス軍に捕まる寸前だった俺の元へ現れた創造神が語ったことであったが、世界法にはこんな記載があった筈だ。


 第一条・・・各大陸間の貿易並びに交流を禁止する。

 第二条・・・他大陸への侵略、戦争を禁止する。


 つまり、これを知っていることを匂わせながら話を進めているヴァルボーゲンは、創造神の話が本当であるのならば、俺が創造神に出会うより前にレベル200を超えて、世界法について知った筈なのである。


 それに......ヴァルボーゲンはここまでの旅路で初めて会う俺を超えるレベルを持つ強者の可能性があった。であればレベルだけでも聞いておく必要があると思ったのだ。


「ふむ。そんなことでいいのなら幾らでもみせよう。おいのレベルやステータスなど隠しておく必要さえ無いでごわすから。」


 ヴァルボーゲンはステータスを表示する。ただ、技能は先程教えてもらった叡智以外は非表示ではあったが。


 名前:ヴァルボーゲン・アヴァロディ lv:327 年齢:442

 身長362cm 体重785kg

 称号:オーガ族を治めし者

 技能1:叡智 技能lv30

 技能2:#########

 技能3:#########

 技能4:#########

 技能5:#########

 技能6:#########

 状態:良し


 ステータス(評価)

 力:400(SS)

 魔力:250/300(S)

 耐久力:350(SS)

 敏捷力:50(E)

 精神力:225(S)

 体力:1250/1250(OF2)

 総合:429(SS)



「レベル300越え......? 体力1000オーバー?」


 俺はヴァルボーゲンのステータスを見て思わず言葉を失う。敏捷は、オーガという種族柄低いのは分かる。ジークハルトだって一緒に行動していてそう高くは無かったからだ。

 だが、体力の数値が異常だった。それに年齢だって......。


「ジン、おいのステータスで驚くのは早いでごわす。おいとこの大陸の覇権を争いしのぎを削っていた、三十年前までのリザードマンの首領ロックスタンの結界においは一度も傷をつけられなかったでごわすから。」


「嘘......だろう。」


 俺は再び絶句する。だってそうだろう。これまでの旅では、闇落ち(?)したアルの技で苦しめられた事があっただけで俺より高いレベルの相手はいなかった。


 だが、ここに来てついに目の前に現れたのだ。俺よりもレベルが高く確実に強い相手が。

 そんなヴァルボーゲンでさえ傷つけられなかったというロックスタンは一体どれほどの強さなのか。

 考えただけでも足が......いや、体全身が勝手に震えてくる。今まで知らなかったゲチス軍幹部の実力を知らされ、現実を突きつけられ、俺は明らかに恐怖していた。

 俺が倒すべき本当の相手はまだそんなにも遠いのかと。


「ジン! 落ち着くのじゃ! 一体どうしたのじゃ? 何故そんなにも震えておる! ロックスタンとは一体なんなのじゃ!」


 ヴァルボーゲンからロックスタンの話を少し聞いただけで突然豹変した俺へ流石のチサも沈黙を辞めて自分の席を立ち俺の元へと駆け寄ってくるのが分かった。


 だが、それだけだった。俺の脳内に故郷の惨劇と、ゲチス軍の圧倒的な戦力による蹂躙の日々がふつふつと脳裏に蘇ってくる。


「やめろ! やめろ! やめるんだ......! 頼む、頼むからこれ以上俺から奪い取らないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 到達者となり、創造神と出会い、チサと出会い、力をつけたことで故郷を取り戻せるという自信はここに完全に消えていた。


「セリ、母さん、父さん、カイトオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 ひとしきり自分でも何を言っているか分からない叫び声を上げたのは覚えているが、俺の記憶はここでプッツリと途絶えてしまったのだった。






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