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第150話 予定外の制圧戦

 俺たちはオーガの都に着いた。

 着いたのだが都へと入るには一つ問題があった。そう、都の周囲でリザードマンとオーガが戦闘をしているのだ。ここだけを見ればどちらが優勢という訳ではなくあくまで戦況は拮抗していた。


「どうする? ジークハルト。突破自体はできないわけではなさそうだが、そう簡単に入れそうな雰囲気じゃないぞ?」


 時間としては既に夜であたりは真っ暗闇の筈なのだが、オーガやリザードマンにはそんなことは全く関係がない。彼らは三千年の時を経て一日中戦える様に進化しているのだから。

 つまり、休戦している間に入ろうとかそういう事ができないのだ。

 かといって気配遮断を使って戦場を抜けるのもまた相手の誤解を産む要因になりかねない訳で。俺たちは都が見えているにも関わらず足止めを食らっていた。


「おいどんはもう戦いが始まっているとは思っていなかったでごわす。ゴライヤの話から考えてまだリザードマンはおいどんたちオーガから奪った地の平定に時間をかけているものだと思っていたでごわす。」


「そうは言っても仕方ないのじゃ。現に戦いは始まっておる。恐らく、あの集落は情報が遅かったのじゃろうな。妾たちの捜索があまり来なかったことも家を直す余裕も無かった事を考えてものう。」


 なるほどな。俺とジークハルトはチサの言葉に(うな)る。確かにそうだ。だが、ここはこの状況を打開する方法を考えなければならない。

 俺は周囲の戦いによって起こる戦闘音を聞きながら考える。周囲と言っても俺たちは森の中から今戦いが行われている平原を見ているわけだが。


「のう、ジークハルトよ。オーガたちの中に知り合いはおらぬのか?」


「いないことはないでごわすが、三十年の時が経ったことと、リザードマンが使った数々の戦略を考えれば、まともに信頼してもらえるかどうか怪しいところでごわす。」


 確かにそうだ。俺たちが爆弾である可能性やスパイと思われる可能性だってなきにしもあらず......いや三千年も拮抗し続けた戦いをたった三十年でここまでリザードマン優勢に持ち込んだほどだ。それを考えれば急に現れた俺たちはリザードマンの間者だと思われるのが自然だった。


「仕方ない。俺たちで今ここに居るリザードマンを全部片付けるしかないか。」


「それしかないかのう。本当はそれは避けたかったのじゃが。」


「皮肉なものでごわす。卑劣な手でおいどんを捕まえたのもリザードマンであれば、チサを救ったのもまたリザードマン。感謝と憎しみが入り混じるとはここまで苦しいものであったとは。」


 俺もそう思う。ここにあの集落の者たちの家族が、仲間がいると思えば......いややめよう。そんな事を考えていては俺は前には進めない。恐らく、この大陸の試練はこの争いを止める事なのだからーー。


「そうと決まれば急ぐぞ。この戦いを制圧する! 準備はいいか? チサ! ジークハルト!」


「妾はいつでもいけるのじゃ!」


「おいどんも大丈夫でごわす!」


 そう言うと俺たちは三手に分かれて走り出す。チサは左翼、ジークハルトは右翼、俺は中央の担当だ。


「な、なんだこの小さい生き物は!?」


「おい! 後方からオーガが来たぞ!?」


「挟撃か! 小癪なあああ!」


「後ろから来ているのは一人だ! 問題な......。え?」


「おい! 後ろから来てる奴とんでもなくつよいぞ! 応援だ! 応援を呼べ! 囲いこんで倒すんだ!」


「それが、左翼も右翼も......ぐあああああああああああああああ!」


「なんだと!? 一体何が起こっていると言うんだ!!!」


 リザードマンの群勢は俺たちの急な突撃で恐慌状態に陥っていた。群勢の数は目算で中央千五百、右翼と左翼は千程であったが、リザードマンはその翼や尾などの大きさからかなりの大きさの集団となっていたのは間違いない。


 俺は一人一人丁寧に首を落としていく。ただ、あまり沢山殺したい訳ではなかったので敢えて首を天高く跳ね上げ、軍の中央へと飛ばす。


「うわああああああ、同志の首がああああ!」


「引けぇ! 引くんだ! このままでは不味い! 一旦引いて立て直すんだ!」


 俺の攻め行った中央は結局三十程倒しただけで容易く決壊した。リザードマンたちはオーガが追撃してくるのにもお構いなく後方へと向けて撤退していく。


 俺はここで初めて気配遮断を使い、逃げ惑うリザードマンをかわしながら戦況を確認していく。チサの向かった左翼は、水竜が軍を飲み込むのが見えた。恐らく、中央と同じ状態になるのも時間の問題だろう。

 ただ、ジークハルトが向かった右翼は、後方で普通に戦闘が行われていた。

 見る限り数人のリザードマンが倒れてはいたが、恐慌が起こるほどではなかった。ジークハルトが負ける様な雰囲気では無かったが流石に五、六人のリザードマンに囲まれていては上手く切り込めなくなっていた。


「チサ、左翼は任せたぞ!」


 俺は届かないとは知っていながらもそう言うとジークハルトのいる右翼へと突っ込んでいく。


「ジークハルト! 助太刀に来たぞ!」


「おお、ジン! 助かるでごわす。しかし流石でごわす。この短期間で撤退まで追い込むとは。」


「ジンに、ジークハルトだと!? まさか、指名手配犯か!? くそっ! 今頃になってオーガに付いたとでも言うのか!」


「馬鹿な! 指名手配犯だと?」


「脱獄犯だ! 捕らえればしばらく遊べるくらいの金が手に入るぞ!」


 リザードマンの群勢は見事にバラバラに崩れ出す。


「ジークハルト! 今がチャンスだ! 一気に崩すぞ。」


「ああ、どうやら中央のオーガたちが一気にこちらへ雪崩れ込んでくるみたいでごわす。もうお前たち右翼の生きる道はなか。」


「何だと!? まさか!中央と左翼は既に......!? 撤退だあああああ! 皆! 指名手配犯に関わっている場合ではない。急ぐんだ!」


 リザードマンの指揮官の声が響き渡り、もはや足並みが全く揃っていない烏合の衆と化した集団が散り散りになって撤退してゆく。

 ただ、右翼は、俺やチサが攻めていなかった分撤退が遅れ更に金に目が眩んだ者たちが撤退の足を遅め、中央の相手が居なくなったオーガの部隊がなだれ込んだ結果ほぼ全壊まで追い込むこととなったのだった。


「ジークハルト、チサ、何とか上手くいって良かったな。」


「むうう、ジン、妾を置いてジークハルトの元に向かうとは意地悪じゃのう。」


「ま......まあそこは許してくれ。ジークハルトの方がちょっと押しが足りなかったんだよ。それにチサは一人で十分押し込めてたじゃないか!」


「妾ももう少し加減すれば良かったかのう。そうすればジンが来てくれたじゃろうに。まあ良い。信頼してくれたのならそれでよしとするかの。」


 そんなやり取りをしている俺たち三人に数人のオーガが近付いてくる。それに気付いた俺たちは会話をやめ、緊張しながらも彼らが近付いて来るのを待つ。

 こうして俺たちとオーガとの接触の時は少しずつ近付いてゆくのだった。



これで150話ですね。なんだかとても遠くまで来た気がします。

次は50万字か200話かあたりで後書きを書きたいですね。

まだまだ旅は続きます。引き続きジンとチサの物語をよろしくお願いしますm(__)m

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