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第147話 ジークハルトの過去①

 結局、ゴライヤとジスカーダと話した後、誰とも別れを言うこともなく1ヶ月世話になった集落を発った俺たちは、ジークハルトの後に続き、オーガの集落へと向けて歩いていた。

 時刻は夜で既にリザードマンの集落を発ってから一週間の時が経っていた。真っ暗闇の中を俺とジークハルトは歩く。ちなみにチサは俺の背中で眠っている。

 俺としてはもう少しゆっくり行動しても良かったのだが、故郷が心配な中、俺に付き合って約1ヶ月も時間を使ってくれたジークハルトに借りを少しでも返すため、二日歩いて4時間ほど眠るというジークハルトに合わせたリズムでオーガの集落へと向けて歩いていた。


「ジン、あと三日も歩けばオーガの住む首都へと辿り着けるでごわす。」


「そうか。ならこの旅もあと少しだな。そういえばジークハルトは問題無くその首都とやらに入れたりするのか?」


「ああ、恐らくは大丈夫だろう。」


「恐らく?」


「そうだ。おいどんは大丈夫だとは思うのでごわすが、もしかすれば入れてもらえぬかもしれぬでごわす。」


 俺は首を傾げる。オーガの元ナンバーワンの戦士だったジークハルトを受け入れられない理由とはーー。


「それはどういうことだ?」


「まだジンには話していなかったでごわすが、これはおいどんが捕まった三十年前の話でごわす。丁度リザードマンとオーガの勢力が逆転した時まで遡る話でもあるでごわす。」


 そう言うとジークハルトは話し出す。


 三十年前、リザードマンが行ったという非道な策略についてーー。



 創生3432年に遡る。


 これはリザードマンとオーガの領地の境界線すなわち、当時のリザードマンとオーガの戦いの最前線とも言える街での出来事。


「やはり、リザードマンのやつらはここがどう頑張っても落とせぬようだな! 俺たちも同様に落とせてはいないわけだがな!」


「それも仕方ないでごわす。だが、おいどんがいる限り、この地が落ちる事はないでごわす!!」


「はっはっは! 違いない! ジークハルトがここへ来てからオーガはリザードマンとの小競り合いに負けて無いからな。戦地でのジークハルトの強さには俺たちだって鳥肌が鳥肌がたつくらいだ。」


 ここはその街の中でもオーガの戦士達が住む基地。そこでオーガの戦士たちは戦いの疲れを癒すため、そして、ジークハルトが来てからの戦いの優勢を祝うために酒宴をしていたのだ。

 とはいえどここで酒宴をするのはジークハルトの部隊の者だけ。

 人数にして全体の一割にも満たない。

 それ以外の九割は皆が街の警備や、リザードマンとの小競り合いで出払っていた。


 そんなわけで、酒宴といえどもそう大きなものではなかったのだがジークハルトの部隊は各々の疲れを労ったり戦地での功績を自慢しあったりしていた。


 そこへ一人のオーガが駆け込んでくる。


「大変です。ジークハルトさん! リザードマンによって街の守備が破られました! 今すぐ応援に来ていただきたいのです!」


「なんだと!? 破られた? なんの冗談でごわすか? バールフェイスとコーククライの隊はどうなっているんだ!」


 バールフェイスとコーククライはこの時間街を守っているはずの部隊で長い間街をリザードマンから守り抜いてきた歴戦の隊長たちである筈だった。


「それが、突然のリザードマンの奇襲でお二人は討ち取られ、その混乱に乗じてリザードマンが......。」


「馬鹿な......。ここは自然の要塞に更にはリザードマンとの戦いで千年近くここで防衛戦が行われたお陰で基地として更に強固になっている筈でごわす。それを抜いた上に隊長を二人同時に討ち取るなんて真似ができるはずがーー。」


 ないでごわす。そう言いたかった。だが、ジークハルトの元へと駆け込んできたオーガはとてもではないが嘘を言っている様子ではなく、応援に向かわねばならないことは自明であった。


 ジークハルトは事細かに駆け込んできたリザードマンから事情を聞き出すと酒宴の席を片付ける間もなく慌ただしく指示を出してゆく。

 実は酒宴といえどもジークハルトは部下たちに酒はコップ一杯までと制限していたこともあって、この緊急事態で動けない者は皆無だった。


(一体どういうことでごわすか? 二人も隊長が倒されるとは。オーガ族の中でも各隊の居場所は隊長クラスであってもその全てを知らされてはいない筈でごわす。嫌な予感がするでごわす。)


 ジークハルトはそう思いながらも急いで準備を整え、外へ出る。すると、街の東側と北側で火の手が上がっているのが目に入る。


「おい、不味いぞ!」


「本当にバールフェイスさんとコーククライさんが抜かれたっていうのか!?」


 ジークハルトの部下達がざわめき出す。


「静かにするでごわす! 見る限りまだ二箇所でごわす。隊を二方面の鎮圧と無事である隊との連携の三つに割るでごわすーー。」


「伝令です!」


 ジークハルトはそう部下へと指示を出そうとした時、先ほど駆け込んできたオーガとは別のオーガがジークハルトの元へとやってくる。


「どうしたでごわす!? 何か不味いことでも?」


 ジークハルトは焦る心を落ち着かせながら、駆け込んできたオーガへと尋ねる。何故ならその伝令が走って来た方角が街の南側だったのだから。


「伝令! 伝令ィィィ!」


 そして時を同じくして西からもまた別のオーガが駆け込んでくる。そして伝令が辿り着いたのを見計らったように、残っていた南と西からも火の手が上がり出す。


「一体なんの冗談でごわすか!? 四方位全てオーガの部隊が固めている筈でごわす。まさか......。」


 そう。そのまさかだった。伝令は口々に語る。リザードマンの奇襲によって、残る二方面の隊長も抜かれたと。


 ジークハルトはその突然の報告に固まったまま動けなくなる。つまりこの伝令たちの話が本当であれば今この街にいるジークハルト以外のすべての隊長が抜かれたことが確定する。


「な......! どういうことだ!?」


「他の隊長も抜かれただって?」


「一体どうすれば千年落ちていないこの街でそんなことが!」


 オーガたちは混乱し始める。

 ジークハルトでさえ指示に窮して固まる。前代未聞だった。今までこのような事態に陥ったことなど無かったのだから。


(どうすればいいでごわす! 二方向の奇襲なら対応できた。だが、四方向となると......。)


 そう。流石に隊を4つに割ろうものならいくらジークハルトの隊であっても上手く奇襲に対応できるとは思えなかった。更に上がる火の消火も行わなければならないと思うとどう考えても人手が足りなかった。


「皆、よく聞くでごわす! まずは部隊をーー。」


 ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!!


 それでも指示を出さない訳にはいかず、ジークハルトが口を開いた瞬間、ジークハルトの両隣で爆発が巻き起こる。


 突如として起こった爆発にジークハルトと、その周囲にいた部下達数十人のオーガたちがその突然の爆破に巻き込まれ吹き飛ばされるのだった。






昨日は体調不良で連載お休みして申し訳ありませんでした。今日から再度頑張りますのでよろしくお願いしますm(__)m

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